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Orders from the United Kingdom

1916年(大正5年)1月26日。寒風の吹きすさぶ霞が関、午前10時。

第二次大隈内閣の閣僚たちが、帝国議事堂隣接の官邸会議室へと次々に集まっていた。


椅子の革が鳴り、窓の外では旗が冷たくはためく。定例閣議が始まろうとしていた。



【出席閣僚一覧】

•総理大臣:大隈重信

•外務大臣:石井菊次郎

•内務大臣:一木喜徳郎

•大蔵大臣:武富時敏

•陸軍大臣:大島健一

•海軍大臣:加藤友三郎

•司法大臣:尾崎行雄

•文部大臣:高田早苗

•農商務大臣:河野広中

•逓信大臣:箕浦勝人

•鉄道院総裁:原敬


まず大隈首相が口火を切った。


大隈重信:「さて、諸君。帝国の南洋方面作戦も一区切りとなった折、外務省より新たな報告がある」


石井菊次郎外相が資料を手に立ち上がる。


石井菊次郎:「英国政府より、公式に海軍艦隊の地中海方面派遣を要請されております。目的は協商国通商路の保護と、独逸潜水艦に対する防衛であります」


ざわ、と小さく会議室が波立つ。


石井:「これまで我が国は、南洋攻略を理由に丁重に辞退してまいりましたが、現在は作戦をほぼ完了。つまり、“もはや断る理由が無い”というのが、英側の見解です」


加藤友三郎海相が、軍服の袖を軽く正しながら発言する。


加藤友三郎:「海軍としても、現在の艦隊運用に余力が無いわけではございません。ただ、地中海派遣ともなれば、相応の準備と再編成を要します」


大隈:「ふむ……つまり、海軍は前向きに検討していると?」


加藤:「はい。海軍内部にて一度、詳細な戦力調整を行い、その上で正式にお答え申し上げたいと存じます」


武富時敏蔵相が、ゆっくりと頷きながら声を重ねる。


武富:「財政面について申し上げれば、英国側が経費の相当部分を負担する意向を示しております。無論、艦隊の整備費や人件費は発生しますが、大戦景気の追い風で予算には余裕がある」


原敬鉄道院総裁が冷静に言った。


原:「海軍輸送計画との調整は不可欠ですな。特に呉と佐世保、どちらを主たる出発港とするかによって、鉄道貨物の運行も変わってまいります」


大隈は一同を見渡し、穏やかに締めくくった。


大隈:「加藤海相、諸君の意見を聞き、政府としても“原則派遣の方向”で異論は無いものと見ます。ただし、実際の戦力配備と作戦計画については、まずは海軍内部で精査をお願いしたい」


加藤:「御意にございます。速やかに軍令部と協議の上、次回閣議までに案をまとめてまいります」



こうして、英国の要請に応じる形で、

日本海軍による地中海派遣の可能性は現実味を帯びて動き出したのであった。

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