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27-ノイズ-

ノイズで聞き取れないところがあるけどそれは脱字じゃありませんからっ!!( ̄▽ ̄;)

 颯希は、考えていた。

 現王と次期王について。

 本当に颯希が次期王ならば現王の死後、王位を継ぐ者は生まれないだろう。王が王位を継ぐと次の王が生まれるという流れになっていると本に書いてあった。


「わたしがここにいるってことは、次期王はどうなると思う?」


 多分生まれていない。颯希のその考えは見事に的中していた。


「生まれてないわ。次期王ってのは生まれた瞬間に国中に知らせられるのよ」

「そして今、現王の年齢は八十を超えている」


 彩里と亮が言った。


「て、ことはだ。現王が死ぬ可能性は多いにある。今、どういう状態かは知らないけどな。そして、次期王が生まれていないこの状況、国は一気に混乱に陥る」


 滉が言う。その時、窓ガラスが割れた。


「なっ!」


 反応をする前に、一人の黒服が入ってきた。銀のチョーカーではなく金の腕輪だ。つまり、


「ラド家!」


 叫んですぐに、ショルダーバッグにノートを放り込み持った。窓ガラスの破片が少しバッグに刺さる。ドアを開けて、逃げようとするがラド家のものに回り込まれ、ドアを閉じられた。


「行くな」


 その声に身に覚えがあった。黒服で、女、金の腕輪。


「お前、あの時の女だな」


 滉が言って、思い出す。颯希の肩に傷をつけた女だ。距離をとり警戒した。


「あの時って何?」


 彩里が質問しながら叫んでいるのが聞こえる。窓側に目をやると、今の騒動に人々が集まっていた。窓から身を乗り出してみると、メランドリ家が全員倒れているのが確認できる。ここに住んでいるであろう人々は困惑したようなしかし迷惑だったのか喜んでいるような者がいた。


「君が、やったのか?」


 亮が驚いたように聞いた。

 颯希と滉が女を睨みつけているのを見て亮と彩里は顔を見合わせた。


「颯希の肩に傷つけたやつ」


 滉が一言言うと、二人にもわかったようで明らかに警戒心が強まる。

 まだ、疑って話していることがあるがこういうとき名目だけでも仲間がいると安心して颯希の警戒心が少し緩んだ。


「敵? 味方?」


 颯希が言う。ゆるんだといっても、臨戦態勢を緩めたりはしない。女はフードをとった。


「……本当に女だな。メランドリ家の塊をたったひとりで倒したのか?」


 亮が呟いた。それが聞こえたのか、女は素早く頷く。


「……これは、誰の命令?」


 彩里が聞いた瞬間、颯希は思った。亜妃だ、と。


「ついて来い。そこに、いる」


 もう一度フードをかぶる。今フードを取ったのは警戒を解く意味だろうか。

 女がそそくさと出ていくのを見て、四人は急いで追った。ぐちゃぐちゃの部屋を見て、宿主に申し訳なくなる。でも今は、それよりもこの女のことである。ラド家のもので亜妃を尊敬する者。なぜこの前は殺そうとしてきたのに助けるような行動に出るのか、意味が分からなかった。


***


 シモーナははっとして振り向いた。かすかに見えた赤い髪。亜妃だ。薬を飲み落ち着いた王の手を、ゆっくりと置く。亜妃の跡をつけて行った。


 チョーカーに触れると、ひやりとした。シモーナの目と同じ青色の石が埋め込まれている。めったにつけないチョーカーはシモーナを身震いさせる。突き当りに出て、分かれ道に来ると亜妃の髪が見えなくなっていた。しかし、ここの道は七人才の部屋に向かう道と王室に向かう道だ。王室に行ったのなら連絡が入るはず。あそこには、七人才だって許された時しか入れない。

 シモーナは右側、七人才の部屋に向かう道を歩いた。その時、連絡が入る。先ほどから感じていた、恐怖は真実だった。耳の中に仕込んだ外部連絡用のイヤホンから連絡が入る。


「……襲撃! 黒服に金のチョーカー、ラド家の」


 殴られる音がする。


「くそ、やられた」


 毒づいて部屋へ急いだ。


***


 ラド家の女は何も言わずに宿屋を出た。大量の金貨を受け付けに置き、裏口から出る。周りには、女のメランドリ家への襲撃で人々が集まっており、裏口の方には人気が少なかった。どうやら裏口を固めていたメランドリ家の輩も正面玄関前に連れて行かれたようだ。人だかりに見つからないように、素早く裏道や路地に回り込みそのまま進んでいった。太陽が南あたりにあるので太陽が左側にあり西に進んでいるのが分かった。ただ、南、西などの方角は颯希たちが勝手に推測して決めていることなので何とも言えないが。


 しばらく無言で進んでいたら人気(ひとけ)が少なくなっていった。クモの巣や、ツタなどをかき分けながら進み、古い小屋の前にたどり着いた。


「ここは?」


 颯希が呟くと、女は振り向いて言う。鋭い眼光が颯希の目と合った。


「静かに入れ」


 ぼろい小屋は、扉を開くだけできしむ音がした。周りに音源がないためかその音は余計に響く。

 扉の前に立っていた亮が一番初めに入り、それに続き滉、彩里、颯希の順で入った。四畳あるかないかぐらいの小さな小屋の真ん中に、ぽつりとフードが付いたコートを着た誰かが座っていた。そのコートに見覚えがあった。ただ、その人物は透けていて後ろの壁が見えており、言葉を失った。


「誰?」


 彩里の問いにその人物はフードを取り、顔を上げた。


「亜妃!」


 滉以外の三人で、思わず叫ぶ。


「やっぱり、亜妃がお前に命令を出したんだな」


 ポケットに手を入れた滉が後ろにいる女に言った。女は無言で頷き、亜妃の後ろに回った。


「……ああ、届い、る? これ」


 颯希達の声が聞こえたのか、亜妃は目を開いて驚いた。少し音にノイズが入っている。映像、なのかそれも横にずれたり、切れたりして安定していない。


「え、うん、届いてるけど」


 亜妃と同じ目線になろうと、しゃがみ込む。彩里も颯希の隣にしゃがんだ。


「いい? こ、から言うことをよ、聞いて。お」


 ノイズが入り言葉が途切れた。それは亜妃もわかっているのか亜妃自身が黙っているように見える。


「……王が倒れた。もう長くない」


 愕然とする。颯希が王位継承者かも知れないとわかったとき亜妃がこの情報を流すにはタイミングが良すぎだ。


「亜妃、聞いて」

「黙って! 時間がない。もうすぐシモーナが来る」


 シモーナと言う名前をどこかで聞いたことがあると思いノートを取り出しめくった。亜妃はそれを待つまでもなく話しはじめる。


「王が死ぬ、または、次期王が成人を迎えると王位が継がれることになっている。だが生憎、次期王は生まれない。次期王は同時期に二人存在することはない。……颯希がいるから、次期王が生まれないと言っていい」


 言い方に聞き捨てならない感じがしたが事実、颯希がいるから次期王が生まれないのだろう。ノートをめくっていると、七人才のページにたどり着きシモーナは七人才の一人だとわかった。


「シモーナ、次期王を探している。あたしと同じよう、突然失踪した先代王女・アンナ・フェシュネールの子供は存在し、いるのかと探し始、た。あたしは、その考えにたどり着い、だけで探そうとは思っていなかっ。颯希が現れた瞬間、ピンと来たよ」


 その名は聞いたことがあった。颯希にとっては少し違和感がある名前だったが三人の視線が一気に刺さる。


「そして見つけた。颯希、んたが図書館でコ、タクトも何もせず話した時、そ、連絡が王宮に行ったんだ。ただ、れは七人才の一部の人間、だけ知らさ、国民はもちろん、王族の中、も知らない者がいる。そし、シモーナはあんたの居場所を突き止め、自分の兵を動かして捕まえようと、ていた」


 亜妃は素早く目を横に動かした。四人は一言も発しずに亜妃の言葉を待っていた。


「来るからやめるけど、シモーナには気を付けて。あと、リナに任せる」

「はっ」


 リナというのは、女のことのようだ。膝をつけ、亜妃に跪いたとき亜妃が消えた。


「消えた……」


 これも、亜妃の能力なのだろうか。それとも他の者の能力か。考える暇もなく、リナは立ち、言った。


「これから、話すことに従ってもらう」


 リサの口から飛び出たのは、思いがけない言葉だった。


***


「亜妃っ!」


 白い髪をなびかせて、七人才の部屋に一人たたずむ亜妃に向かって歩いていった。シモーナが来る数秒前まで、ラド家の者がいたのだが暗殺要因の彼らにとって一瞬で身を隠すのは容易いようだ。シモーナは亜妃のTシャツの胸ぐらをつかんで、壁に頭を押し当てる。


「……何をした?」


 青い目が血走っている。それほど必死なのか。亜妃はシモーナの耳に機械が付いていてここから情報を取り込んでいたのかと考える。冷静だった。


「何も」


 掴んでいた胸倉の手を引き離し、横に投げる。権力と能力だけで成り上がってきた奴だ。所詮、戦うための筋力では亜妃の方が数倍も勝る。その証拠に、横に投げた拍子でシモーナはバランスを崩した。能力に頼り過ぎて、身体をあまりにも鍛えていないのだ。


「嘘よ! ……あなた、わたしの兵に何をしたの?」

「……あなたこそ。何をしているの? 一般国民のところに兵を長時間放棄するのはご法度だけど?」


 シモーナは歯ぎしりをした。言っていることは圧倒的に亜妃の方が正しい。ただ、亜妃がシモーナの兵のことを知っていたのは認めた。だが、シモーナにとってはとても分が悪い。なぜなら、


「お前ら、何をしている」


 ドキッとした。いやな空気が流れる。振り向くと金の髪が見えた。さっぱりとした短髪に、ぎろりとにらむ大きな青灰色の瞳。


「ジェラルド……」


 呟いたシモーナを横に、ジェラルドはまっすぐ亜妃のもとに向かった。その大きなマントで亜妃を隠すように手を横に出す。


「無事か、亜妃」

「無事も何も、あたし、何もされてないわよ」


 そう言って、亜妃は微笑む。それを睨むシモーナ。一番新米で、そのくせしてジェラルドの隣にいるというのがたまらなく苛つくのだ。

 ジェラルドは亜妃の頬を撫でた後シモーナの方を向いた。


「お前はまた」

「うるさい」


 シモーナはジェラルドを睨んだ。ジェラルドは、面倒くさそうに視線を逸らした。


フー、四話投稿終わった……

これから明日のセッティングをしてきますっ!

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