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26-オウダ-

題名があれだ!

王だ! のオウダで!!←

「おばあちゃん?」

「そっ」


 滉は頷きながら、フルーツをかじった。果汁があふれてくるのか、大量の汁が流れているのが分かった。滉はそれを机の上の皿に置きながら言う。

 おばあちゃん、と言われて颯希はドキっとした。ずいぶん前からわかっていることがある。王族の家系図に乗っていた写真と祖母の写真が似ていることだ。


「颯希のおばあちゃんのこと。ほら、颯希と同じ目の色で髪の色の」

「いや、ほらって言われてもわたし、写真でしか見たことないし」

「写真で十分なんだよ」

「……何が?」


 指についた果汁を舐めて滉は言った。滉の能力が颯希に発動したのは颯希自身、祖母の写真が先代女王とそっくりだった、とわかってからの話だ。だから滉は颯希のその考えも読み取っていると考えて良い。


「俺、彩里さんに拾われてからずっと図書館漬けの日々だったんだ。それはもちろん、二人が亜妃に何があったのか知りたいと思っていたからで、俺のほとんどの知識はすべて図書館で養われている」


 水が流れる音がして、滉が洗面所に行ったことが分かった。それがわからないほど、颯希はノートとにらめっこをしていたのだ。

 颯希は滉が言ったことを薄々分かっていた。二人について行ったのなら、必然的に滉も図書館に行くだろう、と。そしてそこで、何かしらの本は読むはずだ。そこから知識を得られるはず。

 ただ、颯希が放った質問に滉は答えていない。


「で、何がすごいの?」


 戻ってきた滉は、何の前置きもせずこう言った。


「お前の祖母、この国の王だった」

「……」


 滉の視線が颯希を捉えた。目が合う。滉はわかっている。


「この国の王だった。颯希のおばあちゃんがな」

「はあっ!?」

「えっ!?」


 驚きを示したのは彩里と亮だ。てっきり、この前三人でこそこそと話していた時に知らされているものだと思ったのだが。驚いた二人は開いた口が塞がらないというように、そして颯希がその事実に驚いていないことに驚いているようだった。


「何でそうなるの?」


 彩里の質問に滉は黙った。

 滉は颯希のおばあちゃんを見たと暗に言う。それは、颯希から引き出された情報なのだから颯希だって知っている。――事実、知っていた。わかっていてそれを誰にも言わず、認めてもいなかった。


「え、そうなの? なに? なんで二人がわかっててわたしたちがわかってないの?」

「おい、滉。それはつまり」


 滉は亮の言うことに大きく頷くと窓際に行き黒服の軍を見た。きちんとした言葉で言っていないのだが亮と滉は分かり合えているようだ。


「まあそうなる。図書館漬けの日々に、俺のこの国への知識が増えたってことで」

「え、どうなんの?」


 亮と滉の間で交わされたことがわからないようだ。颯希はわざわざ説明するのも億劫で黙って滉を見た。


「わたしは、なんだと思う?」


 颯希の問いに滉は目を細くして颯希を見る。


「歴史の棚はほとんど読み尽くしている――特に一階はな」

「えっ? 歴史の棚って二階とか三階とかにあるわけ?」


 滉が軽く頷いた。颯希は仕舞っていたノートを引っ張り出しペンを持つ。何か、今まで知らない情報が飛び出すかもしれない。


「一階の歴史の棚には戦争や王族の素晴らしさを書いた本ばかり並んでいるが、二階の本棚にはもっと、王族の内部を示すような本がちょっとだけある」


 颯希は、図書館の二階の、アンフォッシ家の棚の向かい側にあった棚を思い出す。確かあれは題目がすれてて、見えなくなっていたが暦ではなく歴史だと、今なら思える。あれのことか。


「ま、その二階の棚には今までの王位継承者の顔写真と生まれた年から死んだ年、その人物が達成した異業やその人物がいた時代に起きた代表的な争いなどを示している本があるんだ。そこで俺は、お前の祖母の写真を見た。――彩里さん、騒がない。つまり、颯希の祖母は先代王女・アンナ・フェシュネールだってことだ」


 改めて言葉にしてそう言われると何かが刺さったような痛みだった。話を聞いてもしかしたらと考えていたことをずばりと言われた。言葉を失っていた颯希に、追い打ちをかけるように滉は言った。


「お前の身体、傷があるだろ?」


 そう言われて、とっさに背中の傷だとわかる。すっかり忘れていた。思わず背中を触る。彩里たちは黙って滉の会話を聞いており興味津々でこちらを見ていた。


「二本の線が、クロスして真ん中に四角が出来ている、約五センチ幅のもの」


 そう言って、颯希に近づいた。颯希は滉の言ったことに驚いていた。


「それも、見たの?」

「ああ」


 滉は颯希に近づくと颯希の後ろに回った。


「傷、見せて」


 下唇を噛む。部屋に静寂がやってくる。


 もしかしたらと、ずっと前から思っていたことが一つある。本を読んでから考えていたことだ。


 ――わたしは本当に、王族なのではないか?


 王家の印というものにぴたりとあてはまる容姿。要素はそれだけだが、どうしてもヴィパルに来ると血が騒ぐような気がした。戻ってきた、やっと帰られた。初めて見た、と言うような感情はあまりなかった。後ろにいる滉が言うこと、先代王女の写真と祖母の写真。今ではその要素が膨れ上がっていた。颯希はほぼ確信めいて思っている。本には、王とかなり遠い者でも王家の印を持って生まれる者がいると書いてあった。つまり、颯希の祖母が王であったなら颯希にも王家の印が出る可能性があるのだ。


「……」


 颯希は無言で、少しだけシャツをまくり上げた。背中の傷があらわになり、滉はそれをじっと見てから


「彩里、これ治せるか?」


 と彩里に聞く。彩里は近付いてきて言った。


「やってみる」


 彩里は、颯希の肩の傷を治した通り、右手を傷に当て、しばらくしてから手を横にずらす。

 だが傷は、確かにそこにあった。


「だめね」


 ため息交じりにそう言って、颯希にシャツを下すように言う。


「これで確定だな」


 立ち上がりながら滉は言った。颯希も思っていた。


「颯希は、現・王位継承者の正当な王だ」


***


 そのころ、王族では緊急事態が起きていた。


「王!」


 白髪の娘が呼びかける。周りの警備と思われる者たちの制止を振り切って王に駆け寄った。目のふちに涙をためて、王と呼び掛けたものの手を握る。王は弱々しくその手を握り返し言った。


「次の王は……」


 声が擦れていて、よく聞き取れないような声だが娘は分かったようだ。ただ、それをすぐに答えず、少しためらった口調で言った。


「まだ、生まれません」


 この間、王のいとこにあたる夫婦が何人目かの赤ん坊を産んだという報告があった。だがその子には王家の印が出なかったのだ。


「そうか」


 目を細めた王は、そのしわの多い今まで大変な苦労をしてきたであろう顔を悲しそうに歪めた。


 王は時期王に引き継ぎを行うのが習わしなのだが、その子はまだ現れず、王は倒れた。(やまい)だった。宮殿に使える者の中に病を治す能力を持つ者はいない。そしてその病は、もう王の体全体を蝕んでいた。


「悲しいのお」


 王が倒れたことで、宮殿中がパニックになった。それはもちろん、現王が倒れてしまったことに対してもあるが、現王が死んだときその次に王位を継ぐ者がまだ現れていなかったからだ。だからこの国は一時王なしの状況ができてしまうかもしれない。その考えがまたたく間に広がった。それは国にとってあってはならないことなのだ。


「王は、まだ生きていなければいけません!」


 白髪の娘は、そう言う。そして自分の能力で王を治せないことを悔やんだ。ためていた涙が、静かに頬を伝ったのを感じた。


「泣くな、シモーナ」


 王は、息絶え絶えにシモーナと呼んだ娘の頭を撫でた。


「ワシはまだ、死なんよ」


 そして、弱弱しく微笑む。王と目があったシモーナの瞳から、大量に涙があふれ出た。


 その様子を、遠くから見ていた赤毛の女がいた。


「時期王、ね」


 そして一人の少女を思い浮かべる。ある日突然現れ、王家の印を持つ少女。背中に傷まであるという、あの少女がきっと時期王になるべき存在なのだろう。


「何考えてんだ? 亜妃」


 どすの利いた声が横から聞こえる。


「別に何も。考えていたらシモーナに読まれてしまうでしょ?」


 冷めた目で隣を見る。目立つ色の赤色の上着が目に入る。一瞬で視線をそらした。亜妃と呼ばれた少女の一番嫌いな男が隣に立っていたのだ。


「それもそうだな」


 鼻で笑いながら男は言う。


「変なこと考えたら、俺がお前を殺すからな?」


 脅しだろうが、それを亜妃は全く恐怖に感じなかった。感情がないような顔で男を見詰める。


「黙ってくれる? ドゥッチオ。あたしが何なのか、忘れたとは言わせないわよ」


 腕を組み、そう言った。亜妃より背の低いドゥッチオと言う男は軽く舌打ちをする。


「あたしがジェラルドにとってなんなのかよく考えてからその頭で頑張ってひねり出した皮肉でもなんでも言ってたらいいわ」


 囁くように続けた。つまりこの言葉は、亜妃に逆らうことがジェラルドに逆らうことなのだと示している。滉は、馬鹿にされたと感じたドゥッチオは足音を立てずに去って行った。


 亜妃はそれを見てから、シモーナを見る。首に光る、銀のチョーカーを見て亜妃は不思議だった。シモーナは普段チョーカーをつけてはいないのだ。つけること自体自由だしどこの家を選んでもいいのだからつけることにとやかく言う必要はなかった。ただ、シモーナは普段つけずにいる。今日に限ってつけているのに驚いただけだ。ただ、それはつまりメランドリ家の者に何か命令を与えているということになる。


 あとで軽く探りを入れるか。


 そう思って亜妃も、ラド家の一人を呼び出した。


めっちゃありがち設定だけど頑張って完結させていこー!!(←ちょっとやけくそ)

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