静寂の荒野と、温かな食卓
聖騎士団の包囲を、傷一つ負わせぬ圧倒的な威圧感だけで退け、シュウたちはレムリアの街を後にしました。
目指すは北方、熟練の冒険者ですら足を踏み入れない高難度エリア**『凍てつく飢餓の荒野』**。追っ手を撒くには絶好の死地であり、何よりシュウにとっては、更なる高みへと繋がる「食材」の宝庫です。
極寒の風が吹き荒れる中、岩陰に設営されたマジックテント。外の猛吹雪とは裏照的に、中はシュウが熾した火と、煮込み料理の湯気で満たされていました。
1. 守られる安らぎ
「……はぁ、生き返るわ。まさかあの状況で、聖騎士の重装甲を『デコピン』一つで弾き飛ばすなんて。あんた、加減ってものを覚えなさいよね」
エレインが、毛布にくるまりながらシュウをジト目で見つめます。彼女のステータス 3,800では、あの包囲網を無傷で突破するのは至難の業でした。
「……シュウ、かっこよかった。……まるでお姫様を守る騎士。……あ、私、お姫様じゃないけど」
ミーニャが少し照れくさそうに、シュウの膝にこっそり頭を乗せました。
二人の瞳には、恐怖ではなく、自分たちを守り抜いたシュウへの深い憧憬と信頼が、これまでにないほど強く宿っています。
2. 「魔物喰い」の真髄
シュウは、荒野に生息するAランク魔物**『氷晶の剛角鹿』**の肉を、大鍋でコトコトと煮込んでいました。
「……よし、食え。身体が温まるぞ」
シュウが二人の器に肉を盛り付けます。
一口食べれば、魔力の奔流が全身を駆け巡ります。二人のステータスが上がるわけではありませんが、その「美味しさ」と「活力」は、どんな高級料理店をも凌駕していました。
シュウ自身も、その肉を噛み締めます。
【ステータスが 120.00 上昇しました】
(……120か。一昔前なら、一生かかっても届かなかった数値だ)
かつて村で「ネズミ食い」と指さされた少年。今、彼のステータスは 9,000の大台に乗り、その背中は二人にとって、世界で最も安全なシェルターとなっていました。
3. リィネへの想い
「……ねえ、シュウ。リィネ、大丈夫かしら。あの子、案外無茶するタイプよ?」
エレインが少し心配そうに呟きました。シュウは、懐にあるリィネから渡された「ギルド証」をそっと撫でます。
「リィネは強い。彼女が信じて待ってくれている以上、僕はもっと強くならなきゃいけない。……次に会うときは、教会すら手が出せないほどにな」
シュウの決意に、ミーニャがそっと手を重ね、エレインが肩を寄せます。
寒冷の地での野営。けれど、シュウを中心としたその場所には、誰にも邪魔できない確かな絆と、微かな甘い空気が流れていました。




