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魔物喰いの境界線 〜0.01の積み重ね〜  作者: ヒデまる


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断崖の迎撃戦

夜明け前の冷気が、湯小屋の隙間から入り込む。

シュウが焚き火の残滓を処理する音で、二人の戦友はほぼ同時に覚醒した。言葉は交わさない。ただ、革装備を締め直す音と、金属が擦れる音だけが静寂の中に響く。

「……霧が深い。絶好の狩り日和」

ミーシャが短く呟き、双剣の柄を握り直す。その瞳は、昨夜の安らぎを完全に捨て去り、獲物を追う獣の鋭さを取り戻していた。


目的地である山頂付近の「境界線」に差し掛かった時、その気配は現れた。

岩壁に擬態していた巨躯――**「岩殻の地竜ロックシェル・ドレイク」**が、地響きと共にその姿を現す。

1. 散開と誘導

「ミーシャ、右から回れ! エイレンは高台の岩影へ!」

シュウの鋭い指示に、二人は影のように動く。

前衛のミーシャが、地竜の足元へ一気に踏み込んだ。

「……こっち、鈍亀」

地竜が巨大な尾を振り回すが、ミーシャは最小限の動きでそれを回避し、剥き出しの関節に双剣を叩き込む。怒り狂った地竜の意識が、完全に彼女へと向けられた。

2. 精密なる援護

「――そこよ、動かないで」

断崖の上、エイレンの冷徹な声が響く。

放たれた三連射の矢は、地竜がミーシャを追って晒した、喉元の僅かな隙間へと吸い込まれた。

地竜が苦悶の声を上げ、体勢を崩す。その瞬間、エイレンは次の矢を番えながら、毒づくように叫んだ。

「シュウ! 何を突っ立ってるの! 私の作った隙を無駄にするつもり!?」

3. 境界線の終止符

「言われなくても分かってる!」

シュウは地竜の懐へと飛び込んだ。

ミーシャが注意を惹きつけ、エイレンが動きを止める。二人の戦友が作り上げた完璧な「空白」に、シュウは渾身の一撃を叩き込む。

地竜の硬質な皮膚を、シュウの刃が断ち割った。

断末魔と共に、巨躯が大地へと沈んでいく。

4. 勝利の報酬

静寂が戻った戦場に、三人の荒い呼吸音だけが重なる。

シュウは倒れた地竜の側頭部へ手を当て、肉質の良し悪しを確かめるように頷いた。

「……いい肉だ。今夜は、こいつの尾の付け根を燻製にするぞ」

ミーシャが双剣を鞘に納め、ふっと表情を緩ませる。

「……楽しみ。シュウ、味付けは少し濃いめがいい」

「ふん、あんたの料理が食べたいから、わざとトドメを譲ってあげたんだからね。感謝しなさいよね」

エイレンは弓を肩に担ぎ直し、相変わらずの口調で言い放つ。だが、その足取りはどこか軽やかだった。

三人は再び歩き出す。

次なる境界線を越え、最高の獲物を喰らうために。

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