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パーティーを追い出されたのでしばらく冒険はお休み  作者: 散散満
伝令人、田舎へ

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80:葬儀実行

「今回はお前らのおかげでだいぶ楽だったぜ。これなら冒険者を護衛に雇うってのもアリかもな」


 オーキスに到着したところで王都に向かう途中にたまたま方向が同じになって三日ほど同道していた行商人のリーダーが笑顔で話しかけてきた。街道が交わる賑わった街であり、彼らはここでしばらく商売をしてまた戻っていくそうなので先へ進む俺達とはここで分かれることになる。


「護衛を雇うことの有用性がわかってもらえたっていうなら何よりだ。俺は護衛はメインじゃないが気が向いたらギルドに依頼を出してやってくれ」


「そうだな、金に余裕があるときは考えてみるさ。じゃあな」


 リーダーがそう言って手を振り背を向ける。が、それは俺が引き止めた。


「ちょっとまった。一杯奢るって約束を忘れてるんじゃないか?」


 その声が届いたリーダーはくるりと振り返り肩をすくめて見せる。


「忘れてなかったか。まあ俺達もこれから晩飯にするが同じ店でいいかい? 紅葉屋っていうんだが」


 ジゼルの方を見ると頷いて了承してくれた。知っている店だったのだろうか。


「問題ないようだ。じゃあ行こうか」


 そうして訪れた紅葉屋は季節の野菜と鶏肉のシチューに白葡萄酒で夕食にした。せっかくのおごりだからじっくり飲みたいところではあったが一応護衛任務中であるので一杯で止めておいた。『たまたま移動中の冒険者』と偽装しているので追加の誘いを断るのにちょっと言い訳が必要になったが。


◆ーー◆ーー◆


 行商人一行と分かれてオーキスを出て、五日で王都セイア地区に到着した。一応警戒はしていたがその後は特に襲撃もなく平穏な旅路であった。


「やれやれ。あれからは特に何事もなく到着できたな」


「南回り街道のこちら側はもう行き交う人も多くなっていましたから。『貴族っぽい男女二人連れ』程度の噂ではいい目標にはならなかったのでしょう。チャックさんという三人目もいましたし」


 なにげなく俺がぼやいたのにジゼルが律儀に返してくる。最初に会ったときはずいぶんとキツく見えたがさすがに半月ほど行動を共にしてずいぶんと当たりはゆるくなったと思う。


「まあともかく王都についたんならこれで護衛任務も終了だな。依頼書に署名(サイン)してくれたら俺が手続きしておくがどうする?」


「一緒に行きましょう。私たちもまだ依頼料を全額振り込んでいませんし」


 ジゼルがそういうのでカルムも入れた3人で連れ立ってギルドへ出向いた。受付で護衛の終了報告をして、ついでにジゼルが支払い済みの手付金を除いた代金を振り込む。受付嬢によるとまとめて来てくれると対応する書類を何度も探す手間が省けるので非常にありがたいらしい。


 俺とジゼルが事務手続きをしている間、カルムは依頼の並んだ掲示板を眺めていた。まだ移動中の服装のままなので見た目ではどの依頼を受けようか迷っている初心者(ルーキー)のようである。手続きが終わってその様子を確認したジゼルはこちらを見ないようにしながら小声で話しかけてきた。


「今晩はこの宿に泊まっていただけませんか。できれば夜は宿にいてください」


 そう言って小さな木札を俺に押し付けたジゼルは返事を待たずにカルムの方へと歩いていき、声をかけると二人で出ていった。


◆ーー◆ーー◆


 ジゼルに押し付けられた木札には『黒馬亭』という屋号と簡易な地図が書かれていた。先に食事を済ませてから宿を探し、賑やかな通りから少し入った場所にその宿を見つけて先払いの料金を払って渡された鍵の部屋に入る。値段の割に隣の音が聞こえないほどしっかりした壁に不釣り合いな大きなベッドに寝転んで待つこと一刻ほどで分厚い扉をノックする音がする。扉を開けると旅姿から侍女らしい服装に着替えたジゼルが立っていた。目立たないようにかエプロンは付けていない。


「やあ、ずっとカルムについているのかと思ったがこんなところに来ている余裕はあるのか?」


「少ないですけど協力してくれる人もいます。ちょっと無理はしていますけど」


「それで俺を引き止めて忍んできたというのは、まあ大体わかるがなにをしてほしいんだ」


「はい、王都に滞在中の御主人様(マスター)の護衛をお願いしたいのです。私も必要な手配などでずっとついているわけにもいかず、さすがに長い間お一人にしておくのは不安ですから」


「一応聞いておくが俺の他に護衛は?」


「家の方からは人を出してもらえませんでした。個人でお願いしようにも今から信頼できるかを調査する余裕はありませんので、ここまでの行動を見てチャックさんならと」


「信頼してくれているなら嬉しいね。じゃあ俺が基本の書式(テンプレート)持ってるから必要事項を埋めてもらえたらこっちで手続きしよう。できるだけ早く戻りたいだろ」


「お気遣いありがとうございます。ですが知人に無理を言って時間を明けてもらいましたし、その、こういう(・・・・)宿ですのであんまり早く出ていくというのもかえって怪しまれるので……」


「わかった、そういうことなら……」


 そうして翌日以降についての行動をみっちり打ち合わせして怪しくない程度の時間が経った後にジゼルは帰っていった。


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