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第一話 出発前
「中国語の勉強って難しいなあ~」
「何言ってるのお兄ちゃん。来月から中国に住むっていうのに」
妹にからかわれながらも、俺は中国語の勉強を熱心にしていた。
「はあ、ピンイン全然読めねえ」
16歳になった俺は、親の仕事の都合で3年間中国で暮らすことが決まっている。
なのに俺は、中国語は你好、谢谢、不客气くらいしかわからない。
「こんなんで大丈夫なの?
私なんてもう、簡単な日常会話ができるっていうのに」
「そりゃ、残念ながら頭の違いですよ」
俺は覚えが悪い。
現地の高校に入るのだし、こんなんで本当に大丈夫なんだろうか。
気晴らしに三国志の漫画を読む。
中国史も大事だからと、父が三国志の漫画を買ってくれていたのだ。
おかげで三国志には詳しくなっていく。
「孔明ってさすがだよなあ……」
「もう、お兄ちゃん!
三国志読んでも中国語上手くなんないんだから!」
「はいはい」
「いいのは顔だけなんだからさ。
モテ男なのになんでそんなに馬鹿なの?」
「はは」
俺は苦笑いするしかない。