第二話 初めての地
一か月後――
『成田国際空港発、成都天府国際空港行きの飛行機は、
間もなく離陸致します』
俺は家族と共に、飛行機に乗っていた。
チケットの関係上、両親は別席で、俺は妹と隣り合って座っている。
「いよいよかあ……。
ついに俺もバイリンガルになっちゃうのかな?」
俺が得意げに言うと、妹が呆れたように、
「まったくもう、勉強しなきゃバイリンガルにはなれないよ?
日本に住んだって日本語が下手なままの外国人いっぱいいるでしょ」
「た、確かに……」
座席に置いてあったパンフレットには、
漢字ばかりで何が書いてあるかわからなかった。
海外旅行さえ行ったことが無いのにいきなり移住だなんて、
俺は本当に大丈夫なんだろうか。
「吃饭了吗?」
「吃了,吃了。没关系」
機内からは中国語らしき外国語が飛び交う。
何を言ってるのか全然わからない。
知らない言語が子守歌のようになって、
気付けば俺は眠ってしまっていた。
5時間後――
「きゃああ!」
女性の大きな叫び声で目覚める。
「な、なんだ!?」
飛行機は大きく左右に揺れていた。
この揺れ、尋常じゃない。
飛行機に何かあったんだろうか?
「ただいま、大きな雲の中に入りまして、
わあっ!」
揺れすぎて気分が悪くなってくる。
ドカンッ!
大きな音が響き渡る。
「これってもしかして……爆発音?」
ごうごうと何かが燃える音がする。
機体が燃えている?
そんな、俺達どうなっちゃうんだ!
「お兄ちゃん!」
ドカンッ! ドカンッ!
爆発が二回続いてから、ゴッと壁に頭を打って、
それから目の前が真っ暗になった。
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「痛……っ」
目を開けると、太陽の光がまぶしかった。
空は晴れ渡っていて、風が心地よい。
ここは大草原だ。
「……確か、飛行機に乗っていたんだよな」
爆発音が聞こえ、頭を打ち、意識を失い、
ここで目覚めた。
大草原に寝転んでいるということは、墜落したに違いない。
「沐陽様! 大丈夫ですか?」
覗き込んだのは10歳くらいに見える少女だった。
なんとも可愛らしく、
民族衣装のようなものを着ている。
「むー……なんとか、って?」
彼女は首をかしげる。
「何って、貴方様のお名前じゃないですか!」
何がなんだかわからない。
誰かと間違えているんじゃないだろうか。
飛行機も墜落したことだし、
皆混乱しているのかもしれない。
「そうだっ! 俺の家族は?
無事か!? 無事なのか!?」
急いで辺りを見回す。
「ご家族?
劉備様のことですか?」
「劉備?」
「はい、沐陽様のお兄様です」
「は?」
この少女は何を言っているのだろう。
俺は頭を打っておかしくなってしまったのだろうか。
もしかしてこれは夢なんじゃないか。
「劉備と言ったら、俺は三国志に出てくる
劉備しか知らないけど」
「三国志?
魏・呉・蜀三つの国の話ですか?
この戦国の世では三国と言ったら
これ位しか思い浮かびませんが……」
「それだよ!
って、嘘だろ!?
それじゃあ俺、劉備の弟に生まれ変わったのか!?
劉備は本当に俺の兄貴なんだな!?」
少女は不審がって、
「何をおっしゃってるんですか?
劉備様はお兄様ではなく、お姉様ですよ」
「は……?
劉備は武将だろ? 男に決まってるじゃないか!」
「武将は皆女性ですが……。
戦と言ったら女性に決まっているじゃないですか!」




