2)侍女アリス
ローズの慰問には、常にアレクサンドラが付き添うようになった。アレクサンドラの瞳は、空色だ。母親似なのだという。ロバートによく似た美しい顔立ちも、化粧と髪型で誤魔化せば、平凡な顔になる。アレクサンドラは、何処にでもいそうな、平凡な外見で、ローズの信頼の厚い侍女アリスとしてローズに付き添った。
アリスを紹介されたローズは戸惑った。
「どうしてアレクサンドラがアリスになるの」
ロバートが、何かに対して手を打っているのはわかる。何を警戒しているのか、ローズにはわからなかった。
「そのほうが都合がよいのです。アレクサンドラが、私の親族だということを知る者は多いですから」
ロバートがはぐらかそうとしていると気付き、ローズは食い下がった。
「どうしてアレクサンドラのままではいけないの」
ローズを抱く、ロバートの腕の力が強くなった。
「リヴァルー伯爵の魂胆がわかりません。あなたが、孫かも知れないと言ってから、一切動きがない。アレクサンドラは目立ちます。アリスであれば、目立たずにあなたを警護できます」
ロバートがローズの左手を取り、口づけた。指先、婚約指輪、手の甲、手首を飾る腕輪と口づけていく。腕輪を飾る宝石は、小さなエメラルドとイエロー・ダイヤモンドだ。ロバートとローズの結婚の証だ。レネが頭領を務める宝石職人の工房が作ってくれた。
「私が常にあなたと共にいることができればよいのですが、それはできません。アレクサンドラであれば腕が立つ。あなたを守る事ができる。目立たないアリスとして同行するならば、警戒もされない」
ローズはロバートの首筋に抱きつき、首筋に顔を埋めた。
「一人にしないで」
「無論です。そのためです」
一瞬の間のあと、ロバートの声が、ローズの耳元で響いた。
ロバートは、ローズを宝物のように扱ってくれる。大切にしてくれる。貴族ではないロバートに出来ることは限られる。ロバートが出来る中で最大の手札を切ってくれたのだ。
アリスとなったアレクサンドラが、スカートの中に隠れた脚にくくりつけた剣を抜かずにすむよう、ローズは願った。




