第1節『トーカの街』
どうも、もんたです。
お待たせしました。第2章始めます。
それでは、どうぞ。
*******************
*******
―――トストストス
廊下を軽快に歩く音で目が覚める。
白み始めた庭の木々の隙間から聞こえる小鳥たちの囀りが心地良い。
屋敷の使用人の人たちが起き始めて準備を始めるころ。
僕も身支度を整えて部屋を出る。
「おはようございます。マルク様。」
「おはようございます。」
すれ違う使用人の人たちもこの数か月ですっかり見慣れた。
初めの頃は「様」付けは止めてくれって言ってたんだけど、
「旦那様の大切なお客様ですから。」
の一点張りだったので、止めるのをあきらめた。
勝手知ったるなんとやら、で案内がなくとも館の中は歩き回れる。
入っちゃいけないところには衛兵さんなり、メイドさんなりがいるのでやらかすこともないし。
いつものように中庭まで向かい、魔力制御の訓練を始める。
朝食までのだいたい一時間くらい。
修行の頃に比べれば短いけれど、そこは制御する魔力の最大量を増やすことでカバーする。
「よしっ。始めるか。」
部屋から持ってきた布を敷いて、座禅を組んでっと。
「ふぅ…。≪水蛇≫」
僕の頭上に人の頭より一回り大きな水の玉が出来あがる。
そこから蛇の形をした水がうにょうにょと伸びていく様子はちょっと面白いような怖いような。
今なら5匹は余裕をもって動かせるので、5匹のサイズを通常よりも一回り大きくして訓練をする。
「―――!」
目をつぶって集中。
わざと少し高いところを飛ばしているので、木の枝にぶつかったりしないようにしないと。
毎日使用人の男性たちが楽しそうに手入れをしているので傷つけたりしたら申し訳ない。
「ふー…。」
「―――ん!」
今日は調子がいいしいつもはやらない技にも挑戦してみよっかな?
5匹の水の蛇を1匹の大きな蛇へと合体させる。
個別に制御していた魔力を一つにまとめるのは実は結構大変。
より一層集中しないと…
「マルクさんったら!!」
「わっ!?」
突然肩をゆすられて目を開けると目の前に頬をぷくっと膨らませたソラリア様がいた。
ただ声のタイミングが…!!
「ちょっ!今は!!」
「へ?」
――バシャァァァァアア!!
「うわっ!」
「きゃああぁぁぁぁぁ!?」
魔力制御がとかれた蛇たちは空中でただの水に戻るわけで。
空中に浮かんでる水は当然下に落ちてくるわけで。
結果、僕とソラリア様はあっという間に水浸しになってしまった。
「あははは!だからソラリアは着替えてたのか。マルク君は訓練の後だし気にしなかったけど、なんでソラリアもって思ってたんだ。ははは!」
「も、もう!!お父様笑いすぎです!!殿方の前でびしょぬれになってしまって…とっても恥ずかしかったんですよ!?」
「ははは。ごめんごめん。原因が面白くてね。どちらが悪いか、といえばぼくはソラリアのせいだと思うけど?」
「そんなことありません!朝食の時間が迫ってますと何度も名前も呼んでるのに反応してくれないマルクさんがいけないんです!お母さまもそう思いますよね!?」
「ふふふ。さてどっちかしら。訓練中ということを考えれば集中の邪魔してるわけだからソラリアが悪いわね。それに魔法使用中なのに不用意に近づいたのもよくないわ。制御を離れた魔法が危ないことはあなたが一番わかってるでしょう?」
「うっ…それは…そうですけど…」
「好きな子に振り向いてほしいのはわかるけれど、もう少し落ち着いてほしいものね。ね、あなた。」
「!!??お、お母さま!?」
「あはは。そうだね。まぁ、彼が鈍感なのか、まだソラリアがうまく隠せているのかわからないけど、気づかれてはいないみたいだよ?」
「も、もう!!お父様までやめてください!そんなんじゃありません!」
「あら、ソラリア。じゃあマルク君のことは好きではないの?」
「ゴホッ!!」
マリアンヌの直接的な言葉にシャンドラがせき込む。
「そ、それは…その…」
真っ赤に染まった娘の顔をみてマリアンヌはにやにやと笑う。
「わが子ながらかわいいわぁ。恋する乙女って素敵ね。」
――コンコン
「おや。誰だい。」
「旦那様、マルク様をお連れいたしました。」
名前をきいてびくっと体が動くソラリア。
「思っていたより早かったな。いいよ、通してくれ。」
「セバス、メイドはいいわ。お茶は私が淹れるから。」
「かしこまりました。失礼いたします。」
執事のセバスに連れられてマルクが入ってくる。
マルクが中に入ったのを確認した後、セバスは一礼し部屋を出て行った。
「シャンドラ様、およびですか?」
「うん。時間とっちゃってすまないね。恰好を見るにギルドに行くつもりだったんだろう?それと「様」じゃなくて、これまで通り「さん」で構わないよ。ここには身内しかいないんだし。」
「そうよ、マルク君。私もソラリアも「さん」で構わないわ。あぁ、ソラリアのことは呼び捨てにしてもらったほうが良いかしら?ふふ。」
「お母さま!!」
ソラリアさんの顔が真っ赤になる。
「あはは…さすがにそれは失礼なので…シャンドラさん、ご用件は?」
「あぁ、本当に大したことではなくてね、今日は早めに切り上げて帰ってきてほしいって話なんだ。明日は心配はしていないけど大事な試験ではあるからね、」
「あ、なるほど。もともと早めに切り上げるつもりではいましたけど…」
「それなら大丈夫だ。時間を取ってしまってすまないね。今日も気を付けていっておいで。」
「はい。ありがとうございます。」
「いってらっしゃい、マルク君。」
「マルクさん、お気をつけて。」
「はい。行ってきます。」
手を振ってくれる三人に見送られながら部屋をでた。
玄関まで使用人さんに連れられながら向かう。
半年ほどこの屋敷に住まわせてもらってるけど、自分の部屋始まりじゃない時は未だに迷う。
まぁ…用事がある部屋は決まっているので、困ることはそんなにないんだけど。
玄関までたどり着くと珍しくライオネルさんが待っていてくれた。
「あれ、ライオネルさん。セバスさんじゃないんですね。」
「はい。セバスは所用で出ておりますので、お見送りは私が。マルク様、馬車にてお送りいたしますが、ギルドでよろしかったでしょうか。」
「いえ、大丈夫です。そんなに距離もないし身体動かさないとなまってしまうので。」
「かしこまりました。お気をつけて。いつ頃お戻りになられますか?」
「そうですね…4回目と5回目の鐘の間くらいには戻ると思います。シャンドラ様に早めに戻るようにって言われてるのですが、もう少し早いほうが良いですか?」
「いえ、マルク様のご予定通りで結構でございます。セバスも冒険者ギルドに用事があると言っていましたので、そのままお迎えに上がるかもしれませんが入れ違いになってもお気になさらないでください。それでは行ってらっしゃいませ。」
「「いってらっしゃいませ。」」
「はい。いってきます。」
ライオネルさんの挨拶に合わせて近くにいた使用人の人たちが送り出してくれる。
なれないなぁ…
いつもビクッとしてしまう。
屋敷をでてすぐは上層街と呼ばれるエリア。
シャンドラさんの治めるフリオニール領一番の街であるトーカには大きく分けて上層街と中層街の二区画がある。上層街は騎士職や貴族、大商会の本店とかがあったりする。
トーカは王都から西の方にある街の中では最大規模で、そこそこな数で立派なお屋敷が建っている。
トーカの街は北側が上層街。
一番北にシャンドラさんの住む領主館があって、そこから南に街の運営をするための施設やそこに勤める人たちの家が散らばっている。
街の中心から見て西側に僕やソラリアさんの行く予定(試験しだいだけど)の学園がある。
その隣には兵舎が建っているので、西側にいるのは学生か南東部分が中層街。
貴族以外の人たちが住んでたり商売をしたりというエリアとなっている。
街の外壁に近い東側の端っこは一部スラム街っぽくなっているということだった。
でも、一度みんなに黙って一人でふらついたときにはそんな印象は受けなかったんだけど。
その後たまたま近くにいたマットさんに見つかり、ものすごく叱られた。
15分ほど歩いて街の中央部に到着。
街の中央には大きな噴水がついていて、その更に真ん中には英雄の石像が立っている。
遠くからでも良く見えるし、ベンチもあるしで待ち合わせに良く使われるんだとダリアさんが言ってたっけ。
今日もあちこちで冒険者風の格好をした人たちが露店をにぎわしている。
領主館から広場までの一本道を館のほうを向いて、噴水を中心、時計回りに冒険者ギルド、薬師ギルド、職人ギルド、商人ギルドと勢ぞろいしてる。
昔はばらばらだったらしいけど、前領主(シャンドラさんのお父さん)になってから、
「効率が悪い。全部集まれ。」
という命令を受けて今のようになったらしい。
実際、重要な施設が集まってるので警備の手間も省け、ギルド間の連携も楽、外から来た人もわかりやすいと良いこと尽くしらしい。
僕も街に来た頃はすごく助かったんだよね。
お読みいただきありがとうございました。
週1回の頻度で更新していこうと思います。
良ければブックマーク、評価ボタン、押していただければ幸いです。
今後もよろしくお願いします。




