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メッドクレサンend S

「開けます」


私は鍵を差し込み、回した。カチリという音がするが、なにもおきなかった。


「開いて中を読んでごらん。きっと君の望む者の名がうつっているはずだ」


私は彼に言われるまま本を開いて中をみる。


そこに名は誰のもない。


―――!


挿絵(By みてみん)


一瞬誰かの姿が頭に浮かんだ気がした。

――――――



ドオオン!!


「――奴は向こうへ逃げたぞ」

「追え!」

____


「ふう……」


転送装置のある郵便局はここから―――


“聴こえるか?”


いきなり頭に声がした。聞いたことはない筈なのに、どこか懐かしさのあるような。


「貴方は誰?」


“わからないのか”


「【メッドクレサン】――」


その名を言ったのは私?勝手に口が動いた気がする。


“やはり忘れてはいなかったか”


あと少しで思い出せそうなのに、どうして―――


“我が元へ”


その名と姿が合致したところで、私の意識は飛んだ。

――――――――


「はーい皆さん席についてー」「先生!」

「なんですかAくん」「アクアルナさんが来ていませーん」

「……寝坊じゃないですか?」

「ユベリス、ミューティギロアン、コンファル三人もいません!」「いつの間に!?」

―――――――


「あれ……」


目が覚めると、私は石の祭壇に寝かされていた。手足が鉄製の枷で固定されている。


「なんなのこれ!?」


誰か助けて―――!


「アクアルナ、気がついたのか?」

「フェルシ先生!?」


なんで先生が……でも助けに来てくれたんだよね。


「よくわからないんですけど、私誰かに捕まっちゃって……」

「そうか」


そうか……って、なんで外してくれないの?


「なぜ君がここにいるか、教えてあげよう。君を捕えたのは‘私’だ」

「……え」


―――フェルシ先生が、どうして私を祭壇に?

彼はなにかにとりつかれたように妖艶に微笑むと祭壇の反対側にある大玉へ手をかざした。


「白キ神、復活ノ刻キタレリ――」


何か呪文を唱える。大玉がひび割れそうになるたび、私の心臓がドクドクと脈うった。


「そこまでだ!!」


大きな扉が勢いよくひらかれた。白く輝く逆光に黒のシルエット、そこにいたのはユベリスだった。


「ユベリス!」

「ミス・アクアルナ、怪我はないか?」


ミューティギロアンが枷を外す。


「邪魔が入ったな……」


フェルシが手を動かそうとすると、カチャリ、彼に銃を向けたコンファルがいた。


「皆……!!」


じわりと涙が浮かぶ。


「どういうことか説明してもらおうか」


ミューティギロアンが問い、ユベリスは静かにフェルシに剣を向ける。

完全に周りを固められ、フェルシは抵抗する素振りもない。


「《……この光景を観るのは、何度目になるか》」


ノイズの混じった声がフェルシから発せられた。


「貴方もしかしてフェルシ先生じゃないの!?」

「《いかにも……吾はサクサージェ。終焉なる神である!》」


フェルシの躯<からだ>から瘴気<しょうき>のごとし黒き魔のオーラ。

皆は彼から距離をとる――近づいてはいけない。

______



「ねえ、私を呼んだメッドクレサンって誰なの?」


私はサクサージェに問う。


「《そうか、奴がお前を呼んだか》」


こんな反応をするということは、あの声はサクサージェの罠ではなかったの?


「貴方は私を使ってなにをしようとしているの?」

「《吾は枷を壊し、再びこの世界へ戻りたいだけだ》」

あの大玉、それがサクサージェを封じているみたいだ。


「でもそれ、貴方がなにか悪いことをしたから封印されたんじゃない」


サクサージェが封印された経緯までは聞いたことがないけど。


「世界を破戒せし邪神サクサージェはメッドクレサンと戦い。水竜神の大玉<ラシェゴン・シュンヒハイヒ>に封じられた」


ミューティロギアンが本を読み上げた。


本によるとラシェゴンとはアクアルドの神官に伝わる水龍神で、ミーゲンヴェルド世界の要である神官たちによって祀られてきたものらしい。


「やっぱり貴方が世界を脅かすから悪いんじゃない!」

「《吾は邪神ぞ?不要なる世界を破壊せんとし、なにが悪だと申すか》」開き直った!?――世界を守るためには、こいつを倒さないと。


「サクサージェ!なんかよくわからないけど、私貴方を倒さないといけないみたい」

「《ほう……‘また’消えたいか?》」

「え?……とにかく邪悪な神に、世界を壊させはしない!」


と、大口を叩いたはいいけれど、私って魔法使えないじゃん!

得意の薬も今は持っていないし、どうやって戦えばいいの!?


「アクアルナ」

「……ユベリス」

「大丈夫だよ」

「コンファル……」

「僕たちも戦う」

「ミューギロギアン」

「いま間違えなくてもいいだろ!」


私、何を弱気になっていたんだろう。――皆がいれば大丈夫だよね!


「サクサージェ!覚悟しなさい!」

「《なんだ……このオーラは……》」


「仲間パワー!」


皆の心をひとつにし、サクサージェは見事倒された。



《そう簡単に、吾が倒せると思うな》


と思いきや、残像であった。皆はサクサージェのホアイトホウルによるダメージを喰らう。


(皆……もう、だめだ……私たちこのまま……)



“アクアルナ――”


(この声……メッドクレサンなんだね)


“三度目の死を迎えては、もう転生は赦されないのだ”


(ああ……そうか、魂は三度転生したら次は宇宙の一部になるんだったね)


“だから、死を迎える前に再び刻を巻き戻そう”


ああ、私達がループしていたのはそういうことだったんだ。

私が死を迎える前に、メッドクレサンが回避してくれていたんだ。


《奴め……吾を封じた刻、たしかに消えた筈……まだそんな力を遺していたというか》


“〔アクアルナ〕もう一度奴を封じよう”

「うん」


私は彼の神の力に魔力をのせ、サクサージェの封じられていた大玉へ込め。


《ぐああああああ》


ひび割れは完全に修復され、サクサージェは大玉へ戻っていった。

――――――――――


あれから学園に戻り、変わらない平和が訪れる。しっているのは四人だけだし、フェルシ先生もサクサージェに取りつかれていただけで理由はまったくおぼえていないみたい。

私達だけが知っているちょっと不思議な出来事。まだまだわからないこともあるけど、きっと他の誰かがそれを解明してくれる。

私達がその謎を追いかける必要はない。



「まさかあのとき、窓にはりついてたホームレシュがこの星の神様だったなんてね~」

「この星は平等を掲げているからな。神が人間と平等になるには浮浪者でいなければならない」

「あーあ、セレブ妻を狙ったのに、ダンボール生活か~」

「嫌なら入るなよ」

「やだ入る」


【大団円・・・まさかのダンボール生活】

ご愛読ありがとうございました。

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