彼女の父親は、
私たちは、大人になってから婚約をして結婚をした。政略結婚だった。私の侯爵家に伯爵家の妻が嫁いできた。ただ、それだけだった。愛情も、何もなかった。でも、顔見合わせの日、明るい茶色の髪を持った美しい彼女が、話した言葉で私は、これからこの人と生きていくのが、とても心地よく初めて穏やかにこの人といたいと願った。恋や、愛で終わるものではない。お互い信じあえる対等になれる、希望に満ちた存在になった。
初めて、彼女と話した。
初めて、花ことばの意味を知って、花を送った。
初めて、仕事を無断欠勤した。
初めて、彼女の手紙が恋しいと、彼女の待っている家に帰りたいとじれったかった
久しぶりに、浮かれて仕事でミスをした。
久しぶりに、家族でお茶を飲んだ。
久しぶりに、町へ遊びに行った。
久しぶりに、旅行に行った。
まるで、今まで失った色が取り戻されていくかのように幸せだった。彼女と死ぬまで一緒なのだと疑いもしなかった。こどもができて、その子が結婚するのを見て、隠居して、ゆっくり年を重ね一緒に生きる。花に囲まれて笑う彼女と。
でも、私はいつも肝心な時に間違いを犯す。
子供が生まれると聞いて、その日の仕事を放って、そのまま家に帰った。ずっと待ち続けて生まれた子は、かわいらしい女の子で、私と同じ茶色い目に彼女の明るさを足したような金色の髪をしていた。
幸せで、こんな幸せでいいのかとその子を抱いたまま泣き崩れて彼女に苦笑されて温かい、まどろんだあの日の空気。
それは、一瞬だった。生まれた子を彼女は、乳母に預けず、自分で育てていた。忙しい中、私もよく手伝い、その子はすくすくと成長していった。半年たって、彼女付きの侍女に言われた。彼女が、妻が、辛そうだから夜の間だけでも私たち侍女がお世話をしたい。彼女は、聞き入れてくれないので私から話してくれないかと。その通りだと思って、その日のうちに彼女に話に行った。その間、子供を預けて。その、ちょっとした時間であの子は、いなくなった。誘拐された、気づいたのはすぐだったのに見つけることはできなった。彼女付きの侍女は、私の屋敷でずっといた侍女ではなかったか。なぜ、すぐおかしいと気づかなかったのか。なぜ。なぜ。悔やみきれない後悔をした。
それでも時間は過ぎて、妻は、苦しんでいった。妻の伯爵家とも協力し全力で捜索していた。半年が過ぎた時、伯爵家の兵が、村で最近拾われた子だとよく似た金色の髪に、少し暗い茶色の目をした泣いている子を連れてきた。でも、そう思ったとき、妻は、それを聞いて抱かせてといった。泣いていた子は、抱かれるとすぐ泣き止んだ。そして、捜索は、続けてほしい。でも、望みは少ないでしょう。だからこの子を育ててもいい?そう泣いて言った。拒めるはずがなかった。情報が漏れないようにして、捜索も数を減らしばれないように。ゆっくりと時間は流れていった。
妻は、一時も娘と離れたくないようで、ずっとつきっきりだった。成長するにつれてやはりその子は、容姿が違かった。でも、きづかれない程度。そのころには、もう私たちの大切な娘だった。でも、そう簡単にいくものでもなくて、妻は、心労で病に倒れなくなった。残されたのは、血がつながらない、でも明るく、凛とした妻に愛情をいっぱいに育てられた優しい、家族思いの幼い少女だった。妻がいなくなっても、娘は娘で、変わるはずがなかった。新しく妻を迎える気もなかった。二人で頑張っていこうと娘と約束しあった。
妻がいなくても娘が、結婚する姿を見て、家を預け、見守っていく。そう妻に誓った。
婚約は、慎重だった。そしたら、娘が、忘れられない人がいるという。調べれば、婚約の申し込みのあった公爵家だった。なんという縁か。けれど、そうなれば、公爵家に嫁ぐことになる。わが家を継ぐのは、娘であってほしかったが、その娘の思いをむげにはしたくなかった。もし、仮に本当の娘が見つかったらその子に家を継がせるか、養子をもらおうと思った。
娘と公爵家の子息はとても仲が良さそうで、幸せそうだった。娘は、これまで以上に努力し始め、貴族の手本のように美しく聡明に育っていった。自慢の娘だった。少し臆病なところがあっても、人を守るその優しさを忘れず、勇敢でいられる子。でも、気づていなかった。
全寮制の国立学園でのことを私は、手紙でしか知らない。何があったのか、どのような思いでいたのか、どんなに葛藤していたのか。いつも私の前で幸せそうだったあの子のことを。
卒業が迫る中、本当の娘の捜索をあきらめようかと考えていた時、平民で女子でありながら優秀な成績を収め、王宮で働くという金髪で、茶色い目を持つ子供のことを聞いた。ふと調べさせれば、その可能性が広がっていく。もし、優秀な彼女が望むなら、平民でありながら社会をよりよくしようとしている彼女が望むならば、そのために必要な力をせめて父として力になれないか。そんなことが頭をよぎった。そして、卒業式のパーティで帰ってくる娘のためお祝いの準備をしていた私は、報告を受けた。本当の娘の居場所を。一度、話を聞く。その両親と話がしたいと伝えてくれ。そう命令してから、ずっと娘が帰るのを待ち続けた。でも、帰ってこなかった。異変に気付き公爵家や他方に聞いても、みな知らないという。公爵家はそれどころではないらしくあわただしかった。表面上、おだやかなのに何か気持ち悪かった。
次の日には、本当の娘を育てたという両親が訪れることになっていた。娘と同じ学年にいたはずだ。何か情報がつかめたらと思う。両親は、とても素晴らしい人で、そこで育ったあの子もきっと幸せに育てられたのだろうと思う。娘の話は聞けなかった。内心つらくなりながら何かあればあの子の援助をするそういう話をして終わった。
のぞいた娘の部屋には、朝にはなかった手紙があった。涙でところどころにじんだその手紙は、私宛ではなかった。見るべきではないと裏返して、ふと目にその文字が目に入った。ゆっくり、震える手で手紙を戻す。それは、遺書にもみれた。地面が揺れていた。すぐ公爵家へ、、、
なぜいつも間違えてしまうのだろう。連絡もなしに馬車に乗り中で手紙を読んでは、読み返して思い返す。妻がなくなった日の娘との約束。いつも明るそうな彼女の後姿だけが目にちらついた。
彼女は、もういない。




