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42 お悩み相談は大切2

 え? 他にも言うことあるの?


 ルイスが他にも悩んでいると聞いて、それはそれは動揺を隠しきれなかった。


 いやはや、実に意外なことにルイスには悩みが多数存在するらしい。それはもう、彼は悩みが沢山あるとは思わなかったし、何気なく格好付けた感じで尋ねたあとのこの慌てようになってしまって、もう恥ずかしいです、はい。


「えっと、他にも悩みがあるのよね?」

「あるよ。うーん、でも……」


 あるのだと断言しておきながら、その実話したくはなさそうに言葉を探しているのが良く分かる。


「言いたくないなら良いけれど、それで今後の生活に支障が出るとかは止めなさいよ」


 まあ、その辺は現在心配していないが念のためだ。

 ルイスの顔もスッキリとしたものとなっているし、これなら大丈夫だと思っている。


「まあ、いつか話すよ……俺の決心がついたらだけど」

「ルイスはへたれだからその時が来ることを期待していないで待ってあげるわ」

「おい、そういうこと言うなよ、地味に心が抉られるぞ」


 知ったことか。


「じゃあ、これでお悩み相談はお仕舞いかしらね?」


 私がそう言うとルイスは口を軽く開けながら呆気に取られている。


「は? お悩み相談?」


 え? いや、お悩み相談でしょ?


「ええ、だってそうじゃない。悩んでるルイスの話を心の広い私とミーナちゃんが親切にも聞いてあげたんだから」

「おい、なんでそこで自分が心が広いとか自称してる? それからお悩み相談だとしたら、その解決方法とか助言とかあるだろうが」

「無いわよ、私達は専門のカウンセラーじゃないのよ」

「……はぁ、そんなこと、分かってるよ」


 ま、私達がルイスに対してしてあげたこととは、つまるところ、話を黙って聞いてあげていただけ、なので、特に彼にとって有益なアドバイスとかを与えたりはしていない。

 ミーナちゃんからアドバイスを貰えるとでも思っていたのだろうか? 幼い子供にアドバイスが貰えるわけ無いだろうと内心思ってしまう。


「むー……サシャお姉ちゃんだけ、なんかルイスお兄ちゃんと楽しそうに話してる」


 おおっ、なんて可愛いのか、膨れっ面のミーナちゃんもこれまた違う魅力が……いやいや、いけないわよ。私はそんなに危ない人間? 女神? では無いのよ! ルイスと同じ幼い女の子にデレデレしちゃう私じゃないのよ!」

「おい、途中から声漏れてるし、お前の俺に対しての評価に本格的に言及したいんだが」


 と、ルイスに私の心の声の漏れ出た部分について追究されそうになったところで、時間も時間、ということで、いい加減夕飯を食べようということを提案し、二人に納得してもらった、いや、させた。

 どうやら女神の部分は漏れて無かったのでセーフ。まあ、別に聞かれたとしても、記憶を消し去れば良いのだけど……(そんな魔法は使えない)。


 ミーナちゃんは素直だから「サシャお姉ちゃんとルイスお兄ちゃんが後で私もお話に混ぜてくれたらそれでいいよ」なんて可愛いことをおっしゃっていた。

 その反面「お前……逃げたろ」なんて可愛いげの無いルイスに対して、少し遺憾であるが、正論なので言い返せなかったのだった。


「美味しかったー!! サシャお姉ちゃんの料理大好き!!」

「ええ、ミーナちゃんのために一生懸命に作ったからね!」


 私はどうやらミーナちゃんの魅力に囚われてしまったようだ……。


「あんまりデレデレするなよ、サシャ」


 ルイスにそうやって止められなければ、理性が飛んでしまうかもしれない。感謝、ルイス感謝よ!


 夕食はルイスの調子も元に戻ったお陰で、とっても賑やかなものになり、私達三人は楽しく雑談をしながら食事を堪能した。

 因みに私とルイスがミーナちゃんの話を殆んど聞く形になっていて、ミーナちゃんも満足げな笑顔で饒舌になっていた。


「ところでルイスお兄ちゃん。ヤミちゃんと私、どっちが可愛いの?」


 と、話の流れがミーナちゃんの気紛れによってとんでもない方向に転換された。既にミーナちゃんが全面的なマウントを握っている。


「えー……なにその究極じみた選択。そもそもミーナちゃんとサシャはヤミに会ったこと無いだろうよ」


 しかし、これは少し興味がある。

 ルイスはシスコンなのか? それともただのロリコンなのか? どうでもいいことなのだが、聞いてみたい!


「それで? どっちが可愛いの?」

「いや、何乗ってんだよ! お前は本当にぶれないな」


 そんなに突っ込んで疲れないのだろうか? なんてことを思っていると、ルイスは疲れたような顔をした。あっ……一応疲れてるんだ。


 でも、そんなことは関係ない!!


「私も興味があるのよ。良いからさっさと吐きなさい」

「はきなさいー!」

「ミーナちゃんも真似しなくて良いから! 二人は尋問官か!」


 賑やかな食卓で、問い詰めるサシャとミーナをかわしながら、ルイスは困りつつも楽しみながらこの幸せな時間を送った。






~~~~~~~~~~~


「なあ、サシャ」

「何よ?」


 こんな時間になんだろうか?

 十一時半を回っているこんな時間まで起きているルイスは、隣のベッドからそんな私に呼び掛けてきた。

 ミーナちゃんは私の横でスースーと寝息をたてて眠っている。


「あの、今日のこと……大分心配させたみたいで、改めて悪かったな……あと、ありがと」


 ルイスは、とてもか細い声でそう言った。


「もう気にしてないわ。貴方ももう気にしなくて良いわ」

「そうか……」

「そうよ……」


 その至極短いやり取りをしたあと、お互いに言葉を交わすこと無く、二人は暫くして寝息をたてた。




もうすぐクリスマス、充実した日になると良いですね。

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