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43 希望と災厄1 ハロルダ王子視点

ジャンル別日間ランキング三位になり、総合ポイントも2000を越えました。

これも全て、応援してくれている読者様のお陰でございます。

ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします。m(__)m

 王国には現在、疫病が蔓延している。

 体の一部が紫色に変色、吐血あり、体温が徐々に下がって死に至る治療法の無い病気。


「──です」

「それが、病気の……」


 以前もこの病気が蔓延していた。

 魔神ルイヴィースがこの地に呪いを吹っ掛け、それによって多くの人間が亡くなったのだ。

 

 その時に呼ばれていた病名を当てはめるのなら、今回の疫病の正体は……。


「エターナル……サファリング……それが病名か……」


 医療に詳しい王宮に仕えている使用人から告げられたその病名を、再度口に出して確認した。

 

「はい、ハロルダ王子。確か意味は、異国の言葉で永遠の苦しみ……正にぴったりの名前ですね」


 どうしようもない絶望感から、溜め息を吐きながら執務室の机に突っ伏してしまった。


「これをどうしろと……」

「もし治療法が見つからなければ、十中八九この国は終わりですね。まあ、見つかっていないのですがね」


 そんなことは嫌でも分かっている、分かろうとしなくても理解できてしまう。

 それは、もっともなことなのだが……。


「今は正論なんて聴きたくない」


 分かっているが、それでも解決法が無いのだ。


「その病気、どうにかする方法は全く無いのか?」


 難しくてもそれでも何かあると信じてその使用人に聞いたが、その使用人からは救いようもない現実を突き付けられた。


「感染経路も不明です。空気感染なのか接触感染なのか或いはその他の感染経路なのか、予防のしようがありません。それから、統計として面白いものがあります」

「それは何だ?」


 聞き返すと、数枚の書類を纏めたものを手渡してくる。

 暗にその書類に全てが書いてあると揶揄しているのだ。甘んじて、それを受け取り、軽く目を通す。


「…………」

「どうですか?」


 さらりと目を通しただけなのだが、恐ろしい。

 この病気が本当に呪いのようであるのだから。


「これは、本当のことなのか?」

「はい、それに書かれているデータが全てです。それが示しているものからどういうことが想像できるか……王子も分かりますよね?」


 終わりだ……。


 サシャは見つからず、おまけにこの病気の勢いは留まるところを知らない。こんなのどうすればいいんだよ。


「はぁ……」


 ああ、乾いた溜め息しか出てくるものがない。

 辛うじて俺は病気になっていないが、屋敷でも母から始まって既に二十名ほどの関係者が命を落としている。


 感染者数は全国民のおよそ七パーセント、致死率は百パーセント。こんなに絶望的なことがあるだろうか?


「そう落ち込まないでください。まだ、なんとかなるかもしれません」

「どこがだよ……感染した人間はこの国で生まれた人間のみ、他国からの来訪者の感染はゼロ、更に国外逃亡した王国出身者もこれに感染して死亡している。呪われてるとしか言えないだろ」


 書類に書かれていたそれを読み上げれば、更に希望も何も無い気がしてくる。


 しかし、意外なことをこの使用人から聞くこととなった。


「でも、サシャ・フリーク公爵令嬢が戻ってくれば良いのですよね? 彼女の居場所が分かったとしたらどうします?」


 一番知りたかったその情報。

 彼のその口調からは、まるでそれがあるかのように語っていた。


「……分かったのか?」


 恐る恐る聞き返すと、少し口元を緩ませて、「はい」と答えた。


 あれから何ヵ月が経ったのだろうか、ずっと探し続けて、森に入り、兵士を失い、国中に呼び掛けても足跡一つとして見当たらなかったのに、それがあるというのか?


「聞きたいですか?」


 そんなの当たり前だ。


 彼のその問いかけに対して頷くと、一人の人物の名前が書かれた紙を見せながら説明を始めた。


「此処に書かれているオフェリアという女性から情報提供がありました。サシャ・フリーク公爵令嬢……かどうかは分からないが、それに類似した人物が他国に居るという情報を」

「……続けてくれ」

「……コレット共和国、現在国内は色々と治安が不安定な国で有名な彼処ですが、そこに冒険者として二人の男女がいるという話です。艶やかな碧髪の女性……これは彼女ではないですか? おまけにその女性、名前がサシャ、恐ろしく強力な魔術師らしいです」


 それは彼女との確信が持てる。

 サシャは魔法に長けていた。彼女の髪は碧髪で世間では宝石のようだと称されている。名前もサシャ、これが決定的だが、その他二つの要素に関しても合致する。


「よし、コレット共和国に向かう。馬車で何日掛かる?」



 椅子から立ち上がってそう言うと、初めてその使用人は慌てて止めてきた。


「落ち着いて! 話はまだあります」

「そうなのか?」


 ここからが本題だと使用人が言うので、素直に座り直す。

 どうやら疲れたようだ、使用人の顔がやつれている。


「はぁ、最後まで話を聞いてください」

「いや、すまない」


 気を取り直して、使用人は話を続ける。


「それで、もう一人の男の方、これも実に興味深い証言が女性から告げられまして──」


 その言葉は、サシャをこの国に連れ戻すのと同じくらいに重要な案件に思えた。


「その男のオーラが……魔神ルイヴィースと酷似しているとのことです」

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