64.能力
壊滅的なダメージを負ったセデルアース。襲われたのが王城とあり、事態は深刻であった。
最悪なことに、国王は逃げる途中に瓦礫が落ちてきて、その下敷きとなって死亡したらしく、現在は皇太子殿下が指揮を執っているとのことらしい。
また、栗山の行動に多大なる責任があるとして、皇太子殿下は栗山と、その従者たちを国外追放としたのだった。
セデルアース王国から繋がっている道は、カーディナルかマーデルの2カ国だが、セデルアースはカーディナルと戦争をしているため、栗山たちはマーデルしか行く道はない。
そのため、一カ月以上もかけて荷馬車で国境まで連れて行かれ、追い出されるようにしてマーデル王国に入国したのであった。
再びマーデル王国に足を踏み入れた栗山たちだったが、道中は罪人のような扱いを受けており、何をするにも見張られていた。それはもちろん、4人も同じであった。もちろん財産となる物はすべて没収されていたが、栗山が持っていた魔法の袋と、皆が着ていた服だけは没収されずにいた。
マーデル王国領入り、まず最初にしなければならないことは、武器の調達である。
関所のようなところで解放されたが、無一文で装備品は全くない。ナイフ一本すら持たせてくれなかった。
栗山の能力を知らない3人は、絶望に満ちた顔をしていた。
「よーやく、自由の身になったな」
思いっきり伸びをしながら栗山が言うと、何も知らない3人が、これからどうするのかと捲し立てるように言う。
「これからどうするんですか! 武器やその他諸々、没収されてしまったんですよ! どうしてそんなに呑気な態度を!」
コレットが怒鳴るように言ってくる。
「たしかに、お金などは無くなったが、武器はこの通り……」
そう言って袋から取り出すようにしながら、名状し難いライフルを召喚して、コレットたちに見せる。
チヒとコレットの2人は言葉が出ないのか、名状しがたいライフルを指差していた。
「ちょ、ちょっと! 武器は全て取り上げられてたんじゃないの!」
直ぐに我を取り戻したカルミが言うと、カミュは苦笑するのだった。
「俺から物を取ろうとすることはできないと言うことさ」
「な、なら、私たちの荷物も?」
チヒの言葉に栗山は取り寄せバッグを召喚し、バッグの中から4人の荷物を取り出して、4人に渡す。
荷物を受け取った4人は、袋の中を確認する。
入れてあったお金以外は全て入っていたらしく、4人はホッと息を吐いた。
「でも、これから先どうするの?」
袋を腰に装着させたカミュが聞いてくる。
「取り敢えず近くの町へ行こうと思う。冒険者カードは取り上げられていないから、そのまま使えると思うし、先ずは何をするにしても拠点の確保が必要になると思うから」
栗山の言うことに4人は納得して、街道を歩き始める。しかし、町までの距離はかなりあるらしく、一日ではたどり着くことはできず、野営をする事になると、チヒは「クルマがあればなぁ……」と呟くが、栗山は聞かなかった事にして、夜食の準備をするのだった。
野営を繰り返すこと一カ月。
狩りをしながら進んでいるため、中々目的地に到着しない。
「もう、いい加減にベッドで休みたい」
焚き火を囲んでいるカミュが呟く。
「稼ぎながら町へ向かわなきゃ、新しい家が手にはいらないでしょ」
同じく焚き火を囲んでいるコレットが言うと、カミュは栗山の方をみた。
「コレットの言うことは理解できるけど、できればお風呂には入りたいかな」
約二カ月間も風呂に入っていないので、自分たちの匂いが気になって仕方がなさそうに、チヒは言う。
一応、川があったら水浴びをする程度のことはしているが、シャンプーとかは使っていない。3人は没収されたと思い込んでいるためである。
「ねー、チアキさん。いい加減に本当のことを言ったらどうですかぁ」
この生活が飽きたのか、カミュが栗山に能力をバラせと言ってきたが、3人には、カミュが何を言っているのか理解できていなかった。
「……そうだな、いい加減、この生活も飽きてきたし、大森林にある屋敷にでも戻るか」
カミュの言葉は置いておくとして、栗山もこの生活に飽きを感じていた。
そして、袋の中から不思議な扉を取り出すように召喚して、4人の前に置く。
驚いた顔をする3人をよそに、栗山は当たり前のように扉を開くと、魔の大森林に設置した家の前へとやってきたのだった。
「もう、できるのなら早くやれば良いのに」
そう言ってカミュは屋敷の扉を開ける。人が住まなくなってから三カ月近く過ぎており、それなりに埃が溜まっていた。
「今日はゆっくり休んで、明日は掃除をするか……」
欠伸をしながら栗山が言う。
どういう事なのか、詰め寄ってでも話を聞きたかった3人だったが、今は布団でゆっくりと眠れる方が先行していて、自分の部屋へと戻っていく。
それを確認した栗山も、自分の部屋へと戻って、久し振りに布団で眠りについたのであった。
翌朝になり、布団の中で寝ている事に気がついた栗山。魔の大森林にある屋敷へ戻ってきたのを思い出した。
「随分と埃っぽいな」
そう呟き、クシャミが出たので、テッシュ召喚して鼻をかむ。そしてマスクを召喚し、部屋の掃除から始める。
部屋の掃除をしていると、4人も目が覚めたらしく、部屋の掃除を始める。部屋の掃除をするだけで昼近くまで時間がかかった。
栗山が昼を作っている間、4人は風呂などの掃除を行う。昼食を食べ終わると、久し振りにお風呂へ入り、心から体を休ませ、自分達の部屋へと戻っていく。
そして栗山に問い詰めることを思い出すのだが、明日にでも聞けば良いと思いながら眠りにつく3人であった。
翌朝になると昨晩のことを忘れて聞かなくなる3人は放っておいて、栗山はエルフの集落へと足を運び、魔の大森林で変わったことが起きたかを確認するが、あ人っ子一人も見てはいないとのことだった。
やはり魔の大森林を何かするのは、難しいと言うことなのだろう。
栗山がエルフの集落から戻ると、コレットが腕を組んで待ち構えており、「今日こそは話してもらいますからね!」と言う。
「話すって、何を?」
「チアキさんの不思議な力の事です!」
ついにこの時が来てしまったと思った栗山。残りの3人をリビングに呼び、自分がどうしてこの世界へやってきたのかと説明すると、4人は真剣に耳を傾ける。
「――と、言う訳で、俺はこの世界へとやって来たわけ」
説明を終えると、コレットが「に、にわかには信じがたい話ですけど……実際に不思議な武器を所持していますもんね」と言い、チヒは「か、神様って本当にいたんだ……」と呟く。
「どうして貴女は黙ってたのよ」
カルミがカミュに問い詰めるかのように言う。
「べ、別に黙っていた訳じゃない……話した所で信じてもらえないと思ったし……」
チラッと栗山を見るカミュ。
「兎に角、俺はこの不思議な力を使うことができる。気持ち悪いと思う奴は、出て行ってくれても構わない。それだけの金は用意するつもりだ」
「バッカじゃない? 元々私らは奴隷だったんだよ、それに帰る場所なんてあるはずも無いし、行く当てなんて無い。最後まで責任取りなさいよ」
呆れた様子でカルミが言うと、それに対して3人とも同意するのだった。
「セデルアース王国に未練なんて無いし、それにチアキさんを一人にする方が危なっかしいもんね」
カミュの言葉に3人が「言えてる」と言い、栗山は苦笑いをする。
「じゃあ、改めてよろしく」
この言葉に4人は「こちらこそ」と言って、各々が自由に暮らすのだった。




