63.襲われる王城
リーダーで剣士のイエガー、魔法使いで女性のシルエット、回復役で女性のサラセット、弓使いのランドルッフ、大盾使いのパリタイムの5人。彼らはシルバーファングと言う名のグループらしく、そこそこのベテラン冒険者らしい。その彼らを連れ、魔の大森林中央の大樹へとやって来た栗山たち。
取り敢えず、栗山たちから自己紹介をして緊張を解すと、ようやく自己紹介をしてくれたのであった。
「……で、この大森林にで成果を上げようとした訳か」
大森林の中心に、この様な屋敷があるなんて信じられないといった表情をするシルバーファングのメンバーたちは、屋敷のリビングにある椅子に腰掛けており、栗山と話をしていた。
「ここらは属性竜なんかもいるんだぞ。危険すぎるだろ」
そのような場所に住んでいる奴に言われたくはないが、シルバーファングの面々は属性竜に出会わなくてラッキーだとしか言えない。
「しかし、貴方はここに住んでいる」
「人と関わるのが嫌になったんでね」
麦茶を口にしながら栗山が言うと、5人は顔を見合わせる
「もしかして知らないんですか? 今、この大森林には大勢の人が押し寄せているのを……」
「「「「「――は?」」」」」
まさかの言葉に驚きを隠せない栗山たち。どうしてこのような場所に、人が押し寄せて来るというのだろうか。
「今、各国は、我先にと、この大森林を征服しようとしているんですよ。そこで大量の冒険者が投入されている状態なのです」
イエガーの言葉に固まる栗山。せっかく手に入れた平和な時を、各国が邪魔をしようとしているなんて、思ってもいない。
「しかし……属性竜が居るとなると、話は更に厄介になるな」
「どう言うこと?」
「竜の素材は、余すところなく何かに使えるのです。その骨や鱗は武器や防具に、血はエリクシールなどに使われたりします。各国の冒険者が躍起になって討伐をしにやってくるでしょう」
そうしたら自分たちがこの場所にいる意味がなくなってしまう。
「我々はセルライフ帝国に戻って、この事をギルドに報告する必要が……」
「なるほどね、俺たちの生活もここまでってことか……」
「べ、別にそう言う訳では……」
どう足掻いても、人と関わらない生活は出来ないということなのだろう。そう心の中で呟きながら今後のことを考えつつ、シルバーファングの面々には、今日は泊まって貰うことにしてた。
セデルアース王国を出て、マーデル王国に寄ることもなくこの大森林へやってきたのは良いが、沢山の冒険者が押し寄せてきている中、いずれはこの大樹に冒険者達がやってくるということだろう。
だが、この大森林はただの大森林ではない。簡単に人が住めるような場所ではなく、エルフですら苦戦しているのである。
はっきり言って、栗山の考えすぎなのであるが、本人は至って真面目。今後について考えているのであった。
シルバーファングの面々がセルライフ帝国に戻るのを見送って、栗山たちはリビングで話し合いを行う。
「ここにも沢山の人がやってくる可能性が高くなった」
栗山の言葉にコレットは言う。
「ですが、ここは魔の大森林ですよ? そんな簡単に人が押し寄せて来れますか?」
ここは魔の大森林と呼ばれる場所で、人が生息することができないと言われており、その中央にある大樹で栗山たちは暮らしているのである。
人が足を踏み入れるようになったのも最近で、しかも、その手助けをしているのは栗山たちであることを、本人は気が付いていない。
「現に人が来ているじゃないか、これならセデルアースに居ても同じじゃないか?」
「セデルアース王国から出たのは、どこぞのオッサンがウザかったから、逃げて来たわけでしょ? また絡まれたらどうするの?」
呆れたような声を出しながらカルミが言うと、栗山は黙ってしまう。
「だけどさ、私たちが居なくなってから、ずいぶんと時間が過ぎたじゃない? そろそろ落ち着いているかもしれないよ?」
カミュが言うと、栗山たちは一度戻ってみることにして、もしも、再び面倒なことになったら逃げようという話でまとまったのだった。
話がまとまると、行動に移すだけである。
早速、不思議な扉を使い、セデルアース王国へと戻ってきた栗山たち。取り敢えず拠点となる場所を購入するため、ギルドへ魔の大森林で手に入れた素材を換金したあと、不動産屋へと向かい、貴族街で小さいながら5人で住める屋敷を購入した。
魔の大森林での素材は、セデルアースでは珍しいものばかりだったため、買い取り金額はかなりの物だった。
拠点を手に入れたらやる事は一つしかない。
改築である。
建物は好きに扱って良いと言われている。
水はいつもの様に不思議な蛇口を設置し、どこからでも水が出せる様にして、次はトイレである。
トイレに関して、4人は絶対に妥協することはない。
必ず、トイレにはウォシュレットを設置しろと栗山に命令したのである。
一度使ってしまえば、その手軽さや快感を忘れることができない。
あとは電気設備である。電気は地下に深くに超小型の核融合炉を設置して、半永久的に電気を供給できるようにしてあり、電気は使いたい放題。
まさに、やりたい放題であるが、外見は普通の屋敷にしかみえない。
それを一日でやり遂げた栗山たちだが、この凄さ理解できる人が、この世界に一人もいない。
しかし、冒険者ギルドへ行ったことにより、ミルフィル伯爵にバレる事となってしまい、数日後にはミルフィルが、栗山の屋敷に訪ねて来たのであった。
初めは居留守を使おうとしたのだが、いつかは会わなければならないため、仕方がなく出迎えると、ミルフィルは謝罪するのだった。
「オイットナーに関して、本当に申し訳なかった!」
開口一番に謝罪してくるミルフィル。
「あ、いや、もう……そのくらいで……」
「いえ、本当に申し訳なかった」
「いや、これ以上の謝罪は本当に結構です」
そこまで言うと、ミルフィルは頷き帰って行く。本当に謝罪をするためだけにやって来たようだ。
数日間様子を伺っていたが、ミルフィルはそれ以上に干渉してくることはなかった。
その代わりといって、王城から呼び出しをくらうこととなった。いきなり姿を眩ませたのだから当たり前だ。
応接室で待たされること数時間、お茶やお菓子などすら用意されているわけではないので、物凄く暇を弄ぶ。
ようやく謁見の間に通されて言われた言葉は、男爵から準男爵降格であった。
ぶっちゃけ、爵位なんてどうでも良かった栗山は、そのまま爵位を返上したい旨を伝えるのだが、国としては竜殺しとの繋がりを消したい訳では無い。
そのため、栗山の言葉は受け入れられず、謁見終了すると同時に、酷い揺れを感じて周囲は騒ぎ立てる。
「何ごとだ!」
国王がそう叫ぶと、一人の兵士が謁見の間に飛び込んできた。
「陛下、飛竜襲来です! 現在、騎士団魔法兵団が対応しておりますが、戦況は芳しくありません!」
その言葉にざわつく謁見の間。栗山は4人が心配になって謁見の間から飛び出そうとするのだが、国王から呼び止められる。
「待つのだ、クリヤマ。今こそお主の力が……」
「嫌なこった! 自分で対処してみろ」
栗山はそう言って謁見の間から飛び出し、外へ向かう。
外では飛竜が火炎を吐き出しながら、暴れており、騎士団がバリスタの弾撃ち込んでいたり、魔法兵団と思われる集団が、一斉に魔法を放ったりしているのだが、飛竜には効いていない様子だった。
飛竜暴れているのは王城付近で、貴族街からは離れた場所で、栗山はホッと息を吐く。
栗山は貴族街が無事だとわかり、頭の中が冷静な状態となって、不思議な扉を召喚して家へと戻ると、4人は家の外で飛竜を眺めていたのだった。
「お前たち、無事だったか!」
栗山が声をかけると、4人は体をビクッとさせてから振り返る。
「「「「チアキさん!」」」」
4人は一斉に栗山の元へ駆け寄り、栗山が無事なのか確認する。
「俺は大丈夫だ、状況は!」
「突如飛竜が襲来して来て、王城を襲い始めた」
カミュが冷静な声で説明すると、栗山はカミュの頭を撫でる。
「それで、これからどうするんですか。飛竜を野放しにしたら――」
コレットが話している途中にもう一匹飛竜がやって来て、王城を破壊し始める。二匹の竜を相手に騎士団や魔法兵団が戦わなければならない状態となる。
逃げ惑う人々。いつ、こちらへやって来るのか分からない状態のためか、人々は家財道具などを放り投げて逃げ始める。
「このままだと王城が壊滅しちゃうよ! どうするの」
チヒが袖を掴みながら言う。暴れる二匹の飛竜。王城は壊滅的なダメージを負っており、これ以上は危険な状態だ。
「仕方がない、やるか……」
そう言って栗山は名状しがたいライフルを取り出して構えると、狙いを定めてトリガーを引くと、エネルギー光線が一直線に伸びて一匹の飛竜の頭を貫く。
貫かれた飛竜は、活動を止めて倒れる。
もう一匹に狙いを定めようと構えると、飛竜は危険を察知したのか空高くに舞い上がり、逃げてしまった。
「ちっ、逃げられたか」
ライフルのスコープから目を離し、逃げていく飛竜を見つめる。
王城は壊滅的なダメージを負っており、復旧どれほど時間が掛かるのか予想すら出来ない。




