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59.短い滞在期間

 文句を言いながら4人は山道を歩いており、栗山はその言葉を無視しながら、黙々と先へ進んでいく。


「ねー、王都にいる事にしながら、旅をすれば良かったんじゃないの? あの不思議な扉を使ってさぁ……」


 その言葉を聞いて、栗山は一度足を止めて振り返る。


「……もっと早く言いなさい」


 そう言って栗山は先へ進んで行く。そこまで考えることができていなかった、栗山であった。

 険しい山道を歩いていくと、当然出会うのは魔物である。それらを倒して行きながら進むため、余計な時間が掛かっていた。

 山越から数日が過ぎ、ようやく山を越えて街道へ到着した栗山たちは、マーデル王国領に入ることができた。


「もう山は散々。いい加減に何処かの町に行こう!」


 ヒステリックな声でチヒが言うと、3人とも同意する。


「次の町ではユックリするんですよね!」


 威嚇するような声でコレットは栗山に問う。


「はいはい、言われた通りにしますよ」


 疲れた声で栗山が言うと、4人は声を上げて喜んだ。

 方位磁針で検問所があった方角を調べ、袋の中から車を取り出して乗り込むのだが、相変わらず誰が助手席に座るのかのジャンケンをする。

 助手席の権利を勝ち取ったのはカルミで、相変わらずカミュとコレットの2人は助手席に座ることができないのであった。

 街道と言ってもそこまで道が舗装されている訳ではなく、相変わらず凸凹とした道を進んでいくが、セデルアースよりも道がしっかりしているような気がする。

 マーデル王国ではセデルアース王国よりも、この様な事に力を入れているのかも知れないと、栗山は思うのだった。

 車で走ること三時間、あと何キロ進んだら休憩にしようと思いながら車を走らせていると、ようやく町の城壁が見えて来た。

 町までの距離は大凡10キロといったところだろう。

 日が暮れ始めてきていたので、このまま車で向かうと、町を守護する衛兵たちに止められる。当たり前である。


「な、何だこの荷馬車は!」


「これは新型の馬車ですよ。カーディナル王国で作られているのを知らないのですか?」


 もちろん嘘であるが、資源大国であるカーディナルでなら、もしかして作られているかも知れない……と衛兵たちは思い、通行を許可したのだった。

 町に入れた事で、4人は早く宿屋へ行こうと言い、運転に疲れた栗山も宿屋目指して車を走らせる。

 ようやく宿屋に到着し、部屋を三部屋借りると、カミュはコレットと、チヒはカミルと同室を選び、栗山は何時ものように一人部屋でユックリとするのであった。

 宿屋には食堂が完備されており、4人は食堂へと向かう。だが、栗山は疲れ切っていたため、直ぐにベッドで横になって寝てしまうのであった。

 実際のところ、4人は車の中で寝ているので、栗山ほど疲れてはいない。一番疲れていたのは栗山である。

 翌朝になり、栗山は朝食を食べに食堂へ行き、差し出された料理を口にしたのだが、パンは硬くて食べ難く、スープは獣臭がするため、食欲が失せてしまう。これは食事といえないと思い、店の人に文句を言うのだが、「嫌なら食べるな」と言われてしまい、仕方なく食べるのを諦めて自分の部屋へ向かうと、4人が部屋の前に立っていた。


「何をしてんだ? 朝食を食べないのか?」


 栗山が声を掛けると、4人は栗山の服を掴んで引っ張り、「朝食を作ってくれ」と、懇願してきた。


「ど、どうしたんだよ、お前ら」


 4人は、栗山と生活を共にしてきた中で、食事は毎回栗山が用意していた。

 そして、口がその味を覚えてしまったため、他の料理は美味しくないと思うようになってしまったのである。


「ちょっと、分かる? パンが硬すぎるの! それにスープが臭いの!」


 涙目でカミュが言うと、3人が頷きながら栗山にカップ麺でも良いから、食べさせてくれとお願いする。

 まさかの出来事に栗山は口元を引き攣らせるのであった。


「贅沢を覚えたらこうなるのか……」


 自分の部屋で簡単な朝食を作り、4人に食べさせ、自分は総菜パンを食べながら、今後について考える。

 いくらセデルアースから離れたと言っても、マーデルでも噂になっていたら厄介である。そうなった場合、セデルアースと同じようになる事もあり得る考えに至った栗山は、4人にその話をしてみた。

 何故、話たではなく、してみたなのか、それは、これ以上、4人を連れ回す必要がないからである。

 4人はすでに奴隷じゃないので、彼女たちは自分の力で生きていくことができるのだ。

 実際、彼女たちの冒険者ランクは王国騎士団並みであり、身体能力も人並み以上である。そして、王都から出ても剣の稽古は続けており、一人で魔物や獣を狩る事は余裕なのである。

 そうした話を踏まえながら、更に遠くの国へ行こうと思っていることを伝えるのだが……。


「だね、私も同じことを昨日から考えてた」

「そうですね、この国に居ても同じかもしれませんね」

「次の国はシルフィード王国だっけ?」

「隣で考えるとアイデント王国もあるね」


「お前たちは自由に生活をして良いんだぞ、俺に付き合う必要はないんだぞ」


「またそんな事を言って……。私たちはチアキさんが居なければ何もできないよ。私たちは自分の気が済むまで付いていくよ」


 カミュが呆れた顔をしながら言い、困った顔をしている栗山をよそに、4人は酒場で聞き込みをしたらどうだろうかと話すのだった。

 4人が言うように酒場へ向かい、情報収集を開始する。

 しかし、大した情報は手にはいらず、栗山たちは再び宿屋へ戻るのだが、食事は食堂ではなく栗山の部屋で食べる。

 今日聞いた話をまとめながら地図を眺めていると、四つの国がある真ん中は、魔の大森林と記載されていることに気が付く。


「この魔の大森林に付いて、何か聞いてるか?」


 四つの国が囲むようにしている魔の大森林。誰も近寄らない危険地帯となっており、そこにはワイバーンやドラゴンなど、超危険生物の生息地域とのことで、人が住むことが出来ないと言われている。


「うってつけの場所じゃないか!」


 満面の笑みを見せながら栗山は言うと、カミュがテーブルを叩きながら言い返す。


「でも、超危険区域と言われている場所なんだよ!」


「そんな事は大した事ない、人が近付かない場所であれば、のんびりと暮らすことができる」


「人が暮らす以前の場所だって言ってるじゃん」


 カルミが呆れたような声で言うのだが、栗山は聞く耳を持たずに、勝手に話を進めていく。

 4人は呆れた様子で自分たちの部屋へ戻っていき、栗山は詳細な地図を召喚して、順路を調べてから眠りに付いたのだった。

 翌朝になり、栗山が寝ているとドアが叩かれ目が覚める。どうやら4人が朝食をせがみにやって来たようである。栗山は着替えを済ませから4人を招き入れると、やはり朝食用意してほしいとのことだった。

 朝食を作り終え、4人が食べている時に、魔の大森林へ向かうことを発表すると、4人は「やっぱりね」と言い、諦めた顔をするのだった。

 そこからの行動は早く、必要な物を買いに行くものと、ギルドへ解体と素材を売りに行く者の二手に分かれる。

 夕方になる頃、宿屋で分かれていたメンバーと合流し、その足で町を後にする。

 日が昇ってから出発すれば良いのと、4人は呆れた顔をしながらジャンケンをして、車に乗り込む。

 珍しくカミュが勝ったようで、ウキウキしながら助手席に座った。


「本当に付いてくるつもりか? お前たちは……」


「しつこいなぁ、チアキさんが行くところに私たちも行く。それだけだよ」


 栗山は「ふーん」と言って、車を発進させ、魔の大森林へと、一直線に進んでいくのだった。


 魔の大森林に到着したのは二カ月が過ぎたころで、この先は車で進むことができない

 詳細な地図を取り出し、目的地を決める。取り敢えず大森林の中心部にある大樹を目指すことにして、歩き始める。

 魔の大森林と言われるだけあり、大型の魔物が闊歩していた。


「あんな魔物が居るんだから、人が生きて行ける環境じゃないよ」


 怯えた声でチヒは言う。


「でも、どこの国にも属さないためには、ここに住むしか方法がないだろ?」


「だけどさぁ……」


 それ以上、チヒは言葉を続けることはなかった。どうせ言っても無駄だと思ったからである。


「それに、新しい武器にも考えがある」


「「「「新しい……武器?」」」」


 そう言って栗山が取り出したのはライフル銃を、もう少し重厚にした物である。


「形状は前のと異なっているけど、使い方は変わらなそうね」


 受け取ったチヒが、確認するかのように見ながら言って、大型の魔物に狙いを定めて撃ち放つと、細い光の粒子が大型魔物の脳天を貫いた。

 その威力は今までのライフルとは桁違いであり、その光はまるで魔法のように見えた。


「な……な、なに……これ……」


 その威力に驚くチヒたち4人。


「凄い威力じゃん!」

「魔導兵器ですか」

「光魔法ってやつ?」


「魔法とは違うな、科学の力って奴だ」


「「「「かがく?」」」」


 科学を説明しようとしたが、この武器がどのように作られているのか、構造すら分からないので、これ以上の説明を諦めたのだった。

 チヒが仕留めた魔物を回収し、方位磁石で中心の場所を調べながら魔の大森林の中心へと歩き始めた。

 新しいライフルを手に入れた4人は、試し撃ちをしたくてたまらなそうにしており、魔物や獣を発見するたびにライフルを構えるため、結構寄り道をしながら先へと進んで行き、二ヶ月ほど経った頃に、ようやく中心に大樹へとやってきたのであった。

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