遭遇
パラッパ平原で激闘が行われていた。
負けるわけにはいかない、拳に気合を乗せる!
戦いは瞬時に決まる
目にも止まらぬ速さで繰り広げられた拳に
同じ速さで突き出される手
グー
パー
「俺の勝ちだな従者よ。」
「はい、ご主人様!。」
負けたのに嬉しそうなアルト・・・何故だ?
思いつきから始めたご主人様ゲーム
ジャンケンに勝った方が一日ご主人様になるのだ!
俺は自分の荷物を纏めて渡す、アルトはそれを軽々と持ち上げる
風の精霊の影響か?・・・便利だな。
アルトはもう俺の家族だ、ここは一つ大事な弟を男らしくしてやらねばなるまい!
俺は厳しい目で見つめる、アルトは顔を赤くして俯くが、上目遣いに見上げてくる
・・・何この可愛い生き物・・・ウム、無理して男らしくする事もないな。
「あれ?」
「どした?」
「シルフが怯えています・・・早く逃げようって言ってます。」
「?・・・・っ!、今日の依頼は中断だ、先に帰ってろ。」
「え?ご主人様は「 ご主人様ゲームは明日に持ち越しだ。俺も夜には戻る
中止じゃない、あくまで明日に持ち越しだからな」会話を断ち切り、強く念を押す。
「夜までに帰ってこなければ迎えに来ます。」
アルトは俺の言い様に呆れた顔をした後、真剣な顔で述べた。
「問題ない」
俺は軽く返した。
―――――― クロード ――――――
討伐依頼を達成後、私は皆の様子を見て休憩を指示した。
私の周りに集まるのは有象無象ばかりだ、逆にこれが私の実力なのだろう
敢えて私はこの状態を改善しない、どのような人物も使いこなす事こそ
私に求められる事の一つ、有象無象の心の動き方を知る良い機会でもある。
奴は優秀だ・・しかし私は負けるつもりはない!
いずれ訪れる奴との対決に備え、目を付けた人材の確保に動くか、、
「ひ・・・ひぃ!」
情けない悲鳴に、思考を中断し周りの様子を伺う、あれか?
悲鳴を上げた男の前にいるのはブラドか、あの下衆め、また暴走したか?
何かと理由を付けて人を殺したがる低俗な男、、このレベルはすぐに
見切りを付けるべきだな、次から気をつけよう、さて如何に処理するか
標的を確認し、走り出す、まずは暴走を止めねばならない。
・・・?なにか違和感があるな・・・いつも奴は必要以上に騒ぐ筈だ、、
奴の右手に見慣れない巨大な武器・・あれは鎌か?
鎧は黒いローブへ変化する
顔が・・溶けていく・・・っ・・・まさか・・・こいつは!
「皆学園に走れ!学園長にリッチが出たと伝えろ!」
真っ先に走り出したのは悲鳴を上げた男だ、しかし走り出して数分もせず
糸が切れたように倒れ、動かなくなる、、、どこにも外傷は見当たらないのに、、
それを機に皆は私の言葉の意味を理解する、脇目もふらず学園に走り出す。
何名か腰を抜かした者がいる、時間を稼がねばならない。
足止めに適した魔法か・・・これだな
「パーマフロスト!」
リッチを瞬時に氷の中に閉じ込めたかのように見えたが、瞬間粉々に砕け散る
効果はないか、、しかし時間稼ぎにはなる!
「パーマフロスト!」 「パーマフロスト!」 「パーマフロスト!」
「パーマフロスト!」 「パーマフロスト!」 「パーマフロスト!」
「パーマフロスト!」 「パーマフロスト!」 「パーマフロスト!」
・・・魔力が切れたか・・他の者は・・立ち直ったようだな、動きは鈍い
逃げきれるか?
「我は死を呼ぶもの」
なに?
「我は死を運ぶもの」
まさか詠唱魔法だと!マズイマズイマズイあれしか対処法はない出来るか?やる!
「我は死そのもの」
目を瞑り心は透明に、剣を天に向けクルンクルンクルン楕円を描き揺らす周囲の魔力に意識を溶かす
――――――
「デスクラウド」
瞬間リッチの手の平から全てを死滅させる黒い雲が放出される、それは大きく広がり
世界に死をもたらす・・・。
しかし雲はクロードに近づくにつれ逆に収束していく
剣の動きに巻き取られる様に雲は溶けていく
「明鏡止水」
剣は白く輝き始め、雲を全て巻き取ったとき、目が潰れるほどの輝きを放つ
「ホ-リーソード!」言葉と共に投擲する
驚異の集中力と胆力に依って成功した秘技はリッチを滅すべく突き進む
それは確かにリッチを滅せる力!
パリンとガラスの割れたような音が響き渡る
剣はリッチに届く前に砕け散った
「・・・っ!」
クロードは悔しさに歯噛みする
剣が耐え切れなかったか、、、
「ここまでか・・・」
心身共に力を出し切った、、、もう歩く事も出来ない。
「そーでもないよ?」
お疲れ様と肩に手を置かれる
「君は・・・」
「帰還石を渡すから使ってくれ、俺も帰還石を使ってすぐ逃げる」
「済まない・・・礼は必ずする。」
クロードは帰還石を用い学園に転送される
「さあ見栄を張ったが・・・・どうしよう?」
逃げ場は何処にも無い。




