昭和幽霊は……
「ん?なんだこれ?」
レムは、悪魔城の中庭でコーラを片手にスマホの通知を開いた。
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【yuu ko】
レム( ´Д`)y━・~~ nao :(;゛゜'ω゜'):
タスケ。゜(゜´Д`゜)゜。(◉‿◉)▲
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「ユー子?」
レムは、突然届いたDMに眉をひそめた。
「レムちゃ〜ん!!何してるの?」
「ぐえっ」
ツインテールを跳ねさせながら、カミルメフィアはレムの首にしがみついた。
「なになに?DM?」
カミルは、レムのスマホ画面を覗き込む。
「んー?なんか、変な文字だねぇ〜。念を霊力で無理やり飛ばしたって感じだねぇ〜。なにかしら?」
カミルは人差し指を顎に当て、首を傾げる。
「ちょっとお姉ちゃんに貸してごらんなさいな」
レムの返事を聞く前に、カミルはレムからスマホを奪い取る。
「カミル姉、返して」
「まあ、任せなさいな」
カミルは、ふむふむと画面を見つめた。
見開いた瞳が、大きく輝きを放つ。
ツインテールがふわりと膨らみ、風が流れた。
「………レム、大変。ナオを助けて……」
いつもより低く声でカミルが呟いた瞬間、レムはコーラを投げ飛ばし、勢いよく立ち上がった。
「あぁ!ちょっと、レムちゃん!」
レムはカミルからスマホをひったくると、瞬きをする間もなく消えていった。
残されたカミルは呆然とレムのいた場所を見つめる。
「転送しておいて良かった♪」
カミルは自分のスマホ画面をタップした。
「んー。(◉‿◉)▲……これは……」
じっと見つめて念を読み込む。
(……死神?)
「お兄ちゃ〜ん!!ハラン兄〜!!たいへーん!!」
カミルは、ハランレフィムの執務室へ突進した。
「カミル、ノックをしなさい」
ハランは、書類を見つめたまま、静かに告げた。
(全く、どいつもこいつもノックをしない……)
ため息をつくと、静かに書類から顔をあげると、カミルを見据えた。
「それで、何があった?」
「レムちゃん、どこぞの馬の骨のためにすっ飛んでいったの!また、へんな魂に入れ込んでるのかも!!あと、死神もいるっぽい!」
カミルは、乱暴に机に手を置く。
くしゃり。
書類が折れ曲がった。
「……なるほど」
ハランは、折れ曲がった書類を丁寧に伸ばしながら続きを促した。
「……何故そう思った?」
ハランは、眼鏡をそっと押し上げると、冷静な声でカミルを見つめた。
「レムちゃんのスマホを覗いたら、念の入ったメッセージが届いてたの!変な文字だったけど、感情を分析した!」
ハランの眼鏡が光る。
「……レムの行動は読めないからな。緊急事態なのだろう。そうだな……ラオを配置しよう。あれがいれば大抵のトラブルは解決出来よう」
それはそうと……とハランは続けた。
「カミル……その解析には価値がある。感情の解析と文章化を、今開発中のあれと連動させられないか?」
カミルはハランからの問いかけに、顔をしかめた。
ハラン兄の“〜できないか?”は、“やれ”と同じ意味を持つ。
(あちゃ〜余計な火をつけちゃった〜)
「そうだな……。ちゃんと出来たら、レムと一日好きに過ごすことを許可しよう」
カミルは、ハランの静かな言葉を聞き逃すことはなかった。
「はい!やります!!カミル、がんばります!」
カミルは、きゅるんと笑うと、スキップをしながら執務室を出て行った。
「……レム、許せ」
ハランは、逃げ惑うレムの姿を思い浮かべながら呟いた。
「……ラオを呼べ」
執務室に控えていた執事長へ命じた。
*****
「よく、その文章で通じたな。ほぼ、顔文字じゃねーか」
タケルは、ユー子から転送されたDMを読んでつぶやいた。
『うん、レムすごいよね!』
「……ってか、念飛ばしてDMって悪霊みたいなことすんなよ」
『えーひどいっ。陰陽師の先生も、タケルのお婆ちゃんも協力してくれたのに!』
ユー子は頬を膨らませながらタケルを睨む。
「でも、助かったよ。ユー子、ありがとな」
『えっへへ〜。ちゃんと、守れたかな。レムの力借りちゃったけど……』
ユー子は照れ笑いをした。
だけど、自分一人で守れなかったことに後めたさも感じていた。
「……レムは、自分が守りたいと思わなければ動かないさ。ユー子の思いが届いた証だよ」
『……そうかな?』
ユー子は珍しくタケルの言葉をやんわりと否定した。
『タケルとナオの赤ちゃんだから助けてくれたのかもよ?レム、二人のこと気に入ったって言ってたし』
「……そうかもな。でも、ユー子が伝えてくれなかったら、レムは来なかった。“誰が伝えたか”が重要だったと、俺は思う」
タケルはそっと微笑むと、シンの顔を覗き込んだ。大きな目で見つめ返すシンに、たまらなく愛しさが込み上げてくる。
「ユー子、本当にありがとう」
タケルは囁くと、シンの小さな手に指先を差し出した。シンは、にっこり笑うとタケルの指をきゅっと握りしめた。
「タケルさん、またユー子と話をしてたの?」
ナオがミルクを持ってタケルに並んだ。
ミルクを見た途端に、シンが泣き出す。
ナオはシンを抱きかかえると、ミルクを飲ませた。
「いいなぁ、タケルさん。ユー子と話せて。私も会いたい。夢枕にも立ってくれないし」
ナオは、膨れっ面をしながらつぶやく。
わざとだ。
そこにいるであろう、ユー子に聞こえるように、わざと声に出した。
ぽろん。
ナオのスマホに通知が届く。
スマホ画面を覗くとそこには
【yuu ko】の文字。
「タケルさん、私のスマホ開いて!SNS!ユー子から通知が来てる!」
「えっ?まさかぁ?」
タケルは、ナオのスマホ画面をタップしてSNSのDMを開いた。
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【yuu ko】
ナオちゃん、夢枕は昭和だよー。
今は令和!デジタル!A Iの時代だよっ!
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「「………えっー!!!」」
タケルとナオの叫び声に、シンは体をびくつかせ、大泣きする。
「あぁ〜シン、ごめんね!びっくりさせたね!」
慌ててシンをあやすナオ。
「ごめん、ついていけない。どういうこと?」
思考が停止して、タケルは額に手を添えた。
ぽろん。
通知音が響くと、ナオとタケルは、素早くスマホに視線を向ける。
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【yuu ko】
最近、開発されたんだ。
念を文章化するシステム。
思ったことを霊力を使って念じると、AIが文章にしてくれるの。通知システムに連動してるから、DMが送れるらしい(°▽°)知らんけど。
まだまだ、実験段階だから霊力強い人しか使えないし、メッセージも直ぐに消えちゃうんだけどね( ´ ▽ ` )
すごく疲れる。゜(゜´Д`゜)゜。
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「はははっ……こりゃすげ〜わ」
「えっ!これでユー子と話せるってこと?」
ナオはシンにミルクを飲ませながら、期待に心を躍らせた。
『うん!そうだよ!だけど、すごく疲れるから、たくさんはむりー!』
タケルは、苦笑しながらその言葉をナオに伝える。
「そうなんだ〜……でも嬉しい。ユー子を傍に感じられる」
『私はいつでも見守ってるよ』
ユー子は、ミルクを飲むシンを見つめながら穏やかに微笑んだ。
窓の外に黒猫が佇んでいる。
タケルは冷蔵庫からコーラを取り出すと、窓を開けた。
「我が輩が犠牲になって出来たシステムだぞっ。ありがたく使えよっ」
ふわりと尻尾を揺らし、室内へ飛び込むと、当然のようにソファーを占拠した。
*****
いつの日か、天国にいる“大切なあの人”から、DMが届くかもしれない。
『昭和幽霊ですが、海外悪魔とSNSで意気投合しました』
完。
これにて、番外編(ほぼ二部じゃないか疑惑がありますが)も含めて完全完結となります。
成長したシン君や、タケル家に避難してくるラオ兄など、思い浮かべれば、またどんどんと物語が広がってしまいますが、ここで完結です。
ここまで読んでくださった、みなさま、本当にありがとうございます。
レムとユー子の自由さに翻弄されつつも、自分に正直に過ごす姿に、作者自身、励まされていました。
仕事を抱え込みすぎて疲れた時、レムだったら「とりあえずコーラ飲もうぜ」って言うんだろーなと思ったら、少しだけ頑張れる気がしました。
どうか、みなさまもご自愛くださいませ。
故人からメールが来たら、怖いよりも嬉しいが勝りそうです。
幽霊だけど、怖くない。
ギャグもあるけど、ちょっと感動した。
そう感じて頂けたら幸いです。
小原みん




