第十一話 不死身の正体
揺れは激しさを増し、壁や床の至る所に亀裂が走る。
苦しみ続けるサタナエルの足元の床が隆起し、床を割って地中から巨大な目玉が現れ、サタナエルを乗せて押し上げる。
目玉がその巨体を全て見せると共に揺れはぴたりと止まった。
目玉にはルキフグスが床を割った時についたと思われる傷が走り、流血している。
「大した不死身の秘密だ。いや、不死身ではないな」
ルシフェルがほくそ笑みながら言う。
「どおりで何をしても死なないはずだ。まさか本体が地中に埋まっていようとは……」
アスタロトが洩らした通り、目玉の上にサタナエルが乗っているのではなく、目玉と悪魔の姿のそれは繋がっているのだ。
目玉の傷が塞がり、血が止まると、上部のサタナエルはようやく苦しみから解放され、ルシフェルを睥睨する。
「今まで下僕にすら見せず、この姿を見た者の口を全て封じて来たと云うのに、何故だ? 何故分かったのだ?」
「簡単な事だ。貴様は余りにもその玉座から動かなかった。城が気に入ったにしても、玉座からも動かないのは余りにも不自然だ。それは動かないのではなく、動けない何かがあると云う事であろう。アスタロトを下僕に迎える前ならそう気兼ねなく動いていたのだろうが、アスタロトが自分の事を狙っていると知り、動けなくなった。違うか?」
「アスタロトを下僕にした事が裏目に出たと云うのか? ぬかったわ。しかし貴様、貴様だけで戦うと云っておきながら、ルキフグスの手を借りるとは失望したぞ」
「貴様を地中から引き出す為に借りただけだ。戦いに手を借りる気などない。勘違いするな。まあ、それが卑怯と云うなら勝手にしろ。この魔界に於いて卑怯と云う事は皆無だと思うがな」
「云うではないか。いい気になるなよ。まだこの姿を晒しただけで負けた訳ではないのだからな。今まで通り、この姿を見た全員を殺してしまえば良いだけの事だ」
再び床が激しく揺れ始め、床の亀裂が更に広がり、至る所の地中から巨大な蚯蚓のようなものが無数に飛び出して来た。
それはサタナエルの手足とも言うべき触手であった。
触手はそれぞれの近くに居るルシフェルやルキフグス、ヴェール、アスタロトの体に次々と絡み付いて行く。
不意を突かれつつも四匹は踠いて外そうとするが、一瞬にして動けなくなるほどの触手が絡み付き、目玉から触手を伝って四匹に電撃が流れ込む。
アスタロトとルキフグスの口から悲痛な声が洩れる。
ルシフェルとヴェールも声にはしないものの、その顔は苦痛に歪む。
「もう逃げられぬぞ。これでまた私の秘密を知る者は居なくなるのだ」
触手から流れ込む電撃が徐々に威力を増し、四匹の意識が薄れ始めた時、部屋の出入り口から二つの影が飛び込んで来た。
一つの影が口から吐いた炎がヴェールとルキフグスの体に絡み付いている触手を焼き切り、もう一つの影が放つ銀光がアスタロトの体に絡み付いている触手を寸断し、そのまま駆け寄ったルシフェルの体に絡み付く触手を寸断した。
「カ、カレガタナスか」
度重なる電撃を受け、少しふらついたルシフェルの体をカレガタナスが支える。




