出逢い
マサは夕暮れの河川敷で座り込み悩んでいた。
マサ「一週間でおさかなさんを削って見せろ…か…どうしよう…」
2年前、ヨシアキの弟子にしてもらったまではいいが、マサには致命的なまでに削りの才能がなかった。
何をしても失敗ばかり。
何より、素人でも半年あれば削れるようになる"おさかなさん"が2年経っても削れないのだ。
マサ「産まれてくる時代…間違えたのかな…」
そんなことはないぞ若者。
背後から声がし、振り返るとそこには酒を持った老人が1人立っていた。
マサ「…?」
老人は静かにマサの横に腰をおろすと語り始めた。
老人「若者よ、さっき言うておったの。産まれてくる時代がなんやらとか」
マサ「え…えぇ…その自分…何も上手くいかなくて…人よりも出来なくて怒られてばかりで…」
老人は酒を飲みながらマサの話を聞いていた。
マサ「もっと別の道もあるんじゃないかって…」
老人「若者、お前が何に悩んでいるのかは知らんが、産まれてくる時代を間違えるなんてことはない。」
マサ「え…?」
老人「人は皆産まれる時代など選べないつまり平等なんじゃ。大事なのはその時代に何を刻んでいくかじゃ。」
………
老人「できることをやれ。やりたいと思うことを心に誓え。」
マサ「…」
マサはただうつ向いていた。
老人「悩むということは、つまりその壁を如何に壊すか、そしてどうすれば壊せるのか。若者よお前はもうその手段を知っているはずじゃ。」
マサ「だけど…僕は…」
老人「信じ込め。自分には出来るとな。」
マサ「…!!」
マサは立ち上がり老人にお辞儀をした。
マサ「ありがとうございます!!何かが見えた気がします!足掻いてもがいて、僕に出来る事をやってみます!!」
マサはそういうと自宅に向かい走っていった。
老人「…」
ヒュゥ…
目の前の川を眺める老人に、暖かい風が吹いた。
サカキドブジロウ著書
海
122P
"生きとし生けるものいずれ海に帰す。"




