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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第9章 最後の決断
33/46

9-2

十五禁ギリギリの表現があります。

 なんだ?


 パーティーが始まり、眞有の仕事の邪魔をするのもなんだと思い、階下のバーにいた。しばらく飲んでいたらトイレに行きたくなって、洗面所に駆けこんだ。


 用を済まし、手を洗っていると鏡の中の俺が見つめているような気がした。


 鏡の向こうの俺は、皮肉な笑みを浮かべ、嘲笑ってるようだった。


 俺が選んだんだ。

自分の幸せを選んだ。

 学と父さんのことを捨て、自分の幸せを選んだんだ。


 十年も考えたことがなかった。

 今更、捨てるも何もない。

 でも……


 鏡の向こうの俺はじっと俺を見つめる。


 『武』


 ふと脳裏に眞有の声が響き、胸が軽くなる。

 俺にしがみついた眞有の暖かさを思い出し、安らぎを覚える。

 そう。俺には眞有がいる。


 彼女と一緒にいたいから、彼女の笑顔を見たいから、選んだ。


 冷たい水で顔を洗うと、ハンカチで顔を拭う。

 そして洗面所を出た。


 腕時計を見ると、時間は十一時近く。

 

 今ごろ、片付けか?


 眞有のことを思いながら、バーに戻ろうと足を動かす。


 するとエレベーターから少し離れた観葉植物の陰で、男女の影が見えた。お熱いことで視線をはずそうとすると、ふいに金髪の男の髪が光を受け、目に入る。なぜか気になってよく見ると抱かれている女は眞有だった。


「眞有?撫山?」


 立ち止まり、気がつくとそう、二人の名を呼んでいた。


「武!」


 眞有は俺に気がつくと顔色を変える。


「そういうことか。馬鹿は俺か」


 結局、そういうことなんだ。

 眞有は本当は、奴が好きなんだ。

 俺じゃなくて。


 馬鹿だ、俺は。


 吐き気を覚え、二人から逃げるように背を向ける。

 

「武!待って」


 眞有の声が聞こえたが、無視して、足早にホテルを抜けた。


 間抜けな俺を、情けない俺を見られたくなかった。


 眞有は俺を選んだと思っていた。

 俺の側にいてくれると思っていた。


 タクシーを待つ人の横に立ち、早くホテルを出ることを祈る。


「武!」


 眞有が名を呼ぶのがわかり、俺の前に立つ。

 乗客を乗せたタクシーが眞有に気づかず、発車しようとしているのがわかった。


「馬鹿!」


 慌てて彼女の腕を引き、胸に抱きしめる。


「何やってるんだ!」


 タクシーの運転手が急停止した後、窓から顔を出し怒鳴り声をあげる。


「すみません」


 彼女を胸に抱いたまま、素直に頭を下げた。


 馬鹿眞有、なんて無茶をするんだ。

 無視した俺が悪かったが、こんな無茶をするとは思わなかった。


 彼女らしくない。

 

 言い訳でもする気だったのか?

 それともに俺に同情か?


 タクシーを待つ列から彼女を連れて離れる。彼女と話をするためにホテルの入り口の端っこで立ち止まり、彼女を解放した。


「眞有。お前、本当は撫山が好きなんだろう?」


 情けない俺は眞有の言葉を待たず、そう尋ねる。


 裏切られたわけじゃない。

 俺が彼女を先に振ったのは事実だ。


「……違う」


 眞有は俺を見上げるとそう答えた。

 その瞳に揺ぎ無い気持ちが見えた気がした。


「じゃ、なんで奴の腕の中でじっとしていた?」


 でも彼女を信じられず、再度尋ねる。


 奴は本当に眞有のことを好きだ。

 そんな奴の気持ちに眞有が答えても何も言えない。


 最初に彼女を裏切った。


「それは……」


 眞有が言葉を詰まらせる。


 わかってる。

 俺は答えを知ってる。

 

 息を吐くと、口を開く。


「それは奴が好きだからだ」

「違う!私は好きなのは武だもん」


 眞有は泣きそうな声でそう言い、俺を見上げる。

 

 信じられるのか?

 眞有が奴じゃなくて、俺を好きだなんて。


「……じゃ、俺の部屋に来て。今夜は俺と一緒に寝て」


 彼女を試すつもりでそう言う。

 本当に好きなら、答えるはずだ。


「うん」


 ゆっくりだが、彼女がしっかりと頷くのがわかった。俺を見つめ返す視線は真っ直ぐで、固い決意が見てとれる。

 彼女の腰に手を回すとタクシーを拾った。


 彼女を逃がすつもりはなかった。

 寂しい心を彼女の温もりで温めて欲しかった。

 何も考えられないくらい彼女を強く抱きしめたかった。

 

 マンションに着くと彼女を寝室に招きいれる。

 震える彼女を抱き、唇を重ねる。


 眞有の全てを感じたくて、何度もキスをした。


「眞有」


 名を呼ぶと、その体をベッドに押し倒す。


 眞有は俺だけのものだ。


「俺は奴にお前を渡すつもりはない。お前が奴を好きでもだ。好きだ。ずっと俺の側にいて。俺だけの眞有でいて」


 俺は顔を上げると、彼女を見つめる。

 眞有は俺をじっと見つめ返した後、両手で俺の頬を包む。手の平から彼女の優しさ伝わり、俺の胸がじんと温かくなる。

 そして欲情以外の別の感情が浮かび、俺の目頭を熱くする。


 眞有はやはり優しい。

 俺を優しく包んでくれる。


 眞有……


「武。私はいつも側にいるから。安心して」


 彼女はそう囁くと、俺の頭をその胸に抱きかかえた。


 彼女の鼓動がすぐ近くで聞こえ、安らぎを覚える。


「眞有……。側にいて。俺の側に」


 そうして俺はその夜、彼女を初めて抱いた。

 


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