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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第8章 交錯する思いの中で
31/46

8-3

「武、ここで待ってて」


 夕食を終わらせ、玲美は店から出ると小走りでコンビニに走って行く。

 今日は俺の家に泊まりたいと言われ、断れない俺は承諾。

 家に行く前に近くのレストランで食事をした。


 藤川の言葉を聞いたわけじゃないが、とりあえず普通に接するようにした。玲実は俺の様子に安心したのか、嬉しそうにしていたことに罪悪感を覚える。


 仕方ない。

 俺は眞有とよりを戻したいんだ。

 だから計画は実行する。


 ふと玲実を待っていると、懐かしいものが見える。

 それは今ではほとんど見かけることがなくなった公衆電話で、コンビニの方に目を向けた後、小走りで近づく。


「動きそうだな」


 携帯電話を取り出すと眞有の番号を探す、そして公衆電話に十円硬貨を入れる。ダイヤルを押してしばらくすると呼び出し音が鳴った。


「もしもし?」

「眞有」


 眞有の声を聞いて嬉しくなる。


「武?」


 驚いた彼女の声に同じように喜びの声があふれていて、胸が熱くなった。


「……よかった。出てくれて。今ならかけても大丈夫だと思って」



 携帯電話でかけると絶対に玲美にばれそうだった。

 公衆電話だと絶対にばれない。しかも、まだ玲美が店から出てくる様子が見えない。

 大丈夫だ。まだ


「今公衆電話。まだ存在しててよかった。おかげで電話かけれた」


 電話の向こうの眞有に笑いかける。彼女の吐息が聞こえ、俺の胸が苦しくなる。本当は堂々と電話をかけたかった。

 こんな風に隠れてではなく。


「眞有。俺、あきらめないから。好きだって気持ちは本当だ。だから……」

「武!」


 そう玲美に呼ばれ、慌てて電話を切る。

 しかし、時は遅く、玲美は怒りをにじませて俺を見ていた。


「あの女に電話したの?別れたんじゃなかったの?」

「違う。親だ。携帯電話を落としたみたいで」

「落とした?」


 玲美はふふんと皮肉げに笑う。


「電話かけてもいい?落とした人が取ってくれるかもしれないし」

「池垣さん!」


 声をかけられ、電話をかけようとしていた玲美が手を止める。

現れた木村さんが神様だと思った。


「こんばんは。どうしたんですか?」


 玲美に背を向け、木村さんに話しかける。


「店の様子を見に来たんですよ。こっちにしばらく顔を出していなかったし。そうだ、池垣さんに、えーと……」

「玲美です」

「玲美さんね!二人ともお店にきませんか?」

「え?」

「いいですね。玲美、そうしようぜ」


 戸惑う玲美の腰を引き寄せる。


「木村さんの作るカクテルはうまいんだ。お前とちゃんと飲んだこともなかったし。な。いいだろう?」

「……いいけど」


 玲美は不服そうだが頷いた。


 そうして俺と玲実は木村さんのバーで飲むことになった。

 


「木村さん、ありがとう」


 すうっと寝息を立て始めて玲美を見ながら、カウンター越しにお礼を言う。

 木村さんのカクテルがおいしかったせいか、玲美ががんがんと飲み続け、とうとう寝てしまった。

 今日こそ抱くしかないと思っていた俺は、かなりほっとしていた。

 玲実は軽そうだから、家におぶっていっても大丈夫そうだ。


「池垣さんはどうするつもりなんですか?」

「まだわからないです。でも努力はするつもりです」


 木村さんがどこまで知っているのかわからなかった。ただそう答え、ウォッカの入ったグラスを煽る。


「じゃ、ありがとうございました。霧元さんによろしく言っておいてください」


 数分後、さすがに玲美に悪いと思い、バーを出ることにした。木村さんは俺の言葉に少しだけ顔を赤くしたが、またきてくださいと手を振る。



「武、武」

「なんだ?


 呼ばれて返すが、背中の彼女は寝息を立てているだけだ。


 なんだ、寝言か。


 それほど想われてるってことだよな。

 でも無理だ。

 やっぱり眞有が好きだ。

 彼女の声を聞くだけで、心が揺れる。



「よっしょ」


 マンションの部屋に着き、寝室のベッドに玲美の体を横たえる。


 シャワーでも浴びて、ソファで寝るか。

 そう思ってベッドから離れようとすると、袖を引っ張られた。


「武。一緒に寝て」


 それは玲美で、ベッドから半身を起して俺を見上げていた。その視線はぼんやりとしており、どう見ても寝ぼけているようだった。


「シャワー浴びたらな」


 玲美の頭をなでる。

 すると彼女はゆるりと笑い、体を再び横たえた。すぐに寝息が始まり、息を吐くと部屋を出た。


 玲美を抱くつもりはない。

 でもいつか抱かないといけない日が来る。

 できればその日を少しでも遅らせたかった。

 


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