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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第7章 偽れない心
27/46

7-2

 シャワーから上がると、ソファの前のガラスのテーブルにワインが置かれていた。ご丁寧にワインクーラーに入れられ、グラスも二つ用意されていた。


 そういえば、あの撫山はワインの会社の奴だったな。


 そんなこと思いながら、ソファに近付く。


「長いシャワーだったわね」


 玲美が意味深に笑うが、無視してソファに座る。


「飲んでいいか?」

「もちろん。乾杯しましょ」

 

 乾杯か。

 

 しかし断れるわけがなく、楽しげな玲美のグラスと重ねる。

 彼女は俺に体重を預け、グラスを煽ると笑う。


「おいしい?武もそう思うでしょ?」

 

 味なんてわかるわけがない。

 

 黙ってる俺を無視して、彼女は飲み続けた。時折誘うように彼女が俺の体に触れ、そのたびに鼻に着く甘い香りに顔をしかめる。

 

「ねぇ。そろそろ」


 彼女がそう言い、グラスをテーブルに置いた。


「武」


 彼女は体を捻り、俺の首に手を回すと、キスをする。それは触れるような可愛いキスではなく、噛み付くようなもので、玲美の腕を振り払うと立ち上がった。


「武!」


 彼女は怒った猫のように目を細くして、俺を見上げる。


「……今日は簡便してくれ。それくらいいいだろう。どうせ俺達はこれからずっと一緒なんだから」

「……そうね。わかったわ」


 玲美は大きく息を吐くと、ワイングラスを煽る。


「俺は先に寝るから」


 これ以上、纏わりつかれるのが嫌で、彼女に背を向ける。

 部屋は二つあった。右手の部屋に入ると、ベッドに体を投げ出す。

 寝られるわけがないが、早く横になりたかった。



「武。電話よ」


 着信音と共にそう声をかけられ、はっと目を覚ます。


 あほな俺は寝ていたらしい。


 よく寝れるな。

 そんな俺自身に驚きながら、玲美から電話を受け取る。


「もしもし?」

「池垣さん、夜分遅くすみません。実は撫山さんから変な電話があって。安田さんの住所を聞かれたんですよ。どうも一緒にいるみたいで」


 そんなの知ってる。

 俺が教えたんだ。


「知ってる。じゃなあ」


 苛立つ気持ちのまま、電話を切った。


「誰?何?」

「同僚だ。酔ってかけてきたみたいだ」

「本当?その割にはいらいらしてるみたいだけど。あの女、誰かと一緒にいるんじゃないの?やっぱり本気じゃなかったのね」


 玲美は笑いながら、俺の頬を触る。


「私は本気よ。あなたが好きなの。こんな手は使いたくなかったけど、どうしても欲しかった。誰にも渡したくなかったの」


 その瞳は潤んでいるように見えた。


 知ってる。

 彼女が本気なのを。

 

 でも答えられない。

 きっと彼女と結婚しても、俺は眞有を思い続ける。


 眞有だけが、唯一俺の心のよりどころだった。


「玲美。携帯ありがとう。じゃ、おやすみ」


 彼女に答えることもなく、その手を振り払うとベッドにもぐりこむ。


「武!」

「悪い。眠いんだ」


 体を猫のように丸くして目を閉じる。


「……明日からは、ちゃんと一緒に寝て。わかってるわね」

「……わかってる」


 短く答えると、玲実が溜息をつく。

 しかし納得してくれたらしい。パチンと部屋の電気が消えると、彼女が部屋を出て行くのがわかった。


 今ごろ、眞有はどうしてる?

 奴と一緒なんだよな。


 奴に誘われた?

 答えるわけないような?


 でも……


 自分から捨てたのに、自分から奴をけしかけたのに、気になる俺がいた。


 俺だけの眞有、そうでいて欲しかった。

 

 でもそれが無理なのはわかっていた。

 俺から切り出した。

 俺から捨てた。


 俺はきっと一生孤独だ。 

 たとえ、玲美が俺を好きでいてくれても、俺の心はきっと孤独だ。


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