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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第7章 偽れない心
28/46

7-3

 朝、玲美のマンションから出て、自宅に戻り、着替えて会社に向かう。

 結局ほとんど寝れず、顔色が悪いまま出勤した。


 俺の荒れた様子にみんなが興味深げに聞いてくる。


「なんでもないから」


 笑って俺はそう答えたが、信じてくれた奴はいないようだった。


 ま、当たり前か。


 午前十時、携帯電話が鳴る。

 見覚えのある番号で、俺はすみませんと部屋を出て、電話を取った。


「池垣さん。私です。撫山港です」


 それは驚くべきことに奴で、何のようだと顔をしかめる。それを見た女性社員が驚くのがわかったが、どうでもよかった。


「今日の夜お暇ですか?暇じゃなくても時間を作ってください。眞有のことで話があります」


 眞有ときたか。

 いつからそんな風に呼んでるんだ。


 余裕のない俺は無言のままでいた。


「眞有は残念ながら、まだあなたのことを忘れられないらしい。悔しいですが、あなたのお手伝いをしましょう。問題が全て片付いてから眞有をものにしますから」

「なんだと?」

「玲美さんには取引先と食事とでも言っておいてください。それじゃ、場所は後でメールします」

 奴は俺の怒りを気にせず、一方的にそう言うと電話を切る。


 何か知ってるのか?

 でも奴はまだ眞有には何もしてないようだ。


 さすが、眞有がいい人だというだけある。

 俺ならこういうときは、チャンスが来たと思いその心に付け入るのに。


 むかつくけど、いい男だ。


「玲美。俺だ。悪い。今日は取引先と夜、食事なんだ。帰りは遅いから、今日は一緒にいられない」


 玲美に動揺せずにそう嘘をつく。

 彼女は疑いを持っているようだったが、とりあえず了解する。


「じゃ、お昼付き合ってよね」


 しかし、彼女からは逃れられないらしい。

 俺は「わかった」と返事をすると、電話を切った。


「武!」


 会社から出ると待ってましたと、俺の腕に手を絡めてくる。

 その様子は出会ったころと一緒だ。


 あの時、自分の気持ちがわからなかった。

 だから、彼女をむげにできなかった。


 出会ったときに、すでにわかっていたら、彼女が俺を好きになることはなかったかもしれない。


 ま、そう思っても後の祭りだけど。


「ここのフレンチおいしいの!」


 彼女は終始嬉しそうに顔を緩め、俺に話しかけてくる。

 しかし、適当に相槌を打つしかなかった。


 玲美の気持ちはわかる。

 でも無理だ。 

 心までは彼女に渡せない。


「じゃ、明日な」


 食事を終え、店を出た俺は彼女にそう言うと背を向ける。


「武!」


 そんな俺に彼女が後ろから抱きついてきた。

 反射的に体が強張る。

 それが玲美にとって、ショックだったらしく、俺を抱く手に力がこもったのがわかった。


「なんで、なんでだめなの? 武。お願い、前みたいに笑って。前みたいに私と話して。私がしたことは卑怯だとわかってる。でも好きな気持ちは本当なの!」

「………」


 彼女が泣いてるのがわかった。

 ぎゅっと握りしめた拳をゆっくりと開くと玲美に向き合う

 そしてその涙をハンカチで拭った。彼女が驚いて俺を見上げる。その表情は期待で満ち溢れていた。


「ごめん」


 俺が彼女に期待させたんだろう。

 出会ったときに……一緒に飲んだときに。

 

 だから、彼女はこういう手段に出た。


 俺が悪いんだ。

 でも彼女を受け入れることはできない。

 体は受け入れるだろう。

 でも心は眞有だけのものだ。


「仕事にもどる。また連絡するから」


 ハンカチで彼女の涙をもう一度拭うと歩き出す。

 彼女の視線を痛いほど感じた。


 でも俺は振り返ることができなかった。

 


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