第15話 多摩川レイリー散乱
横浜に帰るためには、回り道だが一度東京に出る必要がある。
不便ではあるが交通機関も商売だから仕方ない。
東京に出てしまえば、どうにでもなる。
東横線や田園都市線に乗って多摩川を超える。
この川はとても綺麗とは言えないが、太陽の光が反射することで美しくは見える。
自分にとって多摩川は、関所であった。
東京という戦場に出ていく際の関所であった。
ここを超えたら気を引き締めろ。
誰に言われずともそう感じていた。
それと同時に、多くの時間を過ごした場所でもある。
蘇る、懐かしい日々。
川辺を歩いて友達と草野球をした。
打ち上げでバーベキューをしたこともあった。
電車から眺めながらそんなことを思い出した。
改めて思わされる。
こっちの青空は、やっぱり綺麗だ。
そもそも空が青いのは、光よりも波長の小さな粒子が光を反射しているからだ。レイリー散乱と言うらしい。
いつか画面越しに見た「彼」がそんなことを言っていた。
これから幾度となく繰り返すであろう回想のひとつ。
天気がいい日は悲しい気持ちになる。
今までのことを思い出すからだ。
全てがそうではないが、間違いなく輝いていた日々を。
そして未来がそれを塗り替えられる自信がないからだ。
今までもそうだった。だから何を不安に思うこともないのだけれど、自分はどうしても未来より過去に縋ってしまう人間のようだ。
嫌ではないし、悪いことだとも思わない。
ただ思い出し続けて、考え続けよう。
好きな音楽を聴きながら、ゆっくり歩きながら。
やっぱり横浜の空と風は最高だ。
第15話「多摩川レイリー散乱」
風見あおい
ということで、私の故郷は横浜です。
最初は隠そうと思っていたのですが、地元とか故郷とかあっちとかこっちとか、面倒すぎるので。
それに具体的な地名がある方が、イメージもしやすいかと。
観光するなら、桜木町がおすすめです。
港も船も、ランドマークタワーもあります。
是非来てください。
そんなわけで第15話、この辺りで。