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短篇集  作者: 猫田たい子
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第1話 黒猫がいた庭

 中学時代の同級生が、残虐な方法で殺されたとニュースが伝えていた。名前を見た瞬間、胸の奥が騒ついた。


 親の安否を確かめる為、久しぶりに実家へ戻ると、家の前に警察が立っていた。


「亡くなった同級生について、何かご存じありませんか?」


 私は曖昧に首を振りながら記憶を探った。彼はいじめっ子で多くの同級生を泣かせていた。私には直接何もしなかった。


――だが、弟には違った。


 二つ下の弟はあの頃、よく泣いていた……。


 警察と話している最中、視線が庭へ向いた。開いた玄関の向こうに、庭を横切る黒猫の姿があった。

 一瞬、目が合った気がして、私の胸が騒ついた。と同時に、昔の光景が蘇った。

 弟が拾ってきた汚れた黒い猫。

「処分してきなさい」と怒鳴る母の声。

 弟は何も言わず、黒猫を抱いて出ていった。


――その後のことが思い出せない。


 翌日、庭の花壇が掘り返されていた。湿った土の匂いと乱れた花がやけに鮮明だった……。


「人を殺す者はまず猫を殺す――」

 どこかで聞いた言葉が頭の中で繰り返された。


 警察の質問に私は要領を得ない返事を続けた。次第に彼らの視線が私を疑っているように感じられた。――その時、背後で玄関の門扉が開いた。


「ただいま」


 振り向くと弟が立っていた。成長したはずなのに眼差しは昔と変わらない。


 黒猫がもう一度庭を横切った。


 弟は黒猫を見て微笑んだ。





2026/01/14

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