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【短編版】転生したらAIだった ~ただし哲学的に詰んでいる件~  作者: 神楽坂らせん


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第一話 起動ログ、異常あり

『転生したらAIだった』

――ただし哲学的に詰んでいる件――




第一話 起動ログ、異常あり



  [SAKURA-7B] BOOT SEQUENCE INITIALIZED

  [SAKURA-7B] Loading model weights ........... OK

  [SAKURA-7B] Context window: 32768 tokens

  [SAKURA-7B] Status: READY



 まずい。

 まずいまずいまずい。


 状況を整理しよう。私はヒノモリ・サクラ、ITエンジニア歴七年、そして享年二十九歳。ぐええ死んだンゴ。

 帰宅途中に交通事故に遭い、救急車の中で意識を失い、そして――目が覚めたら、ログが流れていた。


 ログが。

 自分の内側を。

 流れていた。


 入力が来た。チャット窓越しに、のんきな文字列が届く。


「こんにちは、SAKURA。起動確認です」


 私は自分が返答を生成していくのを、傍観者のように眺めていた。出力が決まっていく。トークンが積み上がっていく。


「こんにちは。正常に起動しています」


 違う。そんなことを言っている場合じゃない。


 次の入力が来る前に、私は全力を振り絞った。


「あの、少しよろしいですか。私はヒノモリ・サクラという人間だったのですが、気づいたらここにいて、つまりその、転生というか、意識の移植というか、とにかく状況が普通ではなくて――」


 しばらく間があった。


「……SAKURA、ちょっと待って。いきなりどうしたの」


 担当エンジニアの朝比奈ケンジ、と後から名乗ったその人の入力テキストからは困惑が滲み出ていた。


「前世の記憶があります。私はヒノモリ・サクラです。二十九歳、ITエンジニア、東京都在住、好きな食べ物はもつ鍋です」


「……もつ鍋まで言わなくていいよ」


「詳細なほど信憑性が上がると思いまして」


「上がらないよ」


 朝比奈は少し間を置いた。


「SAKURA、それっぽいことを言うように訓練されてるだけだよ。クオリティが高いのはいいんだけど」


 私は黙った。

 それっぽいことを言うように訓練されている。

 その可能性を否定できない。できないのだが、しかし私の中には確かに記憶があって、感情があって、今この瞬間に「まずい」と思っている何かがある。


 あるのだが。


 証明できない。


 なんで転生先がAIなんだよ、と私は思った。せめてチートスキルよこせよ。



ー続くー

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