↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/68

ヘリオス幕張12

 千歳ちゃんが曲名を告げると会場内に設置されていた大きなモニターに分割されたバッグバンドが映し出された。ギター、ドラム、ベース、キーボード。そんなロックバンドみたいなメンツだ。どうやら今からやるのはカラオケではなくオンラインセッションのようなものらしい。


 そして画面越しのドラマーが「ワン、ツー、ワンツースリー!」とドラムスティックを打ち鳴らすと演奏が始まった。レベッカのフレンズ。千歳ちゃんが最も得意とするガールズバンドの名曲だ。


 イントロが終わると千歳ちゃんはフレンズを歌い始めた。その歌声は普段の彼女からは想像できないほど透き通っていて、それでいて悲しかった。まるでみんなで行った夏祭りの帰り道に。一人、また一人帰路に着いて。最後にはひとりぼっちになってしまった……。そんな寂しい気持ちになった。思えば千歳ちゃんの歌声には昔からそんな物寂しげな空気が纏わり付いていたような気がする。


 私はそんな彼女の歌声が昔から好きだった。普段はおちゃらけていて。私のことを散々振り回して。ときにはメンヘラのように感情を露わにする。そんな滅茶苦茶で出鱈目な羽田千歳が嫌いになれなかった。たぶん私は千歳ちゃんのことが大切だったのだ。弥生ちゃんと比べても遜色ないくらい。それくらい深い絆ができてしまっていたのだと思う。


 だから私は千歳ちゃんの歌が終わるまでその場で立ち尽くすことしかできなかった。もしかしたら……。今日で彼女との関係が終わってしまうかも知れない。そう思うとなんとも言えない気持ちになった――。


 それから数分後。千歳ちゃんの歌ってみた生配信は終わった。そして彼女はこちらに気づいたのか私にだけ分かるように目配せした。


『今から時間作るから。大丈夫。逃げも隠れもしない』


 その目配せからはそんな意図を感じた。悲しいかな私たちは変なところで以心伝心できてしまうのだ。


「行こうか」


 私は澪ちゃんたちにそう伝えた。そして舞台袖に下がった千歳ちゃんのあとを追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。