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ヘリオス幕張9

 ――私はそこまで話すと「思えばあの頃からあの子はリアルよりネットの方が大事だった気がするよ」と続けた。これは私が以前から千歳ちゃんに抱いていたことだ。リアルの世界に対しては淡泊な彼女もネット上の人間関係にはやたら気を揉んでいたように思う。


 そうこうしていると車は細い道に入った。ここまで来ればヘリオスまであと五分足らずで着くと思う。


「それで……。そのあとどうなったの?」


 私がそんなことを考えていると太田さんにそう聞かれた。心なしか彼女の肩は震えているように見える。


「ああ、途中だったね。……そのあと新学期になってさ。それで学校行ったらミクちゃんがいなくなってた。あれはちょっと不気味だったよ。だって誰もそのことに触れようともしないんだもん。まるで最初から『鈴木未来なんて最初からはいなかったよ』って感じでさ」


 私がそこまで話すと太田さんが「きゃあぁぁ!」と悲鳴に近い叫び声を上げた。そしてすぐに助手席の女性(おそらく太田家のメイドの水原さん)に後ろから抱きついた。まるで絶叫マシンに乗って泣き叫ぶ子供みたいに。太田さんの顔は完全に怯えきっているように見える。


 水原さんはそれに動じることなく「長谷川さん。車停めて」と淡々と伝えた。そして車はヘリオス間近の路上に停車した――。


 それから太田さんと水原さんは二人きりで車から降りた。原因は分からないけれどただ事ではない。それだけは確かだ。


「主人が失礼いたしました。少しすれば戻ってくると思いますので……。少々お待ちください」


 運転手の長谷川さんはそう言うと申し訳なさそうに頭を下げた。彼のその態度から察するに太田家内でこうなるのはさして珍しいことではないようだ。


「分かりました……」


 私はそれだけ返すとゆっくりと目を閉じた。疲れた。心の中でそう呟いた――。


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