ヘリオス幕張7
鹿島香澄の話②
それから数日後。年が明けた。そして私は正月からUGの手伝いに大忙しだった。具体的には福袋に詰める商品の追加と特売商品の陳列。要は初売りのための臨時スタッフだ。まぁ……。当時はまだ中学生だったので私にできることなんてたかが知れていたのだけれど。
そんな多忙な正月二日の午後に千歳ちゃんはUGにやってきた。彼女の手には大きな熊手。どうやら初詣の帰りらしい。
「かすみーん!」
彼女はそう言うと大げさに手を振って店内に入ってきた。そして陳列中の私の横にしゃがみ込むと「あけおめ! 正月から大変だねぇ」と笑った。そこには数日前のようなトゲのある雰囲気はない。平常運転の羽田千歳だ。
「明けましておめでとう。今年もよろしくね」
私はそれだけ返すとカウンターに目を遣った。幸い今はそこまで混んではいない。どうやら来客のペースもだいぶ落ち着いたようだ。
「ねぇねぇ。聞いてよ。おみくじ引いたら大吉だったんだよ。マジすごくない!? これなら今年はいいことありそうな予感だよね。かすみんは初詣行かないの?」
「初詣は……。四日以降かな? 弥生ちゃんたちと行く予定」
「マジで!? いいなぁ。ウチも弥生ちゃんに会いたいよぉ」
千歳ちゃんはマシンガントーク気味にそう言うとスマホを取り出した。そして「新年一発目の撮影しようぜ」と続けた。相変わらず脈絡がなさ過ぎる。
「うーん。今仕事中だから終わったらね」
「えー! ……分かったよ。じゃあ終わったらよろー」
千歳ちゃんは残念そうに言うとスマホをポケットにしまった。そして「そこのラジコン屋覗いてるから終わったら来てねぇ」と言った――。
それから三〇分後。私の手伝いは終わった。正確には叔父から「友達来てるんならもういいよ」と許可が下りた。こういうときの叔父は理解があるのだ。
「それと……。これお年玉な。義姉さんたちには内緒にしとけよ。美也にも」
叔父はそう言って私にポチ袋を差し出した。中身は二万円。なかなか高額なお年玉だ。
「こんなに貰えないよ……」
「いいんだよ! お前が来てくれたほんと助かったから。それで友達と旨いもんでも食べてこい」
叔父はそう言うと私に背中を向けた。そして「高校生になったら店手伝えよ」と最後にとんでもないことを言った――。




