↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/68

珈琲と占いの店 地底人4

 鳩時計から鳩が飛び出した。そして鳩が時を告げ終わると再び地底人内には静寂が訪れた。この店は昔から異常なほど静かなのだ。たぶんそれはここが地下街開設当時はマッサージ屋だったからだと思う。完璧すぎる防音設備。そのせいで店外の音がほとんど漏れ聞こえないのだろう。


「どこから話そうかしら……」


 太田さんはそう言うと口元に手を当てた。そして困ったように眉間に皺を寄せる。


「ゆっくりでいいよ。今日はどうせ帰ってもやることないから」


「そう? じゃあ……」


 太田さんは私の言葉にそう返すと二秒ほど目を閉じた。そしてB組で今起きていることについて語り始めた――。


 太田まりあの話①


 藤岡くん。彼は入学当初から協調性があまりない子だった。特に班行動やクラスで協力する行事などが苦手なようで五月の連休明けには他のクラスメイトに少しだけ煙たがられていたように思う。


「藤岡ぁ。またお前は」


「ご、ごめん」


「ったく。勘弁してくれよ」


 ――とそんなやりとりが日常的に行われていた。主に藤岡くんを責めるのは私の父の会社の子会社の子供。原田くんと小御門くんだ。


「まりあちゃんからも言ってやってよ。こいつまた俺らの指示無視してんだよ」


 原田くんは呆れきった様子で言うとRV主催のコンペのパンフレットを振って見せた。どうやら藤岡くんが原田くんの考えたプランに沿わない行動をとったらしい。


「……藤岡くん。ちょっとだけ足並み揃えてくれないかな? せっかく原田くんがコンペ委員引き受けてくれたんだからみんなで協力してあげたいのよ」


「う、うん。ご、ごめんね。頑張るよ」


 私の言葉に藤岡くんはつっかえながらもそう答えた。協調性がないだけで悪い子ではないのだ。単にトロいだけ。少なくとも私の目にはそう映る。


「まりあちゃーん。藤岡くんにはこっち手伝って貰うよぉ。コピー取ってホチキス留めする係欲しいんだよねぇ」


 そのやりとりを見かねたのか桜井さんがそう助け船を出してくれた。桜井さんは思いやりと気遣いのできる子なのだ。だから短気で思ったことがすぐ口に出る原田くんのフォロー役を熟してくれているのだと思う。


「小御門っちも! サボってんじゃねーよ。ほら、学内ポスター掲示してこい」


「あいよ。んじゃ行ってくるわ」


 原田くんにどやされて小御門くんは面倒臭そうにポスターの束を抱えた。そして「まりあちゃん行ってくるよー」と言ってB組から出て行った――。


 思えば……。この頃はまだ今みたいにB組の空気は悪くなかったように思う。原田くんも小御門くんも桜井さんもみんなみんな優しかったし、藤岡くんだってそこまでハブかれてはいなかった。


 でも……。そんな平穏な日々は夏休み前から徐々に崩れていったように思う。そうそれは……。B組の担任が学校を辞めた頃からだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。