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ロイヤルヴァージン2

 一限目の終わり。私は千歳ちゃんから受け取ったルーズリーフを眺めていた。そしてそこに書かれているひとりひとりの顔を思い浮かべた。原田くん、桜井さん、小御門くん、そして太田さん……。学内の事情を考えるとなかなか濃いメンツだと思う。彼らは多かれ少なかれ花見川高校卒業後の進路に関わるような企業の子供なのだ。千歳ちゃんの言うとおり『ぶるじょわぁ』なのだと思う。

 

『ロイヤルヴァージン』 太田アキラ

『ストレッサ』 原田修司

『シシー』 桜井知加子

『バックパッカー』 小御門良平


 私はルーズリーフの彼らの名前の下に彼らの親の名前と会社名を書き込んだ。そして書いてみてそこに乗る全員が叔父とは折り合いが悪い……。いや、叔父を毛嫌いしていることに気がついた。本当に叔父はアパレル業界の中では鼻つまみ者なのだ。才能を除ければ誰も評価なんかしない。そんな人間なのだと思う。


 叔父は良くも悪くも一匹狼なのだ。業界の慣習やらパワーバランスなんかクソクラエ。そう思っているに違いない。本人曰く『俺はチンピラメンタルだから平気平気』とのことだ。……まぁ、言いたいことは分かる。だって私も叔父に似てチンピラメンタルなのだから――。


 二限目。ファッションコーディネートの授業。私は澪ちゃんと組んで互いのコーデ画の意見を交換した。思えば澪ちゃんとは学校に入ってから授業で毎回ペアを組んでいる気がする。


「うーん。それだとちょっと地味になっちゃうよね。スカーフの色変えてみたら?」


 澪ちゃんはそう言うと私の描いたコーデに鉛筆で『スカーフを濃紺にするといいかも!』と薄く書いてくれた。私はそれを「ありがとう」と受け取る。


「香澄ちゃんの使う色味ってまとまり重視って感じだからさ。もうちょい冒険してもいいかも」


「うーん。分かってるんだけどさ……。どうしても無難にしちゃうんだよね」


「まぁ……。分かるよ。私もそうなるときあるからさ。でもそれだと全部同じようなデザインになっちゃうんだよね。どうしても型だけで工夫すると単調になっちゃうっていうか……。ね」


 澪ちゃんはそう言うと「うーん」と唸った。そして自身の描いたコーデを人差し指の甲ででトントン叩く。


「でもまぁ……。私は私で練り直し必要かな。香澄ちゃんとは逆で色味が浮いちゃってるし」


 澪ちゃんはそう言うとスケッチブックを捲った。そして「むずいね」と笑う。


「難しいよねー。私も書き直そうかな」


「お互いそれがいいかもね。まだ時間あるし」


 それから私たちは少し描いては互いのコーデを見せ合いっこした。そして互いの良いところと悪いところを言い合った。澪ちゃんは色について。私はカタチについて。それぞれ意見を出し合った。私たちは長所と短所が真逆なのだ。


「そういえば……。委員長会ってどんな感じ?」


 私は澪ちゃんにそう話を振った。理由は澪ちゃんがA組の学級委員長で太田さんがB組の学級委員長だから。要は太田さんについて探りを入れたわけだ。ちなみに委員長会というのは学年ごとに設けられた各クラスの委員長で結成された会議だ。一応は生徒会の下部組織……。みたいなものとだと思う。


「どうって……。普通だよ? D組だけ普通科だから発言少なかったけど……。ABCはいつも通りかな?」


「そっか……。B組の太田さんとは何か話した?」


「太田さん? ああ、マリーね。あの子とは……。一〇月にあるコンペの話したくらいかな。ほら! 秋期コンペってRV主催だからさ」


 澪ちゃんはそう言うと机から一冊の冊子を取り出した。冊子には『ロイヤルヴァージン主催 フラワーモチーフコンペティション』と書かれている。


「そういえばもうそんな時期だったね……。澪ちゃんは何か出すの?」


「うーん。出さないわけにもいかないかな……。一応学級委員として参加だけはしなきゃだしね。香澄ちゃんは? 夏は参加してたよね?」


「今回は……。どうしようかなぁ」


「……ま、参加するなら早めに申し込んどいた方がいいよ。来週頭には締め切りだからね」


 澪ちゃんはそう言うと私にその冊子を何冊か分けてくれた。そして「良かったら参加してみてね」と言った――。


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