苦しむ少女
この話はかなり短いです。
ですので次の話に乞うご期待。
episode1〜信じるもの〜
<<AILIS SIDE>>
私にはとある日より『ある』声が聞こえる。毎回その声は私のことをなにかに誘ってくる。
心の中で拒否しても、何回も何回でも誘ってくる。段々と大きくなるにつれてその声もはっきりと、しっかりと聞こえるようになってきた。
最近では、その声の主が夢にまで出てくるようになってきた。
その姿は大きく、目が怪しく赤く光っていた。
全貌は、もやがかかっていてはっきりと見ることは出来なかったが、夢の中なのに、私にのしかかる重圧がとても大きかったことは、忘れようとしても忘れることは出来ない。
私はそのことを何回も友人に相談したが、誰にも相手にされなかった。それどころか友人の数は減る一方。そしていつの間にか私の周りには友達がいなく、孤独になっていた。
私の両親でさえも私のことを気味悪がっていた。しかし、私はそばにいるだけで充足感があった。だが、そんな幸せはいつまでも続かなかった。…両親は私をおいていつの間にか家から消えていた。そう。私一人をおいて家を捨ててどこかに行ってしまったのだ。
そして私は全てを失った。だからもうすべてがどうでも良くなった。私のことを必要としてくれる人なんか誰一人としていない。
もう嫌だった。何もかも。この世界のすべてが、そして自分の命すらも。だから私は耳を傾けた。『あの』声に。唯一私に残された話し相手。どんな存在なのかもわからないけど、でも…孤独よりかは幾分かはましだった。それはもう藁にもすがる思いで。
…ようやくわれの言葉に耳を傾ける気になったか。われの言葉に耳を貸すということは、二度と日の光を見ることはできないということを意味している。…それでもいいんだな?
その言葉は質問しているが、声が嬉々としていた。まるで、私の答えがわかっているかの如く…。
構わないわ。もうすべてがどうでもいい。私のことを嫌ったすべてのものが、全ての人が!そして…この世界が!だから…こんな腐った世界なんか消え去ってしまえばいい!!
私のそんな答えに満足したのか、声の主は悪魔のように、その時の私にとっては甘い甘い言葉を囁く。
…ふふ、そうか。ならばこの世界を憎み、嫌い、忌むお前は今、何を欲し、何を為す?
私は私を否定する全てのものを破滅させる力が欲しい。全てを凌駕し、全てを絶対的な力で押さえつける支配力を!そしてその力で…この世界を、全てのものを、全ての人間を支配する!!邪魔するものは全てなぎ払う。従うものは受け入れる。裏切ったものには死よりも辛い制裁を!…私は、私は!この世界の………支配者となる!!!
…面白い。いいだろう。ではお前に『力』をやろう。お前の望む『力』を!!さぁ思い浮かべろ!お前の望む力の形を!!
その言葉に釣られるように私は頭の中でイメージを浮かべる。何よりも強い力を。何者をも寄せ付けない絶対的な力を。そう、その力の先にあるのは絶望だけ。だから私の望む力は……!
『破滅の裁き(ダークネス・ジャッチメント)』これだ!これにしよう…
…そうか。心得た。ではその場で唱えてみるがいい。お前の力の言の葉を!!
破滅よ、私を害成すものを、私を否定するものを裁け。
『破滅の裁き(ダークネス・ジャッチメント)』