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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


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5.Cafe Time with you(44)

44.カモミールティ


「瑞葵ちゃん」

 トイレから出てきた私の目の前にいたのは、健太郎君だった。


「どうして、ここに……」

 いろんな感情が溢れ、考えが纏まらない。

 私は後ずさり、もう一度トイレに逃げようとした。


「瑞葵ちゃん、待って。話しをさせて」

 締める扉を手で止められてしまった。


「話って、何を?」

 もう、今さらな気持ちになっていた。どうでもいいと思っていた。

 だから、会いたくなかったのに……。


「お願いだ。出てきて、落ち着いて話をしよう」

「でも……」

 なんとかしたいけど、いい考えが全く浮かばない。


「瑞葵様、トイレは冷えます。お茶を入れますから。ソファにお座りください」

 サツキさんは優しく手を差し伸べてくれた。


「でも、2人きりは、気まずくて……」

 傍にいて欲しいと思った。だから、素直に気持ちを伝えた。


「瑞葵様はお座りになってお待ちください。久遠様は私のてる台をしてください」

 そう言って、そっと私の手を引いてくれたサツキさん。感謝しかない。



 ソファに座ってしばらく待っていると、トレーにカップを乗せてサツキさんと健太郎君がやってきた。


「久遠様は瑞葵様の向かいにお座りを。瑞葵様、カモミールティです」

「ありがとう。いい匂いね」

「よろしければ、蜂蜜も入れましょうか?」

「あ、欲しい、です」


 カモミールティを飲むときはいつも蜂蜜を入れている。

 香りは大好きだけど、飲み口は少し苦手。でも、蜂蜜を入れると柔らかくなるので大好きなのだ。


「瑞葵様のお母さまと、一緒ですね」

 サツキさんが、ふふと笑みを浮かべながら話してくれた。

「お母さんと?」

「はい。蜂蜜がないと苦手なのだと言っておられました」

「そう、なのね。お母さんと同じ、ね」


 蜂蜜を一掬い。

 ゆっくりとスプーンでかき混ぜる。

 両手でカップを持ち上げ、香りを楽しむ。

 まだ熱いから、何度も息を吹きかけ、ほんの少しだけ口に含む。


 口にカモミールの青い草の香りと蜂蜜のまろやかな甘みが広がる。

「やっぱり、落ち着く。……ありがとう、皐月さん」

 ソファ後ろに控えてくれているサツキさんに向き直り、感謝を伝えた。

 サツキさんは、私を見て、少し涙を浮かべ、にっこりと笑ってくれた。



 カモミールティで、気持ちが落ち着いた。

 息を細く吐き、健太郎君に視線を向けた。


「それでは、お話を、伺います」

 背筋をピンと伸ばし、しっかりと健太郎君の目を見つめ、覚悟を決めた。


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