表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣に、いてもいいですか。ずっと――  作者: 蒼宙 つむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/135

5.Cafe Time with you(29)

29.心の安寧を求めて


 ハア ハア ハア ……


 私は、走っていた。

 どこに向かうとか、何にも考えていなかった。



 プルプルプル…… プルプルプル…


 スマホに着信音が鳴る。

 兄からだ。


「お、お兄、ちゃん……」

『瑞葵!今、どこにいる?』

「えっと、どこ、だろう。急いで出てきたから……わかんない」

『瑞葵……。もしかして、会った、のか』

「お兄ちゃん……」


 兄は、何を言っているのだろう。

 “会う”って?

 何を、知っているの?


 疑問は山のようにあるけど、今はそれどころではなかった。


 私は、スマホを握りしめ、その場でしゃがみ込み、声を絞り出した。

「お兄ちゃん……。――助けて」



 その後、場所を言ってもいないのに兄が駆け付けてくれた。

「瑞葵、迎えに来たぞ。行こう」

「お兄ちゃん……。どこに、行くの?」

「今は、秘密だ。大丈夫。安全なところだから」

「わかった……」

 兄は、私を抱きかかえ、黒いバンに乗り込んだ。

 誰かの運転で車が目的地へと向かった。



 途中、サービスエリアで休憩を挟みながら、数時間かけて山奥に着いた。

「お兄ちゃん、ここって……」

 目の前のログハウスを見上げて戸惑った。

「あ、思い出した?うちの別荘だよ」


 そう、ここにはよく来ていた。

 あの日も、ここからの帰りだった。

 楽しい時間が、ここに詰まっている。

 私の安全地帯。


「うん。お父さんとお母さんの、想い出の場所だね」


 ゆっくりとログハウスへと足を動かす。

 玄関扉の横にある柱には見覚えのある節がある。

 家の周りを走りまわってよく怒られた。


「お父さん……。お母さん……」


 あの楽しかった日々を思い出し、感情があふれ出す。


「うわあああああ!どうして!!」


 両腕をギュッと自分で抱きしめ、泣き叫んだ。

 喉が枯れるまで、大声で――。

 兄はそっと近づき、抱きしめてくれた。


 私達はこの日、消息を絶つことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ