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同盟暦512年・脱出行6

一行が森の中を進み続けてどれだけ時間が経過したのか分かる者はいない。

木々の枝に遮られ空は見えず昼のままか夜になったのか判断できない。

それでもかなりの時間、歩いているのは誰もが分かっていた。

「ポー。ねぇポー」

馬車の中から顔を出したアーネストがポーに呼びかけた。

「どうしたの?」

「……姫様がうなされてるの。馬車を止めて落ち着かせて差し上げたいの」

「分かった。テュルパン様に相談してみる」

ポーはテュルパンに走り寄ると事情を伝えた。

「……ふむ。思っていた以上に魔力が強いですからね。それが影響して悪夢を見られているのかもしれません」

「悪夢…それって…」

「口に出したくありませんが、王都で姫様に起きた苦痛を夢で再び体験されているのやもしれません。だとすれば我々には何にも出来ません」

沈痛な表情のテュルパンと事情を知る騎士達。

「とにかく拓けた場所を探して一旦、休むとしましょう。水飲み場も探して…」

言いかけてテュルパンは"施しの拵え(アルマス)"を抜いて、飛んできた石礫を防いだ。

「敵襲!」

一斉に武器を抜いた騎士達は慌てる事なく素早く馬車を守るように円陣を組む。

「追っ手…にしては変だ。石礫を使うとは思えない」

「追っ手じゃない。木の上を見てみろ」

騎士の一人が指差した先には、奇妙な毛並みをした人間なみの体躯をした大猿、その群れがいた。

魔猿(カピ)だと?」

リッヒンデルは剣を構えた。

各々の騎士も剣または槍、斧を身構えた。

「魔女の使い魔…ですかね」

「だとするとむやみやたらに殺せないな。魔女の怒りを買う」

「だが魔猿(カピ)だぞ。手加減できる相手じゃない」

「斬りなさい」

困惑する騎士にテュルパンは冷淡に命じた。

「目の前の障害を討ち滅ぼし、生き延びる事だけ考えなさい」

テュルパンの敵意を感じ取った魔猿が雄叫びを上げて戦闘状態に入った。

「いくぞおっ!」

騎士達と魔猿達が衝突する。

魔猿は長い手足を使い騎士に襲いかかる。

騎士もまた巧みに剣や槍、斧を振るい果敢に斬り込む。

ポーもまた腰の剣を抜いて一匹の魔猿と戦う。

大木をへし折る腕力を持つ魔猿の恐ろしさはポーも理解しており、前面に立ちつつ立ち回る。

その隙間をついてクーシーが剣で斬りつけ追い込み、動きが鈍ると、ポーが踏み込んで魔猿を斬り捨てる。

事情を知らない魔猿には、白雪国の騎士達の士気の高さが何なのか理解に及ばない。

忠誠と姫を守り抜くという一点に彼等は全てを捧げたのである。

その為には死を恐れない決意があった。

魔猿の三分の一を斬り、魔猿は劣勢を悟り、木の上へと登り逃げた。

対してポー達側は二名の騎士が戦死し、五名が負傷した。

魔猿を相手にして犠牲はかなり少なかった。

「……姫様……!」

ポーが馬車に駆け寄ろうとして、悪寒が全身を駆け抜けた。

ポーだけではない。

騎士全員が感じた悪寒だった。

「ー偉大な北の壁の騎士」

地面を擦るほどに長い黒髪を垂れ流した妙齢の女、アグラオニケ(千歳・女)は冷たい声で問う。

「彼はどこだ?」

正真正銘の魔女が現れた。

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