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アラン戦記  作者: 夢物語草子


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同盟暦512年・脱出行5

一行は惑い魔女の森へと足を踏み入れた。

濃い霧が視界を遮り、ポー達を分断しようと邪魔しているかのようだった。

「…………う……」

入って三十分経つと、騎士の一人が呻き声を上げた。

強い魔力に肉体が病んだのだ。

「しっかりしろ」

「うぅ…」

それを見たテュルパンは聖歌を朗々と歌う。


ー御許へ 主よ 御許へ

御許に近づかんー


聖歌の力で霧が薄れる。

肉体を病んだ騎士が楽になったとばかりに息を吐く。

クーリーの目つきが鋭くなる。

ポーも腰の剣に手を掛ける。

リッヒンデル等、他の騎士達も緊張のあまり汗をかいている。

霧が薄れた事で何者かの刺すような殺気が一行にぶつけられたのだ。

疑いと怒りの感情、間違いなく魔女のものだ。

「魔女に聖歌はまずかったですな」

「なにより聖職者がいることが気に食わないのでしょう」

そう言いつつテュルパンは足を止めることなく進む。

ポーは馬車の側に歩み寄りる。

そして北の方角を目指して進んでいく。

ーーーーーーーーーーーー

鉄王冠国(ロンバルディア)の軍旗を掲げた騎馬隊が惑い魔女の森の前で足踏みしていた。

「本当に森に入ったのか?」

カール・シャルルマーニュ(24歳・男)は驚きの表情。

鉄王冠国の誇る若き英雄のシャルルマーニュすら、足を踏み入れる事を厭う恐るべき場所だ。

「休息の痕跡があります。足跡を辿るとやはり森の中に移動したようです」

ガルマルニ(35歳・男)は報告する。

「……参ったな。……我らを追っ手と勘違いしたのか?」

「おそらくは」

「追っ手の本隊は足止めしているんだけどね…。彼等に合流して問題なく国境を越えさせるつもりだったのに…」

「致し方ないかと。事前に話しを通す事も出来ていませんでした。そもそも我々を信用するとは思えません」

ガルマルニの声色に嫌悪感が滲む。

「詮無きことだな。……仕方ない。ここまで……」

「おやおや。英雄と名高きお方が追跡を断念なさるとおっしゃるのか?」

ゴドルド(32歳・男)が二人の前に現れた。

「騎士ゴドルド。卿には言いたいことがおるようだな?」

「なぁに。閣下が追っ手を足止めしたことは目を瞑りましたが、追跡まで断念されるとなればさすがに見過ごせぬと申し上げたいだけです」

「…それは皇帝陛下に密告すると言いたいのか?」

「まさか!。ただ私は事実をご報告申し上げるだけです」

シャルルマーニュは泰然自若としているが、ガルマルニは怒りの顔だ。

ゴドルドは皇帝側の支持者だ。

それだけにシャルルマーニュに否定的な態度を取る。

「なら騎士ゴドルド。卿に命ずる。指揮下の隊を率いて後を追え」

「は?」

「私は動かん。卿が動いてくれるのだからな。命令だ。ゆけ」

シャルルマーニュは眼光鋭く、反論を許さず、ゴドルドとその兵達を森へと踏み入らせたのだった。

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