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自重しない魔拳士さんは旅をする  作者: Liberty
第二章 テスタ村の冒険者
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十五話 急展開ですよ?

「お前達はやりすぎた。私の逆鱗に触れたんだ。

 ───生きて帰れると思うなよ」


 銀髪を靡かせた少女が紅色(・・)の瞳を爛々と輝かせ、凍えた笑みを浮かべながら前方を見据える。

 彼女の前には怯えた男達が、後ろには無惨な姿となった男達の仲間だったと思わしき骸が無数に転がっていた。



◇◆◇



 その日はいつもと同じで軽めの討伐依頼をこなしていた。

 ギルドで注意されたのであまり暴れ過ぎないようにだ。

 あれからだいぶ鍛練を積み、リィルは新しく『カウンター』というスキルを手に入れ、レイアは加減打ちが無意識でも常時発動出来るようになっていた。


 2人の実力の程はギルドでも広がっており、現在のランクはCに上がっていた。

 勿論ただのCランクではなく、“最速”という言葉が付くのだが。

 本来DからCに上げるのに必要な期間は平均で3年、早くても1年はかかると言われているのだ。

 それを彼女達は僅か1ヶ月で上げたのだ。

 前代未聞の快挙に街は大いに騒いだ。

 将来有望どころか英雄になるやも知れない人材を見つけたのだ、当然の如く街の評価は鰻登りである。

 3日程は街の総出で祭りを開き、皆彼女達を持て囃した。

 領主と面会などというハプニングもあったが、それも一興と彼女達も祭りを満喫していた。




 それから数日経って漸く街が落ち着いてきた頃。

 身体が鈍っているだろうからと、討伐依頼で森に赴いているところなのだ。

 依頼の対象は叫集猿(キョウシュウエン)という猿型のCランクである魔物だった。

 瀕死になると絶叫して仲間を呼ぶという名前そのまんまな猿だった。

 群れている仲間が鬱陶しいだけで特に障害があるわけでもなく、無事に殲滅することが出来た。


 それは良かったのだが、戦闘の途中から霧が出ており、リィルとはぐれてしまった。

 なかなかに濃い霧で、薄らと花のような匂いもする。妙に精神を昂らせるような匂いだ。

 それよりも、と何度か呼びかけたのだが返事がない。

 嫌な予感がし、空打ちの拳圧で霧を払うという人外じみた方法で退けた。

 しかしそこには猿の死体ばかりでリィルの姿はなかった。


 リィルに限って先に帰るようなことはないと思うのだが、何にせよ1度街まで戻った方がいいと判断したレイアは道を急いだ。

 案の定リィルは街には帰ってきておらず、手がかりもなかった。

 とりあえず門番に事情を伝え、帰ってきたら連絡をしてくれるように頼んだ。

 対応してくれたのはあの胡散臭い金髪だったが、厭な視線を向けられることもなく、事務的に対応された。

 以前とは雰囲気が違う彼に若干の違和感を感じたが、焦っているレイアにゆっくりと考える暇はなかった。


 捜索依頼を出す為にギルドへ急ぐ。

 勢いよく扉を開け放ったレイアに、何事かと視線が集中するが、その鬼気迫った表情に皆押し黙る。

 そんな中、レイアの前に立つ影が1つ。

 ギルドへ登録した時に絡んできた男だ。


「おやおやぁ、今話題の嬢ちゃんじゃねぇか! ひでぇ面してんな! ん? もう1人の嬢ちゃんはどうした? 調子に乗りすぎて魔物に食われちまったか? ガッハッハッ!」


 何が面白いのか、大笑いしながらレイアの横を通り過ぎて街に消えていく。

 苛立ちを隠そうともしないレイアの鼻に、ふと何処かで嗅いだような匂いが漂ってきた。

 間違いない、あの霧と同じ匂いだ。


 バッと後ろを振り返るが、男は既に人混みに溶け込んでおり、見つけることは出来なかった。

 急いでギルドを出たレイアは、路地裏から民家の屋根に飛び乗った。

 俯瞰視点から見ると男の居場所もすぐにわかった。

 バレないように屋根伝いに後を付ける。


 レイアはあの男が何か関わっていると確信に近いものを抱いていた。

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