十四話 脇役も活躍したいんですよ?
「おい、ジジィ。あの嬢ちゃん達をみてどう感じた?」
賑やかさの消えた執務室で、大男が沈黙を破る。
勿論独り言などではなく、対面に座る初老の男に対してだ。
「さてのぅ⋯⋯。エルフのお嬢さんもなかなかやるみたいじゃが、あの銀髪の娘っ子は最早別格じゃのう。儂でも強さが計り知れんよ」
「ジジィでもわからないか⋯⋯。正直嬢ちゃんを初めて見た瞬間、怖気が走ったよ。“アレ”に手を出してはいけないってな」
大男──ギルドマスターはなまじ実力があるだけに、そういったことには敏いのだろう。
尤も、それは一見無害そうな老人にも言えることなのだが。
「あの娘は強いじゃろう。全盛期の儂達が2人掛りでかかっても返り討ちされる程にの。じゃが同時に戦い慣れもしていなさそう見て取れたのぅ」
そう、レイアはこの世界に来てまだ1ヶ月程しか経っていない。
慣れていないのも当然と言える。
おまけに自身の力が強すぎるが故にマトモに敵と戦ったことがなく、折角の加減打ちも戦闘で興が乗るうちについ解除してしまっているのだ。
実はまだ理由もあったりするのだが、今は誰も気付いていないので矯正は無理であろう。
「戦い慣れしていない? それ程までの強さがあるのにか?」
「何と言うべきか、身体に慣れていないような、そんな感じがするんじゃ。普段の足運びも隙がないようにみえるが、若干のぎこちなさを感じたのぅ」
「身体に慣れていない⋯⋯ねぇ」
明確な予知があったわけではない。
それでも彼らは“何か”が起こると確信に近いものを抱いていた。
◇◆◇
暗闇に閉ざされた一室。
クツクツと何かを楽しむような笑い声が響く。
数日前に部下から報告された内容──エルフの村にけしかけた竜が何者かに一蹴されたという話が何故か気になり、声の主は自身の使い魔に観察させていた。
何度か見つかりそうになったが、数日間の行動を使い魔を通して見ていたところで、奇しくもギルドの幹部と同じ見解を出していた。
そしてこれは使える、とも。
彼女の名前はエリアス=クライアト。
今代の魔王である。




