第6話・冬の女王
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『決して、冬の女王様を怒らせたり、悲しませたりするような行為をするな』
これが国王様に言われた、唯一の言葉だった。
それ以外の指示は、まったく無かった。
あのときの国王様と、その脇に居たエラい人の真剣な表情が、俺の脳裏に焼きついている。
季節の塔に居ると言う『冬の女王様』を見た事は、未だない。
こんな事を言われてしまうと、『女王様は怖い人なのではないか』と考えてしまう。
今から、不安でならない。
「おい、お前。」
「・・・え、俺ですか??」
声をかけてきたのは、兵士の一人。
俺は今、国王様との謁見が思いのほか、すぐに終わり兵士数人に連れられて『季節の塔』へと向かっている。
少し離れたところに小さく見えてきた塔が、ソレであろう。
ソレが見えてくると共に、周りの兵士の空気感が、重くなったような気がした。
他の兵士も俺に、何かを訴えかけるように、俺へと視線を向けて来ているのが分かった。
・・・何かをする気なのだろうか?
少し、警戒をするバルド。
「国王陛下からのお言葉、忘れるでないぞ!? 決して、冬の女王様を悲しませたり、怒らせぬようにするのだぞ!??」
「貴様はダメで元々。 おかしな事などせずに帰ってくるように!!」
「・・・・。」
・・・少し、イラッとした。
なんだろうか、国王様から言われ、続けざまに兵士まで言われると、なんだかバカにされているような気がして、なんだか腹立たしい。
何より『ダメで元々』と言われたのが。
初対面なので俺が信用できないのは分かるが、一国の兵士がそれを言うか?
何人かは、こちらへ敵意まで向けてくる。
そこで全員が、足を止めた。
まだ季節の塔までは、少々距離があるように見える。
「我らの案内はここまでだ。 いいか、何かあったら、貴様のせいだからな!??」
それだけ言うと、ここまで一緒だった兵士さんたちは逃げるように、もと来た道を戻っていった。
まるで、何かから逃げるように。
一人、雪原に取り残される格好となる俺。
不親切で、礼儀知らずな兵士だと俺が思っても、悪くは無いと思う。
まるで俺が、何か粗相をすると、予見するかのようなあの態度。
実に、腹が立つ。
「とりあえず、あそこが冬の女王様が住むと言う『季節の塔』で良いんだな?」
白くかすむ視界の向こうにそびえる、季節の塔。
あそこに『冬の女王様』がいる。
彼女へ直接に嘆願をして、どうにかこの冬を終らせてもらうのだ。
それはあの兵士のためでも、国王様のためでもない。
俺は村の皆のために、冬を終らせてもらうために、ここへ来たのである。
◇◇◇
コンコン!
先ほど塔の中へと入ったバルド。
中は無骨な石造りだが、定期的に掃除でもしているのか、とてもきれいにされていた。
上へと続く階段を上っていくと、そこには木製の重厚な扉が一つあった。
これ以外に、出口以外の扉は無い。
多分、この中に女王様がいるのだろうと思われる。
礼儀として、とりあえずノックをする彼。
しかしいつまで経っても、中から返事は無い。
「入りますよ?」
ここでマゴマゴしている暇はない。
少し躊躇しながらも、ギイィ・・と扉を開けるバルド。
覗き見るようにして、室内を伺う。
そこには、水色と白色のグラデーションが利いたドレスを身に纏った、女性の後ろ姿があった。
無骨な塔の石壁とも相まって、見た目はとても寒々しい気がする。
彼女が『冬を司る女王様』なのだろうか?
「あの、俺バルドって言います。 あなたが冬の女王様ですか?」
如何せん実際に見た事が無いので、そこを尋ねなくては、田舎出の俺には何も分からない。
俺の存在に気がついたらしい彼女は、頭をこちらに向けた。
その際、俺と彼女の視線が、交差する。
ゴクリ。
息を呑む美しさとは、この事を言うのだろうか?
儚くも美しいその出で立ちに、思わず目が釘付けにされてしまう。
さすがは『女王様』・・・といったところだろうか?
こちらを見据える彼女の視線は、氷のように冷たかったが、そんな事は気にもならなかった。
「青年よ、ここはあなたが来るべき場所ではありません。 すぐに立ち去りなさい。」
「ま・・・待ってください! 俺はあなたに用事があってここまで来たんです!!」
言葉のニュアンスと、その存在感などからやはり、このヒトが『冬の女王様』なのだと思った。
だとすれば門前払いなぞ、たまったモノではない。
こちとら二日もかけて、ここまで来たのだ。
「皆がいつまでも冬が終らなくて、困っているんです。 早くいつものように、季節を巡らせては頂けないでしょうか??」
ここへ来た理由を、簡潔に説明するバルド。
これで彼女も、ひととなりの状況を理解したようで、何も言わずに、窓の外を眺める。
その表情は、先ほどとは打って変わって暗い。
何やら、思いつめているようだ。
「この国の方々が、季節が巡らず困っている事は分かっています。」
「だったら・・・!」
なぜ分かっているなら、ここにいつまでも、あなたは居るのか。
それを聞くヒマもなく、彼女は話を続けた。
「なぜ、スプール・・・いえ、『春の女王』がここへ姿を現さないのか、疑問には思わなかったのですか? 他の女王も。」
再びこちらへ視線を向け、そう問いかけてくる彼女。
確かにその疑問は、国王様始め多くの人たちから聞いた話だ。
『冬の女王様』は出てこず、『春の女王様』もやってこない。
どちらか一方がそうならまだしも、示し合わせたかのようにどちらも姿を現さないのは、何故なのか?
そして他の女王が、なぜこの異常事態に、何の行動も起こさないのか。
彼女の言い草からして、何やら事情があったようだ。
「・・・俺に聞かせてはくれませんか、その『事情』というのを・・・」
「・・・・・良い話ではありませんよ?」
どうやらこの女王様の一存で、こうなってしまっているようではない事は、分かった。
だから余計、聞きたくなった。
『季節が巡らない』いや、『季節が巡らせられない』事情とやらを。
国王様すら知らないらしい、ソレを。
そしてそもそも、『冬』がなぜ、終らせられないのか、という事も・・・・・
『冬』が終らない原因・・・
テンプレをモットーに書いております。
たぶん。




