第3話・王都
これを書いていると、なんだか寒くなってきます。
たぶん、そこそこ寒いのに暖房をつけていないのも、原因かなと・・・
早く春を・・・!!
ずぼっっ!!
一歩進むごとに俺の体は、積もった雪で腰の辺りまで埋まってしまう。
体が全く、思ったように前へ進んでくれない。
辺りの寒さで、手がかじかみ、感覚が奪われていく。
「おっととっと!!」
数歩進むごとに、雪に足をとられて転びそうになる。
さっきはマジで、雪の中へダイブした。
おかげで俺の体温で倒れたところの雪が溶けてしまい、服にびっしりついた水滴が外気温で冷やされて、再び氷になってしまった。
今は着ていた服は、真っ白の状態だ。
動くたび、服についた氷がバリバリと音を立てる。
先ほどより体感気温が、ぐっと下がってしまった。
「ふぇっくしょ!!」
村から歩き始めて二日。
道のりで言えば、王都へは昨日中には着いている筈だった。
しかしここまで進んだのは、全体の2/3ほど。
積もった雪の塊のせいで、歩むスピードが、かなり落ちてしまっているのだ。
父親が使っていたという冒険者装備というのも、慣れていないせいか動きにくい。
背中のリュックが、特に重い。
中にはテントなど、元冒険者の両親から教わった冒険者の必需品だと言うものが全て、入れられている。
おかげで昨日は凍死せずに済んだが、この状態で山賊に襲われていたらと思うと、ゾッとする。
身動きがとりにくいせいで、うまく立ち回れないので。
「あれが王都か・・・・」
木々の間のはるか視界のかなたに、目指す王都が見えてきた。
この分なら、今日中には着けそうだ。
若干ながら、余裕を見せるバルド。
目標が見えたせいか、ホッと一息をつく。
だがまだ、道のりは遠いようだ。
彼は気持ちを新たに、王都へと前進する。
◇◇◇
「そこの者とまれ!! 王都へ何用だ!?」
王都の城門前までつくと、そこに居た騎士二人組みが、手に持った槍を十字にクロスさせ、俺の進路を閉ざす。
番兵だろう。
ここで怪しい者が王都へ出入りしないか、見張っているようだ。
「セバルス村から来ましたバルドです。 村長の命令で来ました。」
それだけ言って、村長から渡された身分証明書を懐から出し、騎士の一人に手渡した。
手渡された騎士はもう一人と目を見合わせ、互いに何やら話し込む。
なにか不備だろうか?
一抹の不安が、頭をよぎる。
そう考えていると、騎士は身分証明書を折りたたみ、俺へ返してきた。
「武器の携行はあるか? すべて審査するので、ここで提出せよ。 荷物もだ。」
「それなら・・・」
腰に差した小さな剣とリュックに留められているナイフを、騎士へ差し出す。
これで俺が持ってる武器は、全部だ。
荷物も、背負っているリュックで全部である。
門の奥からもう一人騎士がやって来て、俺の荷物をひっくり返す。
親から教わった。
これは毒や禁制品などの携行が無いか、調べているらしい。
それだけ、王都は警戒が厳しいのだ。
荷物を一つ一つ調べては、何かの書類に書きとめている。
それもすぐに終わり、騎士たちは荷物を元通りにして、俺に返してきた。
「いや、足止めして大変失礼をした。 これから『入街許可証』を発行するので、それまでお待ちいただきたい!!」
先ほどまでの高圧的な態度は一変、ビシッと俺に敬礼をしてくる。
そう言っている間に、もう一人の騎士は取り出した小さな紙に何かを書き込み、それにスタンプのようなものを押す。
それをビリッと千切り、俺へ渡してくる。
渡された小さな青い紙には、確かに『入街許可証』と書かれていた。
とくに有効期限などは書かれていないよう。
昔、両親に『字を覚えろ』と勉強させられ、こんな村の中でいつ使うんだと考えたものだが、今になってその、ありがたみが分かった。
字が読めると、安心が出来る。
それを身をもって、痛感した。
「村の冬が全く終わらなくて、困ってやって来たんですけど、一体何があったんですか?」
ここは『季節の塔』がある王都。
早く季節が巡らない理由を知りたいバルドは、番兵にそれを聞く事にした。
それさえ聞ければ、目的は達成した事になる。
なんだったらもう、ここで帰っても良い。
しかしそんな思惑とは裏腹、番兵達はそろって、首を横に振った。
「我々にそれをあなたにお話しする権限は無い。 この道をまっすぐ行った突き当たりに『ギルド』がある。 そこでご確認いただきたい。」
「・・・・そうなんだ、ありがとう。」
なぜか騎士たちは、話してはくれなかった。
上司か誰かに、話してはならないだとか、言われているのだろうか?
まあ、冬が終わらない理由が聞けると言う場所は聞けたので、それで良しとしよう。
門を後にし、一歩、王都へと足を踏み出したバルドは、目の前の光景に言葉を失った。
そこには、実に殺風景な街が広がっていた。
家々は入り口を硬く閉ざし、カーテンを閉め切っている。
店も全て閉まり、どこも開いている気配は無い。
道行く人もまばらで、どの人も家路を急いでいるのか、早歩きだった。
街には生命の息吹が、ほとんど感じられなかった。
前に両親に連れられてきたときには、ここはこんなではなかった。
多くの人でごった返し、大変な賑わいを見せる、そんな街であったはずだ。
いま目の前に広がる景色に、その面影は垣間見えなかった。
「突き当たり・・・だったな?」
これもきっと、『冬』が終わらないのが原因だろう。
なぜこうまでなっても、冬が終わらないのか。
それを確かめなくてはならない。
俺はそのために、二日もかけてここまで来たのだ!
なぜか長くなりました。
次話以降、少々駆け足気味になるかも、しれません。




