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39話

 テスト開始が、一週間後に迫った夕方。


 あたしはいつものように、白雪さんと勉強会をしていた。


 テスト前だから気合が入ってるのは、白雪さんからも伝わってくる。


 白雪さんの教え方は最初の一回目でも十分すごかったけど、今はさらに分かるようになっていた。


 白雪さんは『間森さんの実力がついたからですよ』なんて言ってたけど、絶対に違う。


 一番は、白雪さんが色々工夫を重ねてくれたから。


 勉強の環境作りに時間管理だけじゃなくって、白雪さんが気をつけてくれていたのはあたしが分からなかったり間違ったりした理由。


 そこを本当そこまでやるのっていうくらい、一緒になって徹底的に一緒に考えてくれてつまづきの理由が分かる方法を考えてくれた。


 その時の教え方も、完全にあたし向けになっていた。


 白雪さんははっきりと言ってないけど、要点や話の流れだけじゃなくて話すスピードや、細かな言葉なんてとこまでが最初の頃とはすっかり変わってる。


 全部の行為が本当にあたしだけの特別だからなんだなって思うと嬉しいし、何よりそれだから結果が出てる。


 白雪さんは、本当にすごい。


 特別な相手ならどんなことでもって約束してくれたけど、ここまで言葉通りになんて普通はできない。


 今のあたしは、白雪さんの事ばっかり考えるようになっていた。


 これから人生で起きる嬉しいも不安も、みんなみんな白雪さんと共有したくなっていた。


 きっと一緒に喜んでくれて、一緒に色々考えてくれる。


 そんな相手を、絶対に手放したくなかった。


 だけど、それくらい大切だって思う相手が目の前に居るけど、どこかで一歩を踏み出せないでいた。


 だって、何か失敗して今の関係を壊すのが怖かったから。


 白雪さんは約束を、何が何でも守る人。


 どんなあたしでも受け入れてくれるって、約束してくれた人。


 だけど、あたしのお願いを本当にどこまで聞いてくれるのかは分からない。


 さすがに、本当になんでもってことはないし、あまりにも変だったらさすがに白雪さんでもダメなはず。


 一緒にいるっていうのもどこまで本当か分からないし、何かして壊れるくらいなら今のままの幸せみたいなのでも十分だって思う。


「お疲れ様です。最近の間森さん、いい感じですね。すごく集中してますし、飲み込みも速いです」


「うん、ありがとう」


 休憩のアラームが鳴ったので、あたしたちは手を止めてお互いに肩の力を抜いた。


「だけど、少し疲れてますか? ちょっと、表情が違いますね」


「うん。身体はいいんだけど、ちょっと心がね。不安があってさ」


 白雪さんに隠し事をあたしは極力止めるようにしているので、素直に今の状態を話す。


 隠していても白雪さんは気が付いちゃうような相手だから、なら自分から言った方がいいかなって思うし。


「あたし、本当に大人になれるかやっぱりわからないよ」


 それは、最近心の中で積もっていた想い。


 人になるための積み木をあたしが本当に積めているのか不安でしかたないって事だ。


 白雪さんはあたしの夢である大人になるって目標に向けて、いろいろやってくれている。


 あたしの迷いを受け入れてくれたことも、学校をサボらせてくれたことも。


 それだけじゃない。


 学校でのさりげない気づかいや、この勉強会だって白雪さんなりのあたしが大人になるための基礎作りなんだと思う。


 白雪さんは勉強だけじゃなくて、本当にいろいろな事をあたしに教えてくれた。


 大人の高さになるために、心の積み木を一緒に積もう。


 そう言ってくれた言葉を、あたしは疑いなく信じている。


 だからこそ、その教えてくれたことをあたしが生かしてないんじゃなかいかって不安で仕方ないんだ。


 白雪さんがいっくら積み方を教えてくれても、積むのはあたしなのに手が動いてないって思っちゃう。


 白雪さんが色々やってくれてるのに、あたしは子供のように何にもできてない。


 このままだと、本当に大人になれるのか分からなくなっていた。


 これだけ全てを賭けてくれる白雪さんの全てを裏切っちゃうかもしれないと思うと、あたしの心はかなり重くなっていた。


 そして、白雪さんにしか言えない本音が口から零れ落ちた。


「大人になれないんだったら……あたし、なんで生きてるかわからないよ。だって、大切な白雪さんのしてきたこと、無駄にしたくないし。大人になれないんだったら、全部無駄になっちゃう。それで最近、すっごく疲れてる……生きてるかもわかんないし生きててもどうなんだろうって」


 もう、あたしはわかんなかった。


 大切な白雪さんを裏切るのも嫌、クラスで大人じゃないあたしを偽るのも疲れてる。


 それが、あたしの心の底にある本音だった。


 でも、いくら凄くてもこの悩みを解決なんてできるはずもないけど、知っておいてほしいから漏らしてしまった。


「そうなんですね。生きている実感、それが間森さんには分からないんですね」


 白雪さんは、あたしの言葉に全く動揺もしてない。


 いつもと変わらない口調のまま、あたしにこう言ってくれた。


「だったら、あたしが教えてあげますよ。間森さんが、その言葉を本当に思ってるかどうかと、生きているかどうかを」

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