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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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100/100

第100話 それでも

北方同盟・前線都市ヴァルグリム。


朝。


光が、街を包んでいた。


歪みは――ほとんど見えない。


だが完全ではない。


空の端に、わずかな揺らぎが残っている。



アルカが観測器を見つめる。


「……安定しています」


カルディアが頷く。


「自律維持、継続中」


ミヒャエルが息を吐く。


「人が回してるな」


ラグスが笑う。


「いいじゃねぇか」



街の中。


人々が歩いている。


普通に。


だが少しだけ違う。


誰かがふらつけば、


誰かが支える。


それは特別な行動ではない。


“当たり前”になっている。



アルカが小さく言う。


「……残りましたね」


カルディアが答える。


「はい」


一拍。


「文化として」


ミヒャエルが言う。


「システムじゃなくなったな」


ラグスが笑う。


「最初からそれが狙いだろ」



アルトは少し離れた場所に立っている。


もう、何もしていない。


何もできない。



アルカが近づく。


「……本当に」


一拍。


「これでいいんですか」



アルトは街を見る。


人々。


迷いながらも、動く。


完全ではない。


助からないこともある。


それでも――


続いている。



アルトは答える。


「分からない」


アルカが少しだけ笑う。


「……ですよね」



カルディアが言う。


「正解は存在しません」


ミヒャエルが頷く。


「結果しか残らない」


ラグスが笑う。


「気にすんな」



アルトは空を見る。


歪みは、まだある。


だが――


もう手を出さない。



その時。


一人の少女が走っていく。


リシア。


誰かに手を伸ばす。


「大丈夫!」


支える。


戻る。


笑う。



アルトはそれを見る。


何も言わない。



少し離れた場所。


誰にも気づかれずに、


一人の男が立っている。


カイネス。


静かに見ている。


何も言わない。


ただ――観ている。



アルトはその気配に気づく。


だが振り返らない。



カイネスは小さく呟く。


「……続いている」


一拍。


「不完全なまま」


そして、消える。



アルトは一歩、歩き出す。


街の外へ。


もう必要とされていない場所へ。



アルカが振り返る。


「……行くんですか」


アルトは止まらない。


「役目は終わった」


沈黙。



ラグスが笑う。


「だな」


ミヒャエルが言う。


「ここからは人間の仕事だ」


カルディアが静かに言う。


「証明は完了しています」



アルカは少しだけ迷って、


そして言う。


「……またどこかで」


アルトは答えない。


だが、足は止まらない。



街の外。


空は広い。


歪みは、遠くに薄く残っている。



アルトは歩く。


ただ歩く。



振り返らない。



背後では、


誰かが誰かを支えている。


特別な力はない。


だが、確かに。



人は、不完全だ。


だから迷う。


だから失う。


だから――


選ぶ。



それでも。



ドクン。


鼓動が響く。


それはもう、


世界ではない。


人の中で鳴っている。



――それでも、人は続ける。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


この物語はもともと

「有能すぎるが故に追放された主人公が、辺境で無双してざまぁする」

という王道の爽快系としてスタートしました。


ですが書き進めるうちに、物語は少しずつ形を変えていきました。


最初は「評価されない才能」

次に「正しい制度とは何か」

そして「世界はどうやって成り立っているのか」


最終的には、


「人は世界を維持できるのか」


という問いにたどり着きました。


この物語の結論は、とてもシンプルです。


「人は不完全でも、選び続ける限り終わらない」


誰かが誰かに手を伸ばす。


それは特別な力ではなく、


ほんの少しの勇気と選択。


この物語が、


そんな一歩のきっかけになれば嬉しいです。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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