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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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79プレイ目 アンセム

 召喚獣探しの旅にちょっと行こうかな、と思いながらも焼き芋の在庫がまだ少ないのでアンセムにいた(もみじ)は、冒険者組合(ギルド)で受付嬢に声をかけられた。


「椛さん、今よろしいでしょうか」

「大丈夫だよー。何か依頼?」

「クエストになるかもしれません。北の森で幻の枇杷(びわ)を発見されたのは椛さんですよね」

「え、あれって幻の果物だったの…?」


 自分で食べるために売らなかったから知らなかったが、自生地の情報が喪失していた果物だったそうだ。

 神殿にも苗は渡したがあちらはそんな事情まで把握していなかったので、今ごろ組合が気付いたそうだ。


「すでに畑で育てて増やし始めているとのことでそこまで重要性はありませんが、出来ることなら場所を記録しておきたいということになりました」

「場所が危ないからって止めた連中も、お前が好んでうろついてるって聞いて考えを変えたんだよ」


 隣の買い取り窓口から補足説明が入る。

 だいたい自業自得だった。


「でもあそこ、レベル90超えの特にヤバい魔物がうろついてるよ。奴がいない時なら採れるけど、10回中9回は奴がいた」

「縄張りなんだろうな…」

「それも記録通りですね…」


 場所の記録は失ったが、枇杷の自生地の情報が全て消えた訳ではないらしい。

 むしろ近付けない理由ははっきりしていたが、そのせいで確認しに行く人材がいなくて場所が分からなくなったようだ。


 マップの機能は便利だが、アウトプットができないせいでこういう事故が起きる。

 下手な相手に教えられない情報だったからなおさらだろう。


「場所は行けば分かるけど、マップにマークしてなかったから…道案内するしかない?」

「現地の確認もしたいとのことなので、お願いできれば助かります。同行するのはランクAの冒険者チーム『絶賛邁進』になります」

「あ、闘技場の上位チームじゃん!」


 勇往じゃないんだな、と思ったのでなんとなく覚えていたチーム名である。

 ビミョーな違和感があると引っかかるアレだ。


「あいつら、そんなに活躍してたのか。アンセム出身の冒険者たちなんだよ」

「わたしが見た時はフルパーティ戦の20位前後だったけど、強かったよ」


 20位と言っても中位をうろつく椛から見れば遥かに格上である。メイン会場の常連だった。


 買い取り窓口のおっさんは知り合いの名声に嬉しそうにしている。冒険者登録した頃からの知り合いらしい。

 今回はその縁で依頼する予定だそうだ。


 すでに了承は得ていたが、椛の返事待ちだったというだけだ。






『絶賛邁進』チームは男3人に女3人の、(ジョブ)以外もバランスのいいメンバーになっていた。

 年齢は20代後半だろうが、女性がいるのに聞いてはいけない。男たちが無頓着に「幼馴染なんだ」「同い年か1つ2つ違うだけ」と言っていようと、迂闊に聞いてはいけない。


 その1つ2つが大問題になることもある。


「幻の枇杷の話は聞いたことがあって、いつか探したいって思ってたのよ」

「それがしばらくしたら街で買えるようになる予定だって言うんだもの。びっくりしたわ」


 もう1つ聞いてはいけないことがある。

 チーム内恋愛についてだ。


 明らかにカップルが1組あって、女性2人がそのカップルを意図的に無視して歩いているのである。

 絶対修羅場になる予感しかしないので、気付かない振りをつらぬくのだ。


 男2人はやっぱり無頓着なので、いつツツくか分からない怖さがある。


 椛はクエストを受けて案内しながら、なんで人間関係が拗れてそうな時に同行するハメになったのかなと遠い目をしたくなっていた。

 すでに森に入っているので、そんな気を抜く余裕はないのだが。


 お前らも仕事中は控えろよと言ってやりたい。

 レベル90オーバーの冒険者チームでなければ言ってやったのに、さすがにレベルを聞いたら言えなかった。


「あ、この辺からレベル70くらいの魔物が出るよ。群れてるところは見たことないけど」

「名前は分かるか?」

「資料室で見たから分かる」


 レベル70なら余裕だろうが、その油断が命取りになることもあるので、このチームは椛が話を変えると真面目に相談していた。

 組合の資料室で下調べも済ませていたようで、ほぼ確認作業だったが。


 こういう慎重さがないと冒険者NPCたちは早死(はやじに)してしまうだろう。


 少し進んだところで魔物を発見したが、こちらから仕掛けない限り戦闘の必要はなさそうだったので、気配を殺してすり抜ける。


 椛がスニークミッションをしているルートなので、魔物には出会うが慎重に動けばバトルは発生させずに進めた。


「それで斥候職じゃないってのも不思議だな…」

「ここはだいたいルートを覚えてるだけだよ」


 椛だって何回か失敗してルートを割り出したのだ。魔物に気付かれない距離を保ってすり抜けることが可能だっただけである。


 それでも必ず同じ場所に魔物がいる訳ではないため、高確率で進めるというだけだ。


 今日は運が良い日だったようで、そのまま目的地についた。

 でもヤバい魔物はうろついている日だった。


「アレか、資料室で見た絵より凶悪だな…」

「いないと良いなと思ったけど、そこまで都合良くはいかないよな」


 レベル的には戦えるだろうが、そんな危険を冒すクエストではない。枇杷の木を目視で確認して、マップにも現在地をマークする。

 このマップ情報を組合に届けるのが今回の目的なのである。


 椛だけでも出来ることとは言え、発見者以外の証言も欲しいという意味もある。


「カメラあるけど、無音で撮れるはずだけど、気付かれたらヤバいしって封印してたんだよ。撮る?」

「…写真も欲しいな」

「でも察知されたら大変だし」

「今だって、任務完了ですぐに引き返したい気分なんだけど」


 気付かれないように大分遠くから(うかが)っているのだが、それでも逃げたくてそわそわしている。

 そっと相談して、全員一致で撮影はなしにしておいた。


 帰りは1回だけ戦闘しないといけない状況にはなったが、『絶賛邁進』たちからすればレベル20も格下の魔物が1体だけだ。

 バトルになって多少の音は立ったが、その間は周囲を窺っていた椛の視界に他の魔物は入らなかったし、気付いて寄って来る魔物もいなかった。


 こうして比較的安全にクエストを完了した。

 たいした事はしていない認識の椛だったが、危険手当がついたので報酬はかなりおいしかったものだ。






 椛は『絶賛邁進』のメンバーたちとフレンド登録のオマケもついて、クランのメンバーたちに羨ましがられた。

 やはり闘技場の上位に入るチームはみんな人気があるらしい。


「NPCを便利に使えるって勘違いしてる連中にバレないようにしろよ」

「高レベルの冒険者NPCを利用したがってる奴がいるらしいからな」

「悪評が悪評を呼んでも身にしみなかったの?」

「どうだろう。難を逃れたから甘く見てるタイプもいるし」


 スニークミッションのゴール(枇杷の木)のマップデータくれ、とアンセムに来ていたクランのメンバーたちは首をかしげる。詳しい訳ではないようだ。


 椛だって詳しく知りたい訳ではない。


「困ってたプレイヤーを助けてくれたNPCがいた、とか言ってたぞ」

「クエストに同行してくれたとかって」

「いたいけな女の子だったってオチでしょ」


 冒険者NPCたちだって、可愛い女の子には弱いタイプもいる。

 たぶんランクSの某団長とか。


 あのチョロイン気質で尽くす属性まで付いてそうな団長は元気だろうか。


「妖艶な美女かもしれない」

「そんなプレイヤーがいたか?」

「見たことないな」


 アバターが美女でも、ゲーマーに妖艶な雰囲気を出すのは難しいだろう。

 ゲーマーに対する偏見まじりにそう思った。


 大作ゲームなら付き合いでやってるだけの陽キャだっているし、妖艶なプレイヤーもいるかもしれない。

 でもここにはいないだろうなと思う椛だった。






枇杷は本来レベル90以上になってから発見される想定だったに違いないのですが、畑で伐採しながら苗を増やしてもランクが落ちないタイプです

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