51プレイ目 ルルイエ
予測変換に出るのでルルイエについて調べたのですが、後で知ったくらいなので名前に特に意味はありません
ミュウテラ国でやりたかった事は片付いたので、劇も楽しんだし、椛は旅立つことにした。
有名俳優の非売品の写真集を狙うファンの群れが怖かったせいではない。
怪人くんの心を折ったかもしれない件も関係ない。
ということにして、街を出た。ほとぼりが冷めるまで再訪することはないだろう。
騎獣の月牙と召喚獣の流星を呼び出して、モフってから出発した。愛狼たちとのドライブは、いつでも楽しいものだった。
行き先は海洋大国とも呼ばれるブローゼスト王国だが、ナルメア王国、スノレリア王国を経由するので少々遠い。
途中で船に乗って海路を進み、王都ブロムに寄港したが、目的地はさらに海の向こうの島である。
カジノと闘技場のある娯楽の島ルルイエ。
行きたい、と気合いを入れないと向かうのはめんどくさいなと椛は思った。
しかし長旅の甲斐がある場所には違いない。
「わたしが闘技場に来たー!」
そうして数日かけてルルイエ島に到着した。
ここにいるはずのフレンドたちにメッセージを送ったら、すぐに頼闇から返信があった。挑戦する前に試合を見ておいたら?という、もっともな意見だった。
頼闇も観戦中だというので、観客席で落ち合うことにした。
闘技場には1番大きいメインの会場と、小さい会場が数カ所あるそうだ。客の目当てはメイン会場なので、ここで試合が出来るようになるにはそれなりに勝ち星を貯めなくてはならなかった。
椛もまずはメイン会場の見物をするため、チケットを買って入った。
思った以上に盛況で、つい試合を見ながら歩いたが、ほどなく頼闇とその仲間たちと合流できた。
「あれ以来、ずっとここにいるの?」
「そんなことないわよ。サンダー・エレメントと契約するためにアルヴィーナに戻り、ハトロワで水中戦のチュートリアルを受けてレベル上げしたり」
「でも他には行ってないから、ここにいるのが1番長いなあ」
「闘技場でちょっと稼いではカジノですって…中毒性高いぜ」
「めっちゃ駄目な人っぽい話!」
近況を語り合うはずが、負のスパイラルに囚われた人の告白じみている。
好きなことをして遊べばいいと思っているが、他にやりたいこと、面白いこと沢山あるよと言いたい。
でも楽しいなら仕方がないのだ。
説得がめんどくさい訳ではないのだ。
「戦ってるのはNPCだよね」
「メイン会場でプレイヤーなんて滅多に見ないわよ」
「攻略組はこういうところのランキングはスルー安定派なのかな」
「ここ、レベルは上がらないもの。ドツボにハマると最前線から脱落すると思ったんじゃない?」
「まあ、本気で取り組んでもNPCが強すぎて、ランキングの上位とか無理ゲーだけど」
「プレイヤーに勝たせる気ないわよねえ。特に覇王」
覇王は闘技場のトップが与えられる称号だ。
ランクSの猛者だと聞いている。
「それにしても強い。覇王はあれの上を行くのかー。試合はいつ見れるかな」
「予定表は入口で確認できるよ。受付嬢に聞けば覇王の予定だけ教えてもらえるし」
「なるほど。あとで聞いておこう」
「でもめっちゃ混むから、立ち見を覚悟しておけよ」
覇王の試合は満席を越えて立ち見客すら弾き出されそうな混雑になるそうだ。
そんなに、と椛は想像しきれなくて震える。
ますます楽しみである。
そうしてしばらく見て過ごしたが、メイン会場に出ている選手はひとり残らず猛者だった。
椛もランキングを上げて、こちらでバトル三昧できるようになりたくなったものだ。
観戦のあとは、椛はもうひとつの施設を見物することにした。
頼闇たちが行くというので付いて来ただけだが。
「あ、ちょっと待って。ミュウテラ国で手に入れた変身を披露してしんぜよう」
「魔法少女にでもなったのか?」
「マダムにプロデュースしてもらった」
カジノの入口近くで、椛はせっかくだからとドレスアップしてみせた。廊下の隅でコソッと換えただけだが、大劇場に観劇に行った時のものだ。
そのためカジノにしてはお上品かもしれないが、お金持ちの令嬢だって遊びに来ているので浮いて見えるほどではない。
「どやっ」
「化けたっ」
「別人に化けたっ!?」
「女は化粧でいくらでも化けるものなのよん」
予想通りに驚かせられたので、椛は満足だ。
だが頼闇の反応は予測を超えていた。
「アタシ、こういうギャップに弱いのよー!やーん、可愛いー!おすまし椛たん可愛いー!」
「椛たん…」
「いや、正気に返れ」
「バニーちゃんに会いに来たんだろう」
「元の恰好に戻すか…」
椛は秒で冒険者スタイルに戻った。
なんか残念だ。
崩れ落ちた頼闇をどうにか引きずって会場に入った。入場料代わりにカジノで使うコインを購入した。
受付で一応の説明を受け、景品のリストを確認する。目玉商品以外は聞いていなかったので、ちょっと面白く眺めてしまった。
「家具もあるんだ。まあ、家を建てるまで用はないけど」
「家はご用意しておりませんでしたね」
「武器や防具も充実してるねえ」
でもいらないな、と思うラインナップである。弱くはないが、椛の欲しい性能ではない。
「アクセサリーはスキル付きか。お店で見たことないスキルばっかり」
「レアなスキルを発現させるにはレアな素材が必要になりますからね」
受付のナイスミドルなおじ様っぽい案内係が、さも当然と応える。ここの景品は全てレアですと言いたいのだろう。
「闘技場のポイントと合算とか互換性とかあるの?」
「ございますが、少々レートが下がりますことはご了承下さい」
闘技場メインになる予定の椛でもカジノのポイントが無駄にならないのなら、多少の減少は誤差のようなものだ。
それならカジノでもちょっと遊んでみようかなと思えたのだった。
通い慣れている頼闇たちは近くで先に遊んでいるので、椛もそちらに合流した。今はルーレットをやっていたようだ。
「おおー、みんな言うより手堅い」
「こんなの2択以外が当たるわけないし」
「スロットなんて高速でコインを呑み込む怪物だからな」
「ここでちょっとコイン増やして、ポーカーとかやって終わるのさ」
終わるとはコインが尽きて遊べなくなるの意だった。
そのルーチンはハマるほど面白いのかどうか。
「幸運の怪盗ステッキとか持ってみる?」
「あら、クエストで納品しなかったの?」
「旅立ちの朝に別れのバトルをしたら、餞別に2本目くれた。あいつはこの世界で3番目にダチになったエリアボスさ」
怪鳥くんにはがっかりだったが、バトルそのものは楽しかったので水に流しておいた。
「それ幸運が上がるの?」
「ラックなんてステータスないだろ」
「マスクデータにはありそうだけど」
「いや、エリアボスのレアドロってそこそこレアだし、持ってるだけでご利益ありそうって話」
椛に所有権を残したまま、第三者にも触れるように設定を変えて差し出す。盗難防止でもあり、商品の売買をスムーズにするためのものである。
ひとりが手に取って、本当に六角だと感心したり眺め回してスイングしたりしていた。
「良く考えたらエリアボスのレア武器なんて、初めて手にしたな!?」
「レア物というだけでご利益ありそうなの、なんか分かって来た」
「気分の問題じゃなーい?でもアタシに似合うと思わなーい?」
「思わねえよ」
「持ちたいだけだろ」
騒いでいたらNPCたちにまで注目されていたが、ゲームの邪魔はしていないので、スタッフが注意しに飛んで来ることはなかった。
怪盗ステッキのご利益はともかく、椛はビギナーズラックか小当り程度で勝ちが多く、コインがちょっと増えた。
ルーレットも運が悪いと減るばかりの日もあるらしい。
「でも連続10回はずした日は、今日は駄目だって諦めがついたよな」
「あれ、わざとはずしてるのって聞きたくなったよね」
「笑わせてもらったぜ」
椛もぜひ目撃したかった。
その後はポーカー以外にもカードゲームがあったのでいくつか試してみたが、みんな仲良くコインを使い果たして終わった。
ここでコインを稼ぐのは現実的じゃないな、と良く分かったものだ。
もちろんバニーガールもいましたが、椛の琴線に触れなかったのでスルーされました
このカジノにいるバニーガールは本物の兎獣人で、皆様の思い描くバニーガールの衣装を着ています




