249プレイ目 迷宮都市バロワ
迷宮都市でイベントのプレゼントボックスを集めていたプレイヤーは少数派だったようで、こちらではイベント前半が終了しても静かなものだった。
移住者の街ゼロイスの自宅にログインしたら、西の森に篭っていた連中なのか、多くのプレイヤーが嘆いていた。
あと変なプレイヤーが椛の家の前にいて、「ここはワタクシにこそ相応しいわ!今すぐ明け渡しなさい!」とか言うので通報しておいた。
その女プレイヤーの腰巾着っぽい連中も無礼だのなんだのと意味の分からないことを喚いていたので、同じく通報しておいた。
初期装備っぽかったので、三陣で増えた連中なのかもしれない。
ああいうのは増やさないで欲しいものだ。
「後半の復刻アイテムは…特に増えてないか」
キャットテイルのバリエーションが増えるのでは(願望)という意見があったので椛もちょっと期待していたが、こちらは増えていなかった。
変なプレイヤーではなく、こちらを増やして欲しかったものだ。
「主どんフィギュアもなかったし、銀狼や狼系騎獣もないし…」
犬派にはちょっと寂しいイベントだった。
次回に期待するしかない。
「ま、ぬいぐるみは去年コンプしたから、ダンジョン攻略に集中しよう!」
シークレット枠なんて狙ってもツラいだけである。
数があれば嬉しいが、ダンジョン攻略で手に入る分だけでも充分だろう。去年も集めたから。
追加素材集めをしたり、マップ埋めをしたり、分岐ルートを移動してどんな魔物がいるのか調べたり、ボスと戦って素材の性能を生産職たちに確認したり。
飽きて来たら別のことをしていたので、進んでいるようでそんなこともなかった。
でも追加素材集めはそろそろ終わりそうである。
終わっても満足するまでダンジョンの調査を続ける予定だった。
第二第三サーバーでも今はイベントのアイテム集めがメインらしく、シナリオイベントを進めている様子はなかった。
来年復刻するかもしれないし、1度復刻したものは再復刻があるか不明だし。
三陣は開始と同時にイベント開催なので忙しいだろうが、魔物を倒したり生産活動をしたりすればプレゼントボックスが手に入る仕様なので、適当に進めているだけで勝手に集まるのだ。
負担になるイベント形式ではない。
ただ、出現率の低いレアアイテムを狙うと手に入れるまでストレスを感じるだけだ。
「ふむ…もふもふさんなんてどこにいるのか知らんな…」
ダンジョンのボス部屋前のセーフティエリアで休みながら掲示板を眺めていた椛は、他のサーバーの噂話や新規勢の書き込みの初々しさを見ていたのだが、何故かあちこちで二大アイドル様の夢の共演動画が次の新作だと書かれていたのだ。
妄想と現実は区別して欲しいものである。
それに今はミーティアぬいぐるみに目の色を変えているプレイヤーが多いのだ。予想以上に。
イベントが終わってもしばらくは手に入れられなかった人々が荒れてそうだし、アイドル様なんて出せない。
見て喜ぶだけの奴は、それで椛が睨まれる事を考慮していないのだろう。無責任に「いつ出すの!」「早く早く!!」と書き込んでいるのを見ていたら、腹が立って来た。
こんなもの全スルーじゃ!と決めた椛だった。わざわざ言わないけど。
翌日、また変な女プレイヤーに「家を明け渡せ」「その白銀のリボンを寄越せ」とか言われたので、運営に通報しておいた。
良く見たら姫プレイの集団のようだったが、たぶん近々垢BANになるんじゃないかなと思った。
椛の所に来るたびに通報されるだろうから。
気付かない訳ないのにな、警告をなんだと思ってるんだろうな、と思う。
他のゲームをした経験のないキッズが甘く考えているのだろうか。13歳で姫プレイとか濃いなあ、とか思ったが。
通報はしたのでさっさとクランハウス(建設予定地)の転移プレートで迷宮都市に向かった。こちらにはまだ新規は到達していないはずだ。
迷宮都市の転移門はダンジョンの入口前にあるので、すぐにダンジョンに入れる。自宅に転移プレートがあったらかなり捗りそうだが、椛はその前に食事がしたい。
今日は外食の気分なのだ。
ダンジョンではなく商店街に向かったのだった。
喫茶店でトーストにハムエッグにサラダにコーヒーという、いかにもなセットを食べてデザートのケーキを楽しんでいた。
桃のケーキは白と淡いピンクで見た目も可愛い。
迷宮都市なのに、なんで若い女性が喜びそうな可愛い店があるのだろう。女性冒険者がターゲットだと思うが、比率は少ない気がする。
でも可愛くて美味しいので問題なし!
と、椛はご機嫌で食べていた。
店内にいる客は8割は女性で、残りはデート中っぽい連れの男性である。
デートスポットなのは分かる。
男たちは居心地が悪そうだが、独り身の女性客たちが睨んでいるのは男連れの女性のほうである。
気にしないでいられる胆力よ…
他人事なので椛は呆れるだけだが、店内の空気が微妙なのは仕方がない。
美味しいから許すけど、食べ終えたらさっさと店を出たい。内装も可愛いから、のんびり過ごせたら最高だった…
そんな訳でケーキを食べ終えた椛は店を出て、ロウガイにメッセージを送った。
[デートスポットに最適だけど、デートで入ったらいけない地雷スポットだった。君なら楽しめるかなって思いました。まる]
ロウガイならあの店の雰囲気というか、人間模様を眺めてニヤニヤ嗤って過ごせそうだ。
しかし程なくして返って来たのは、否定の言葉だった。
[男が入るところではないのじゃ。そんな鬼女たちの戦場…]
そうか、アレは鬼女か…椛は被害を受けていないので失念していたが、他の女たちに睨まれて勝ち誇れるのは鬼女の特徴のひとつである。
女性冒険者たちはNPCっぽかったので、そんな所はリアルに再現しなくて良かったのでは…そういえば『絶賛邁進』チームの女性たちも…
王都ブロムの鬼女化とは根本的に違うのだが、女性社会では良くある光景だった。
冒険者組合の酒場で冒険者NPCたち(野郎オンリー)に可愛い店での話をすると「怖い話すんな!」「デートで行きたい店だったのに!」と怒られた。
迷宮都市に来ているのはランクAかBの冒険者で、他の街にいる連中とはちょっと雰囲気も違う。
でも男だけでつるんでいる姿から察せるタイプが多い。
恋人のいる冒険者は酒場でぐだぐだしてないから…
「行くなら他の店が良いよ…逆に男たちに睨まれる店とか」
「女の子って男ばっかりの店って怖がらねえの?」
「普通に男女両方が入る店で良いだろ」
「でもあの可愛い見た目がデートっぽくて憧れるんだろ…」
「それな」
そのデートのイメージは椛も分かる。
そしてお店の雰囲気に合う、可愛いガールフレンドを想定していることも。
理想と現実のギャップだった。
「あ、そうだ。品質10のビール…」
「な!?そんな物があるのか!?」
「品質10、だと…!?」
「いや、確認はしてないけど、移住者の料理人なら作れるだろうから…」
冒険者たちが飲んでいるのを見て思い出しただけなのだが、酒好きのドワーフでもないのに凄い食いつきっぷりだった。
やはり酒呑みなら聞き逃せないらしい。
迷宮都市の次は酒造クランのいる街に行かねば、と決めたものだ。
□この街は女性客はほぼ全て女冒険者なので、デートしているカップルには敏感…というイメージです




