203プレイ目 カナリア
キノコとタケノコが合体して「きたきたのこのこの山里」になってしまうらしい…戦争が終わるのか…!?
転移代はどこからか補充されていたようなので、イベントだからだろうと椛は思うことにした。
アンセムの神殿から王都カナリアの神殿へ転移門で戻った椛は、落ち着ける場所を求めて商店街へ向かった。
喫茶店やカフェは何軒かお気に入りが出来たので、今回は近い所にあるカフェにした。
喫茶店とカフェって何が違うの?と思うかもしれないが、椛は店名で区別しているだけだ。お店側の主張は尊重していきたい。
カフェでカフェオレを注文し、メールとメッセージの確認をする。
「ふむふむ…イベントに失敗して再挑戦もできなくて詰んだプレイヤーが続出…下手に触るなと話題だから気をつけろ…」
どこで失敗したんだろう…
椛は聖女様相手に語ったばかりなのでイベントの流れは覚えているが、おふざけを入れても進むイベントだった。
むしろ第六天魔王の下僕を名乗るのが成功の秘訣…いや、絶対にない。
掲示板を見てみれば、だいたいの失敗要素は貴族の老人に逃げられたことらしい。
逃がすと騎士団が敵として現われて、こちらは負けイベ確定くらいに強いそうだ。あんな性根の腐った連中なのに…
無事に老人をぶちのめしても、今度は王太子が見つからないらしい。街の中央にいたのに。
いや、あれは耳の良い天狐がいたから見つかっただけだ。椛も1人だったら明後日の方向を探して、時間ないからと諦めて宿屋に向かった可能性が高い。
王太子は制限時間内に発見しないと呪いに支配されて発狂し、バッドエンド確定らしい。
「これは、プレイヤーたちに情報を持ち寄らせて正解にたどり着かせる設計…?」
我先にと挑んだ連中が怒り狂う設計である。
全プレイヤーにやらせるなら最後までやらせろよと思う。喚かれてうるさいから。
椛はまだ失敗していないが、無駄に騎士団を待って結局来なかったあの時間で邪神の像を探しておけば、イベントの進行がスムーズだっただろう。
攻略情報を見ながらやるならベストというだけなので、手探りで進めているならこれも充分な展開だと思うけど。
どうしようかなと少し悩む。
椛の進め方をシラベに教えるべきか否か。
[カナリアのイベントの正解ルートを知りたいですか]
[失敗してなかったの?]
[というか、王太子が神殿前広場にいるって分かっていれば失敗しないんじゃないの?]
シラベにチャットを送ってから気付いた。
王太子が発狂してバッドエンドになったという人たちも、王太子は神殿前広場にいたと書き込んでいる。
[もちろん最速で行って、倒すところまでは行ったらしいよ。その後が分からなくて結局詰んだって]
[ああ…そこは適当に「王太子殿下の心が呪いに喰われる前に、聖女様のもとにお連れする!」キリッとかやっておけば、NPCたちが快く送り出してくれるよ]
[…ロールプレイ苦手なんだよね…]
アドリブが苦手というか、ライブ感が足りないというか、テンパって何も思いつかないタイプにはキツイらしい。
椛くらいその場のノリでやったほうが上手く行くイベントだったのだろう。
[ちなみに第六天魔王の下僕を名乗ったら面白いくらいに信じちゃって、異世界の魔王だと…!?って特殊な反応が見られたよ]
[なんの意味があるの?]
[何もない]
シラベは全く乗って来なかったが、ロウガイにネタバレしてもいいか尋ねてから伝えたらかなりウケたようだった。
何か独自設定でこのイベントを進めてくれそうだったものだ。
貴族街から暗黒街に下りるルートは使えないので、椛はゴーストタウンのほうヘ来てみた。
すでにイベントのエリアに切り替わったのか、壁が壊れていたのですぐに入れた。
今日も天狐を召喚して、邪神の遣いについて聞きながら進む。どこかで買った串焼きと串揚げを渡してやったので、両手で持ってご機嫌で話した。
「邪神の遣いは呪いの出口みたいなものにゃ。封印された邪神から呪いの力を引き出すために作った物だと思うにゃ」
「ああ、神殺しの塔で本体は封印されてるんだった」
「邪神をかたどった像を使うから、邪神の像とも呼ぶにゃ。ただ像を立てると移動させることが出来なくなるらしいにゃ。大地を通して邪神の力を受け取るためだと聞くにゃ」
動かすと邪神とのパスが切れて、せっかく強まった繋がりがリセットされてしまうそうだ。
「とりあえず、見つけたら動かせば初期化できるってこと?」
「開き直って地面に深く刺して、動かないようにしていることもあるにゃ」
「なるほどな」
簡単に動かないようにしてしまうほうが安全だろう。
「じゃあ動かせなかったらどうするの?」
「壊すしかないにゃ。その神聖な力の武器でもないと効果はないにゃ。聖女ならきっと一撃でヤれるにゃ!」
「まあ、報告するところまでが仕事だからね」
確認だけで良いと言われたが、椛1人では対処できないからだろう。
「それならカースドラゴンって」
「邪神の遣いが最大まで育ってしまった状態にゃ。史上最大なだけで、もっと悪化する可能性もあるにゃ」
「それが現われてしまったのが、西の大陸の熱砂の大砂漠?」
「そうにゃ。あれも《七つの災厄》に数えられているけど、あんなものを作った邪神教団が元凶にゃ」
最終的に邪神が復活するのではないだろうか。そんなポテンシャルを感じる話だ。
天狐が甘い物も欲しいにゃと言い出したので、キャンディの小袋を渡してやった。
いろいろ情報を聞けたから特別だ。
邪神の遣いの話が一段落つく頃に、前回の廊下の突き当たり近くの部屋に到着した。
扉は開かれていた。
中に黒いローブの邪教徒たちがいたので軽く倒して、室内を物色する。
「奥には何もないし、隠し扉とかありそうなんだけど」
「見つかって壊されたら大変だから、普通は隠すにゃ」
手前の部屋と奥の部屋を見て回る。
黒ローブを締め上げて吐かすか検討していたら、壁の1部が動いた。
そこから顔を覗かせる黒いローブの男。
ソッコーで倒して隠し扉の中を覗いてみた。
そこは黒いモヤモヤがモヤモヤしている部屋だった。
「見えない…」
「だいぶ酷いにゃ…」
椛が神聖な双剣でモヤを散らして、どうにか邪神の像を確認した。
天狐もこれがどのくらい邪神の力を溜めこんでいるのか分からないそうだ。
九尾の妖狐は邪悪だったが、邪神とは無関係だったのだ。詳しく知らなくても仕方がない。
「聖女様を王都に一時的にでも呼ぶ方法…」
「魔王も邪神も気にしない王が聖女を呼ぶ方法かにゃ?」
「狐妖術で幻とか作れないの?」
「そなた、いい加減妾のステータスをじっくり見るにゃ!そんなものないにゃ!」
報告して終わりだと不味い気がする。
椛はううーんと考え込んだ。今日は3分くらい悩んで、思いついた。
「定番の、狼が来たぞー!作戦で行こう」
「どこの狼にゃ?森の主にゃ?」
「…主どんが王都に現われたら、被害甚大すぎない…?」
主どんMK=Ⅱだったら王都壊滅な気がする。
椛の想像の中にしかいない存在だが。
「ううん、狼は喩えだから。王が恐れ慄くものなら何でもいいの」
「どうやって呼ぶにゃ?」
「この街の人たち、第六天魔王とか言ったら簡単に信じたじゃない…」
「つまり居もしない存在が来ると吹き込むのにゃ?」
「我ら移住者の世界に終焉をもたらした奴が来るー!って触れ回るのだ」
「タチが悪いにゃ…!」
引っかかってくれたら儲けものだ。
きっとこの失敗を糧に誰かがクリアしてくれるだろう。
他の手段が思いつかなかった椛は、そう思った。
□カースドラゴンの話はこの段階で聞く必要のない情報です(特殊ルート特典)(二陣の失敗がなかったら知られていなかったので)
□本来は西の大陸の砂漠周辺で情報収集をしていると発見できる話です
□エイプリルフールは嘘みたいな本当の話をして、嘘をつかずに騙すのが1番楽しいのじゃ!とどこかの愉悦部の人が言ってました
(調べたら何年も前からあるネタだったので、戦争終結は難しいようですね)




