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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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172プレイ目 マリンシア

 頼闇(らいあん)と別れた(もみじ)は、クラビスの街で宿も探さずに船に乗った。

 ログアウトしている間に次の街まで運んでくれる船である。


 ガーネティ湾から外海に出て、古サマリータ王国の港街に寄港しながら東へ向かう。

 古サマリータ王国の北側半分は熱砂の大砂漠と呼ばれていて、氷の平原の吹雪より地獄と有名だ。


 あれより酷いってどんだけだよ、と椛には想像もつかない。本当なら砂漠になど行きたくなかった。

 しかし砂漠で入手するスキルが必要なのだ。入手しないと入れない場所があるので。


 そのスキルが得られる場所が、古サマリータ王国の北東の端の街マリンシアだ。港街だが街の北側はほぼ大砂漠に接している。

 南側は枯れた荒野がしばらく続くが、やがて緑豊かな草原に変わって行き、森や山や自然の多い国土が広がっていた。


 大砂漠の北側は鬱蒼としたエルフの国の森になっているため、なんでここだけ砂漠なの?と聞きたい地形だった。


 地形すらイベントのフラグに思える。


「不自然だと思うのはゲーム脳なのかな…」


 ログインしてもまだ街に着いていなかったので、椛は船の甲板から陸地を眺めてつぶやく。海が青く、左手側の陸地は緑色だ。

 けれど近づいて来たマリンシアの街は砂色の空を背負っていた。


「ねえねえ、お兄さん、空が砂色だよ」

「大砂漠の砂嵐だな。街までは来ないから、風向きで砂っぽいこともあるけど大丈夫」

「砂嵐かー、吹雪よりツライやつかー」

「砂よけを忘れると大変らしいな。あと特に砂に足を取られて歩きにくいって冒険者たちが言ってたな」


 船乗りのお兄さんは砂漠に入ったことはないそうだ。あんなところに行くのは冒険者か学者くらいで、海の男には用のない場所である。


 椛もちょっぴり海の女になりたい気分になった。水中戦も難しいが、砂漠よりマシに思えたものだ。






 マリンシアの港から街に入り、椛は賑わう市場や商店街を通って中央の聖堂まで来た。

 確かに街の中の空気は問題なく、真上の空は青い。北を見ると砂色というか、船から見たのと違って砂のカーテンに思えたが。


 転移(ゲート)に登録を済ませた椛は、近くにいた導師に尋ねた。


「あの砂嵐って、いつまで続くんですかね」

「時々おさまるくらいで、ほぼあの状態ですよ」

「やっぱり、1日1時間くらいとか、そんな易しい話はなかった…!」


 氷の平原もほぼ吹雪いていたのだ。砂漠がそれより易しいはずもない。


 がっかりしながらも導師にお礼を言って、冒険者組合(ギルド)に向かう。この街に向かったクランのメンバーは多かったが、きっと目的を果たしたら別の街に移動しただろう。


 椛もあんまり滞在したいと思えない。砂漠以外にも行ける場所はあるはずだが、なんだか気が乗らない。


 たぶん砂嵐のせいだろうが、空気が悪い気がして息苦しく感じる。


 すっかり次の街に行くことを考えながら冒険者組合に入ると、もういないと思っていたクラメンのタグがいた。


「あれー、まだいたの?」

「サボテンが欲しくて…」

「採取が難しいの?」

「……あ、掲示板見てないのか。サボテンの姿の幻獣だよ」


 確かに見ていなかったので椛は掲示板をチェックしてみた。サボテンで検索したらすぐに分かった。


「本当にサボテンだ。【砂漠の緑】…雪の子と同じレベルのネーミングセンス…」

「他に名付けようがなかったのかって種族名だよな」


 クラメンの1人が偶然見つけたらしい。たぶん雪の子と同じで、エリア内を移動しているタイプと推測されていた。


「……タグ、苦難の道を…」

「動きが面白いんだよ!なんかクセになる可愛さで!」


 サボテンの可愛さは椛には理解しがたいが、もう一度掲示板を見直す。


「あれ、召喚士のわたしも苦難の道を行かないと駄目なのでは…」

「お、一緒に探すか?群れてるらしいから取り合いにはならないぞ」

「雪の子よりマシかな。どうかな」

「通り魔のレア物センサーならきっと見つかる!」

「そんなセンサーねえわ。クリスマスの椅子が出ないの見て笑ってたくせに!」

「あれは30箱越えても出なかったからだろ」


 文句を言いつつ一緒に探すことにした。

 だがその前に受付嬢に冒険者カードを提示して、防熱スキルについて聞いた。


「まずこちらは防暑スキルの上位互換となっていることをご承知下さい。街で買えるものは防暑スキルになります」

「そういえば、街の中が他より暑いかも?」

「街の中でも効果はありますが、装備しなくても過ごせる程度ですね。街の北に向かうとどんどんと暑さが上昇するので、どちらかのスキルが必須になります」


 防暑スキルは暑さを防ぐが、防熱スキルはさらに熱気を防ぐという。


「暑くはなくても焼けるように痛いのが熱気だそうです」

「暑いを通り越して痛いんだ…」

「砂漠の入口ならまだ防暑でも耐えられますが、火山などに行くなら防熱スキルが必須です。所持していることを証明しないと立ち入り許可が出ないそうですよ」


 なんで火山に行くのに砂漠で獲得クエストが起きるのかと思わなくもないが、砂漠体験させたかったのだろう。

 必須クエストでもなければ砂漠なんて入る物好きは少ない。


 クエストの内容は指定されたボスの討伐で、ボスの確定ドロップ品が防熱スキルの素材になるそうだ。

 ただし防熱スキル付きのアクセサリーを作れる職人は限られているため、組合に提出して作ってもらうことになる。


 クエストを受注すると防暑スキル付きアクセサリーを借りられるので、それを装備して砂漠に行くという話だった。


「もちろん多めに獲得なさった場合、喜んで買い取りさせていただいております」

「…自分用以外は取って来ない人が多そう」

「二度も三度も戦いたくないと言われてしまいますね」


 バトルもツライらしい。

 タグのほうを見ると首を横に振られた。

 バトルは付き合わねえ、と言われた気分だった。






 その日は砂漠に行くほどの時間はなかったので、砂漠がキツくて早めに切り上げたが時間が余っているというタグと、冒険者組合の酒場で情報交換した。


 ちょっと暑いので冷製スープを注文したが、港街らしい魚介類がたっぷりで美味しかった。


「ナンパ男用のクエスト…」

「同性のほうがクリアしやすいかもしれないから、どうだか知らんけど。頼闇に押し付けて来た!」

「あいつ、だいぶ拗らせて面倒臭かったからなあ…オネエ言葉のせいでクソ面倒臭い女に見えて来るくらい…」

「あれが女に見えるとか、酷いな…」


 頼闇のアバターは筋骨隆々の大男である。別に女装もしていないので、黙っていれば渋い男にしか見えないだろう。


 世の中には面倒臭い男もいるが、面倒臭さの方向性が女性的だったと言うか。


「チャットだと面倒臭い女に見えたんだよ」

「ああ、そっちか。タグはチャットでやり取りしてただけ?」

「会いたくなかった…」


 絶対からまれるから。椛もそれは分かった。


「まあ当分は兎の国にいると思うよ。他の街でもクエストが起きればさらに足止めできる!」

「またヤマト国って言い出す前に、そっちも進むといいな」

「本当にね」


 ヤマト国解禁の1番の理由が頼闇を黙らせるためになりつつあるが、その話は終わりにした。


 防熱スキル獲得クエストのボスのことや、砂漠が具体的にどう地獄なのかを聞く。


「うーん、行けば1発で分かるけど…氷の平原は雪が積もっててもそこまで歩きにくくなかっただろ。積雪何メートルって世界じゃなかったから」

「そういえば、ザクザク歩けたね」

「砂はこう、足が取られて1歩ずつ気をつけて歩かないとすぐ滑って転ぶ」

「ほうほう」

「その足場の悪い所に魔物が出る。マトモに動けないのに、魔物は軽快に走り回る」

「…わたしの速度(AGI)が死ぬんですが」

「あ、あと砂漠は騎獣が使えないぞ。大事なことを忘れてた」

「氷の平原もそれで歩いたんだった!」


 歩く前提で聞いていたが、氷の平原を歩いた経験から確認し忘れたのだろう。フィールドなのに騎獣で移動できないなんて。


「砂嵐で風も酷いから、エレメント系でさえ飛ばされかけたし。ブリリアントホースは肩に乗せればギリ行けたけど」

「ぽよぽよがぽーんって飛んで行くやつ…」

「あれは良く飛びそうだな」


 吹雪で体験済みだ。

 砂漠で使える召喚獣も限られて来る。


「妖狐は転がっても戻って来るけど、役に立つ以上に文句が多くて呼ぶ気しない」

「うるさく喚きそう…」

「ハムスターは頑張ってくれるけど、敵にちょっとどつかれただけでぽーんって風に乗って、そのまま消えた…」


 キラーンと遠い空の彼方で星になる古典的演出が脳裏に浮かんだとか。公星だし。


「…雪の子で砂嵐を吹雪に変えたらどうなるかな」

「検証クランが喜びそう」


 雪の子は探すのが大変で、まだ契約できたプレイヤーは少ないらしい。ぽよぽよ信者なNPCたちはともかくとして。


 余裕があったら試してみることにした。

 ロクな結果になりそうになかったけど。






海女あまさんではないです

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風か土属性無いとキツそう
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