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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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196/242

171プレイ目 クラビス

 兎の国。

 それは西の大陸の西の果ての半島にあるベルン王国のことだ。


 (もみじ)はマップを見ていて気付いた。


「ブローゼスト王国と似た地形…」

「バニーちゃんの国よ!鬼女の国じゃないわ!」


 いや、マップ作った人の好みかな、イタリア半島とか好きそう、とくだらないことを思っただけの椛は、頼闇(らいあん)の必死な言い訳で別の可能性に気付いた。


「鬼女の生まれる地形がある、だと…!?」

「ないわよ!」


 そんなやり取りをする2人がいるのはベルン王国の北東の端、国境近くの港街クラビスだ。

 エルフの国の森を南西に走ってガーネティ湾を臨む湾岸に出て、海沿いに走って来た。


「ここの丸い湾が、鬼女ウィルスを持った隕石の落下跡かもしれない…東の大陸のアレも宇宙から来た鬼女ウィルスの…!」

「好きよね、そういう設定」

「まあね」


 トンデモ本と与太話は大好物である。


 それはさておき、兎獣人たちの国だ。

 街道から街に北門から入ったばかりだが、門前広場にはすでに兎獣人がたくさんいた。入口の門番も当然ながら兎獣人である。


 そして当然ながら、頼闇の求めるバニーちゃんはバニーガールではないものの、条件は『可愛い女の子orお姉さん』である。

 老若男女の兎獣人を見て、現実に気付いたところだろう。


 椛はもちろん気付いていたが黙っていた。

 どちらにしろ若い女性たちに声をかければ済む話だ。


「先に聖堂と組合(ギルド)広場に行こう。美味しいスイーツの店の情報は調べておかないとナンパも出来ないよ」

「そうねえ…うさ耳って誰でも付いていれば良いわけじゃないのよ…」

「犬獣人や猫獣人のどこを見てたの」

「バニーちゃんの夢の国…」


 こいつまた面倒くさい奴になってるなあ、という本音は隠して頼闇を連行して行った。

 義理を果たしたら船でトンズラ予定の椛だった。






 転移(ゲート)の登録や冒険者組合での冒険者カードの照合を済ませ、頼闇がうさ耳の可愛い受付嬢に夢中になっている間に冒険者NPCたちに聞き込みをしてから、2人は商業組合に来た。


 頼闇は「向こうのうさ耳美人は会わないの?」と聞けばホイホイとついて来た。

 スクショが止まらないことだろう。


 商業組合の受付嬢は冒険者組合の受付嬢よりもゴージャス美女率が高い。組合の内装が高級店の雰囲気なので、より感じるのかもしれない。


「美味しいスイーツのお店が知りたい。なるべくリーズナブルな所も」

「それでしたらこちらがおすすめですね」


 おすすめ店舗情報はタダで貰えるし、マップに直接マーキングされるので探しやすい。

 いくつかおすすめされた店について、人気メニューなども追加で聞いておいた。


 頼闇は放って1人で制覇したくなったが、約束があるので椛もこらえた。


「それでこいつ連れて『キレイな兎のお姉さんたちと一緒に美味しいスイーツを食べたいんだ。奢るから付き合ってよ』って言ったらこだわらずに応じてくれて、強欲に高級レストランに行こうとしたり味をしめて毎日たかりに来ない、そんなアッサリした美女たちに心当たりはないかな」

「奢っていただけるならわたくしも立候補したいお話ですね」


 頼闇が「ぜひ!ぜひ!」とリップサービスだと理解しないでうるさいが、受付嬢は笑顔でかわして知り合いを紹介してくれた。


「ランクCの女の子だけの冒険者チームの子たちは、収入の問題であまりスイーツが食べられないと嘆いていたので、きっと喜ぶと思いますよ」

「それはこっちも話しやすそうだね」

「こちらのお店のお針子たちは、つい高価な素材を買い込んでしまって今月はおやつが買えないと嘆いていたので、きっと喜んで付き合うと思いますよ」


 それぞれ理由があったが、奢ったら喜んで付き合ってくれそうな女性たちがけっこういた。

 椛がついクエストリストを見ると、ランダムクエストが発生していた。


 兎の国にはスイーツに飢えた女の子が多い設定なのか、他の国でも発生するものなのか。

 ナンパ男たちへのサポートなのか。


 意味は分からないが、都合が良かった。


 一通り聞いてから組合を出る。居座りたがる頼闇を「女の子たちに声かけるんでしょ」と言ってどうにか連れ出した。


「まずクエストリストを見なさい」

「クエストがどうしたのよ」

「初回は付き合って流れを確かめるけど、次からは頼闇だけで出来るはずだよ。クエストだから!」

「…なんのクエスト!?」


 クエストなんて知るか、という顔をしていた頼闇もここまで言えば気付いたようだ。慌ててクエストリストを確かめて、勝利の雄叫びを上げた。

 まだ勝ってないけど。


「で、どうする?わたしは邪魔ならここでお別れしよう」

「ま、待って待って!一緒に来て!」

「1回だけの約束だからね」


 椛は何度も付き合う気はない。

 奢りたくないとかそういう理由ではなく、初めて会う女性陣とスイーツパーティをする趣味がないだけだ。


 一度くらいなら楽しめてもきっとすぐに飽きる。性格的な問題で。


 という訳で、クエストのおかげで居場所の分かる兎獣人の女の子たちを探しに出たのだった。






 頼闇が女の子よりお姉さんがいいの!と言うので、クエストが出た中では年上っぽいニュアンスの説明だったグループを探しに来た。


 就職活動中で収入が安定していないとか、前の勤め先でトラブルがあったとか、椛なら絶対に近付かないタイプに思えたが、頼闇がこれが良いと譲らなかったのだ。

 面倒そうだから椛のいる時に片付けようと考えたのかもしれないが。


 工房区のほうにある小さな広場のベンチに、ちょっとダウナー系のお姉さんたちがいた。

 華やかさはいまいちだが、美女揃いなのは確かである。


「こんにちは。商業組合で紹介してもらったんだけど」


 なあに?とやや不審者を見る目を向けられたが、頼闇の夢とスイーツを奢ることと、しつこくまとわり付かないと頼闇に誓わせることなどを説明したら、案外あっさりと話に乗って来た。


「どこか行きたいお店はあるの?」

「近くにフルーツのタルトが美味しいお店があるわ。紅茶にもこだわりがあって、それも美味しいの」

「あ、おすすめで聞いたかも。柑橘系のタルトが特に人気って」

「そうそう、私はオレンジが好きだけど、レモンも美味しいわよ」

「リンゴやモモだっておすすめなのに」


 店に向かう道すがら、スイーツの話で盛り上がった。椛は話を聞きながら、どれにしようか迷ってしまった。


「頼闇は何が気になる?」

「そ、そうねえ。まず人気のオレンジかしら。美味しいならまた行ってもいいもの」

「お持ち帰りが出来るなら全部買うのに」

「そこまでたくさんは作ってないそうよ」

「でも豪勢ねえ」


 うふふ、と楽しげに笑うお姉さんたちは最初の印象よりだいぶ明るく華やいで見えた。

 そして女の子のうさ耳がピョコピョコする様子は可愛いのに、お姉さんたちのうさ耳は何故かセクシーに見える不思議。


 頼闇が舞い上がっているのが分かる。

 暴走して失敗しないといいけど、と一抹の不安を感じた。


 だが店についても頼闇は特におかしなことはしなかったし言わなかった。


「2個でも3個でもいいよ。ね、頼闇」

「もちろんよ!」

「ありがとう。でも太ると困っちゃうわ」

「あら、新作が出てる。これにしようかしら」

「しばらく来てなかったわ、ここも」


 注文しながらちょっと暗くなったので、椛は様子をうかがいながら仕事を辞めたいきさつを尋ねた。

 予想通りの愚痴大会が始まったが、クエストの内容から予想できたことだ。


 そして解決しろという話ではなく、気分転換に付き合うことが主旨に思えた。

 リアルでもたまに起きるイベントだ。ぶちまけてスッキリしたいこともある。


「いるよね、そういう奴」

「それはぶん殴りたい」

「分かるー、そんなの客じゃねえわ」


 理解を示す相づちが欲しいのだ。

 仲の良い人ではなく、第三者に言われたいことだってある。だから椛はそれに従っただけだ。


 やがて2、3杯目の紅茶が空になる頃にお姉さんたちはだいぶスッキリしたようだった。


「ごめんなさいね、奢ってもらったのにこんなつまらない話ばかりして…」

「楽しくおしゃべりするつもりだったのに」

「ううん、一緒のテーブルに着けるだけで幸せな人もいるから。だよね」

「え、ええ、もちろんよ!」

「お姉さんたちならカウンターに立ってるだけで常連客が増えるのに、分かってないよね」


 その後は愚痴が減って、クラビスの街のおすすめスポットや最近の流行りについて教えてもらったりと、話が弾んだ。

 お店の人には「長居してごめん」とこのあたりでは珍しいはずのフルーツを渡してフォローしておいた。


 お姉さんたちにもお土産でフルーツを渡して、クエストはクリアだ。


 店を出て、お姉さんたちに手を振って見送る。


「どう?約束は果たしたよ」

「夢のような時間だったわ…苦しい胸のうちを吐露する姿さえもセクシー…!」


 頼闇は大人しかったが、きっと口を開いたら怒らせることを考えていたのだろう。

 そういうのいいから相づち打っとけよ、と椛は思った。


「じゃ、残りのクエスト頑張ってね」

「え、付き合って…」

「1回だけの約束だ」


 なんで知らない奴の愚痴に付き合わされなきゃいけねえんだよ!と椛は思う。

 今回は仕方なく付き合っただけなのだ。頼闇はロクに相づちも打たないから役に立たなかったし。


 リアルの同僚の愚痴に付き合わされた時と同じくらい疲れた。

 もう二度とやりたくなかった。






ブローゼスト王国の城にいる鬼女の大元の話は忘れていませんが、それはそれとして「こういう設定も面白いよね!」と適当なことを言っているだけです



それと「和解はしたが許してねぇからな」が椛の1番正直な気持ちなので、対応に滲み出ているかもしれません…

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― 新着の感想 ―
キッパリ断われる椛。 通常営業だな!
そりゃそうだよね、和解はしても許せないわい┐(´д`)┌
男には出来ねぇよ、ただ相槌をうつのって難しいんだ 解決策とか言うのアウトなんだぜ
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